撮影:岸隆子
龍真咲 華麗なるエリザベート!「エリザベート」ガラ・コンサート 月組バージョン
初演以来20周年を記念した「エリザベートTAKARAZUKA20周年スペシャル・ガラ・コンサート」が大阪・梅田芸術劇場メインホールで開催中だが、15日、彩輝なおトートと龍真咲エリザベートという、貴重な公演が1回だけの限定で上演された。今回はこの模様をお伝えしよう。
今回の「エリザベート」ガラ・コンサートは20周年とあって初演の雪組メンバーを中心としたモニュメントバージョンから始まって、星、月、雪、宙組の各組出演者をメーンにしたフルコスチュームバージョン、そして花組はじめ各組の選抜メンバーが出演するアニバーサリーバージョンがあり、さまざまな組み合わせが楽しめる。20周年ならではの豪華なコンサートだ。
そのなかでも一番の話題は退団したばかりの元月組トップスター、龍真咲が大阪公演の3回だけエリザベート役に挑戦したこと。13、14日の麻路さきを中心とした星組バージョンと15日の彩輝を中心とした月組バージョン。麻路トートも捨てがたかったが、今回は龍の古巣ということもあって彩輝トートバージョンを観劇することにしたのだが、1回だけという緊張感がステージの隅々に張りつめ、これが素晴らしい出来栄えだった。
彩輝のトートは、2005年の在団当時に見たときから、独特のハスキーな声がビブラートするところになんともいえない妖しい雰囲気があり、黄泉の帝王というにふさわしいと思っていたのだが、11年たった今、さらにその妖しさが増した感じ。星組時代に麻路のトートを見て勉強、新人公演でもトートを演じているので、麻路トートをお手本にしたバリエーションであることは確かなのだが、麻路とはまた違った色気があり「最後のダンス」はクールでありながらもホットで思わず鳥肌が立つようなオーラがあった。女優で活躍しているときには、こういう雰囲気は出ないので、これはもう宝塚マジックとしかいいようがない。
一方、眼目の龍エリザベートも、やや大柄ではあるが、少女時代を非常に丁寧にソフトに歌い、かわいらしさも満点。「私だけに」のソロの高音もよく伸びて予想以上の高得点だった。一幕ラストの最大の見せ場での表情の作り方と押し出し方が、やや物足りなかったが、後半の「私が踊る時」や「夜のボート」は聴かせた。男役から転身した最初の舞台としては大成功だろう。近い将来、東宝版でのエリザベート役も夢ではないかもしれない。
他の配役はフランツが初風緑、ルキーニが湖月わたる、ルドルフが涼紫央、ゾフィーが未来優希、マックスが立ともみ、少年ルドルフが月影瞳、グリュンネが磯野千尋、ルドヴィカが久路あかりで、端正な初風と涼に対して、硬軟自在な湖月が好対照で彩輝、龍をサポート、未来のゾフィーがさすがの実力で聴かせた。少年ルドルフの月影が、子役というより女の子っぽかったが在団当時そのまんまの初々しさだったのにも大感激。いずれにしても、一期一会の貴重なコンサートだった。
終演後のカーテンコールでは、まず湖月があいさつ、彩輝は「フルコスチュームバージョンの最後、それに一回だけということで、緊張したけれど、無事終わってホッとしました。新人公演を思い出した」と話し、このコンサートにかかわったすべての人々への感謝の気持ちを表していた。また、エリザベート役の龍を「2005年の時は黒天使だったよね。この間まで月組トップだった龍です」と紹介、突然のことに龍は思わず涙、しかし、すぐに立ち直り「今日でエリザベートは三回目だったけれど、今日が一番緊張して、本番前から楽屋でもずっと彩輝さんにべったりくっついていました。何か話さないとどうしようもないくらいに緊張した」と笑わせていた。客席はもちろんオールスタンディング、大きな拍手で二人はじめオーケストラと出演者全員を称えていた。
©宝塚歌劇支局プラス12月15日記 薮下哲司