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Channel: 薮下哲司の宝塚歌劇支局プラス
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轟悠×実咲凜音初共演、宙組バウ公演「双頭の鷲」開幕

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             ©宝塚歌劇団

 

 

轟悠×実咲凜音初共演、宙組バウ公演「双頭の鷲」開幕

 

 ジャン・コクトー原作の同名戯曲をミュージカル化、専科の轟悠と宙組娘役トップ、実咲凜音が初共演したミュージカル「双頭の鷲」(植田景子脚本、演出)が22日、宝塚バウホールで開幕した。雪組トップコンビ、早霧せいな、咲妃みゆが、」同時に退団会見をした同じ日の開幕となったが、話題作とあってチケットはすでに全期間完売、熱気の初日風景となった。今回はこの公演の模様をお伝えしよう。

 

 とあるヨーロッパの王国、亡き王との思い出のクランツ城に滞在していた王妃(実咲)の寝室に、嵐の夜、傷ついた詩人でアナーキストのスタニスラス(轟)が逃げ込んでくる。王妃は、亡き王と瓜二つの彼を読書係に任命、2人の間に不思議な感情が芽生えていく。

 

コクトーが、オーストリアの皇妃エリザベートと暗殺者ルキーニからインスピレーションを受けて書いた戯曲で、大ヒットミュージカル「エリザベート」にも少なからず影響を与えた名作。ジャン・マレエ主演で映画化され、日本でも美輪明宏や麻実れいが王妃役に扮して舞台で演じたが、今回の舞台は、それらのイメージにとらわれず、和希そら扮するストーリーテラーが舞台を進行、良くも悪くも自由な脚色で宝塚的なミュージカルに仕上げている。暗殺するために侵入しながら王妃に心酔していくスタニスラスに扮した轟の地に足の着いた存在感、彼によって王妃の務めに目覚めていく実咲の凛とした演技、緊張感あふれる2人のラブシーンがことほか美しく、見ものだった。

 

舞台はクランツ城の王妃の寝室。中央の階段で轟と実咲が倒れている。ストーリーテラーの和希が登場、二人が死んでいることを説明する。そしてなぜこうなったか回想形式で振り返っていく。和希はコクトーの紹介から入り、当時のヨーロッパの情勢や、この国の政情なども説明、ずいぶん懇切丁寧なストーリーテラー。「エリザベート」との関連にも言及するなどわかりやすく展開していく。ビニールカーテンを使用した装置(松井るみ担当)だけが違和感があり、重厚さを欠くとともに作品のイメージから浮いているように見えた。作品の中身とは関係なく、装置が勝手に主張していてなんだか目障りなのだ。何より落ち着かない。

 

スタニスラスに扮した轟は、ショートカットの金髪が若々しく、登場シーンから存在感たっぷり。前回の「リンカーン」とは打って変わった、スタイリッシュな雰囲気で、クラシックな中にも現代的な知的感覚もあって、19世紀の若きアナーキストを見事に体現した。王妃との年齢差をあまり感じさせない作りこんだ演技にも感心させられた。

 

王妃役の実咲は、相手役が轟ということと王妃役ということで最初からかなりテンションの高い演技で臨んでおり、台詞をやや作りすぎていて、聞いていて疲れるところもあるが、轟を相手に一歩もひけをとらない堂々とした立ち居振る舞いと気品ある美しさで、エリザベートを演じた経験に大きくものを言わせたようだ。ラストの大芝居が初日を見た限りではまだ小芝居にしかなっていないのがやや残念。これは回数をこなし、肩の力が抜けていけばさらによくなること必至、素晴らしい王妃になりそうな予感がする。

 

王妃、スタニスラスのほか登場人物は4人、警察長官フェーン伯爵の愛月ひかる。侍女エディットの美風舞良、亡き王の旧友フェリックスの桜木みなと、王妃付きの黒人少年トニーの穂稀せりがその4人。愛月のサングラスに黒い革のコートという濃いスタイルがいかにもに雰囲気をよくだし、陰ながら王妃を慕うフェリックスを素直に演じた桜木も好印象だった。

 

他の出演者はパパラッチや臣下などのコロスで、常に舞台脇に待機、寝室で進行する物語の目撃者ともなる。全員がそれぞれの役に合った別々の黒の衣装で、王妃とスタニスラスの死を暗示しているようで不気味でもあり印象的だった。あと寝室の両サイドの壁面に亡き王の肖像画が2枚飾ってあった、これが轟をモデルにしたもので、なかなか良く描けていたのを付け加えたい。

 

©宝塚歌劇支局プラス11月22日記 薮下哲司

 

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