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Channel: 薮下哲司の宝塚歌劇支局プラス
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北翔海莉が、星組公演「桜花に舞え」「ロマンス‼」東京公演千秋楽で宝塚にサヨナラ

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星組トップ、北翔海莉が20日、東京宝塚劇場の星組公演「桜華に舞え」「ロマンス‼」千秋楽をもって20年間の宝塚生活に別れを告げた。相手役の妃海風、同期生の美城れんも同時に退団、サヨナラショーは全国各地の映画館でもライブ中継されたが、東京宝塚劇場で観劇した羽衣国際大学准教授でエンタテイメントジャーナリスト、宝塚イズム執筆者の永岡俊哉氏から千秋楽レポートが届いたのでさっそく紹介しよう。北翔退団の翌21日には、雪組トップコンビ、早霧せいなと咲妃みゆが退団を発表、まさに宝塚は旬のエンタテインメント、2017年の宝塚からも目が離せなくなりそうだ。

 

みっちゃん、華々しく卒業!そして新たな旅立ちにエール!

 

羽衣国際大学 放送メディア映像・学科 准教授 永岡俊哉

 

研18でやっとトップの座をつかんだ北翔海莉が1年半の在任で宝塚を去った。私は2016年11月20日にその最後の瞬間を東京宝塚劇場で見届ける幸せに恵まれた。フェアウエル感と言うよりも、舞台上の全ての生徒が北翔と演じられる最後の瞬間をいとおしむ様に忘れないように噛み締めるようにしていて、その時を大切にしながらも、皆キラキラと輝いていたことがとても印象的だった。12月に刊行される宝塚イズム34(青弓社発行)でも書いたのだが、こんな人が今後また宝塚に出てくることはあるのだろうか…という思いに、私は今、襲われている。

 

千秋楽公演は宝塚の時もそうだったのだが、これで最後…という惜別感や悲しみ、寂しさよりも、北翔の全てを何も見落とさないように噛み締めるぞと言った、プロフェッショナル舞台人北翔の全てを堪能するぞという意欲に満ち溢れた客席だったと私は感じた。

その感覚は舞台上の生徒も全く同じで、先述の通り皆が北翔と一緒の空間から吸収できるものは何でも吸収しようという意欲にあふれた姿を見せ、彼女たちの目はキラキラと輝いていた。北翔や妃海も舞台をしっかりと務め、この時に至ってもなお良い舞台を作りたい、さらに向上したいという意欲が感じられるような、浮ついたところが一つもない見事な舞台を作り上げていった。「地に足の着いた」と言う表現は昨日の星組のためにあるのではないかと思えたぐらいだ。

 

芝居やショーについては特に論じないが、ただ一つだけ、芝居の最後から2場目第14場「維新とは…」で大久保利通の夏美ようが見せてくれた慟哭があまりにも素晴らしく、思わず涙してしまったことだけは言っておきたい。夏美が北翔との最後の出番でみせた渾身の演技だった。

 

そして、ショーの幕が下り、サヨナラショーが始まる。北翔初舞台の「シトラスの風」から始まり、ドアボーイを務めた「ノバ・ボサ・ノバ」の「アマールアマール」と続いていく。「風の次郎吉」の主題歌演歌風もあり、「メリーウイドウ」や「こうもり」の歌も。梅芸のコンサートで評判となり、ディズニーの許可が特別に降りた「LOVE & DREAM」のシンデレラのシーンは幻想的でさえあり、またもや感激した。妃海の紫の衣装、大階段下り、2人のダンス、あの靴を履かせるシーンまでもが蘇ったのだ。

北翔の同期で同時に退団する元星組で専科の美城れんのソロは、コンサート「One Voice」で歌った「タイタニック」の「My Heart will go on」で静かに歌い納めた。個人的にはロミオとジュリエットの乳母の歌も聞きたかったのだが、この曲も心に染みた。妃海のソロは「南太平洋」から「A Wonderful Guy」で、懐かしのセーラー服姿も見られた。銀橋で楽しそうに踊り歌う妃海のあの頃を思い出し、懐かしさでいっぱいになった。

そして、ラストは宝塚と同様、客席のペンライトの光のスイングの中、ビルボードライブ「ミュージック・パレット」で歌った「Climb every mountain」で締めた。彼女が宝塚千秋楽の後で「ひとつ山を登ったからと言ってそこで安心してしまうのではなく、すべての山を登りなさい。それが芸の道なんだから!という星組生へのメッセージとして歌いました。」と話していたが、星組、いや、宝塚の全ての生徒への遺言とも言える歌でサヨナラショーの幕が閉じた。

 

最後の大階段を下りた直後の退団挨拶で、美城れんは「大好きな宝塚歌劇に入れて19年間、私は本当に幸せでした。」と前置きし、途中涙で詰まる場面もあったが、大好きな舞台で芝居、歌、ダンスをできた喜び、星組から専科に異動になったこと、仲間やお客さんに出会えたことに感謝の心を述べ、「私にとって同期の北翔海莉がこの星組でトップスターになれたことを、本当に幸せに思っています。みっちゃんのお陰で今の私があると言っても過言ではありません。」と綴った。おしまいは最後の役となった西郷隆盛の鹿児島弁で「みなさん!ありがとなあ!!!」と述べ、万雷の拍手を浴びた。

 

妃海は「今の素直な愛の気持ちを、素直な言葉で伝えたいと思います。」と前置きし、「今、私、どうやら幸せでいっぱいです。」と話し始めた。「感謝の気持ちでいっぱいなのです。好きなのです。」と続け、さらには北翔への思いもとつとつとつぶやくように述べた。そして、「本当に大好きな宝塚で、こんなにも幸せな気持ちで退団させていだだきますことを心から感謝しております。本当に、皆様、ありがとうございました。」と、最後は妃海らしく力強く元気に締めくくった。

 

そして、北翔の挨拶については全文をご紹介しておこう。

「予科生の時、初めて私に声をかけてくれたのは美城れんさんでした。文化祭で初めて舞台化粧を教えて下さったのは夏美ようさん。初舞台の作品は岡田先生。初めての新人公演の担当は斎藤先生でした。

今、思い返すと、この21年間のご縁は必然で、ひとつでも欠けていたら今の私は成立していなかったと思います。長い道のりの果てにたどり着いた星組には、北翔海莉をさらに磨き上げてくれる仲間がいて、やはり出会うべき人に出会ったんだなと、神様に心から感謝いたします。

今日の卒業の日まで応援して下さったファンの皆様。稽古中や公演中、暑い日、凍えるような寒い中、いつも笑顔で待っていて下さって、皆様の存在が私の心の支えでした。この立場になり決意、決断、覚悟、責任と、己の精神と戦わなければ行けないとき、私の周りにはいつも仲間がいて、スタッフの方々、そして一番の味方であるファンの方々が真心と勇気をもって支えて下さったからこそ、私は義を貫くことができたのだと思います。

最後に、この21年間、とてつもなく苦しい時もありましたが、それ以上に、とてつもなく面白かったです!!!北翔海莉を応援して下さったすべての皆様、加美乃素本舗様、今まで本当にありがとうございました!」

 

84期生は全て卒業してしまった。宝塚はこの偉大な最後の84期生が残したものを引き継ぎ、さらに大きくしていくことができるのだろうか?劇団も生徒も、そして我々ヅカファンも彼女の功績から大いに学んでいって欲しいと思った11月20日の日比谷だった。

 

 そして、その翌日、11月21日、北翔は新たな歩みを見せてくれた。彼女の公式サイトが立ち上がり、その中で次なるステップが明らかになった。

 

    https://hokushokairi.com/    北翔海莉Official Web Site

その中の彼女の挨拶を転載すると、以下のようにある。

「皆さまのお蔭をもちまして、21年間の宝塚での生活を無事に卒業させて頂きました。

 男役・北翔海莉を応援し支えて下さいましたファンの皆さま心より感謝しておりますと共に本当にありがとうございました。

2016年11月21日より新たなる北翔海莉として究極のエンターティナーを志し出航致します。

 応援して下さるファンの方々に喜び・感動・勇気そして少しの恩返しができますように一生懸命精進を重ねて参りたいと思っておりますので今後ともお支え下さいますようにお願い申し上げます。2016年11月21日」

 

ディナーショーに、コンサートに…と、エンターテイナーとしてさらに羽ばたいてくれるようである。今から楽しみでならない。

 

                     ©宝塚歌劇支局プラス2016年11月21日 永岡俊哉 記

 

 

★毎日文化センター(大阪)秋期受講生募集中

 

○…毎日文化センター(大阪)では「薮さんの宝塚歌劇講座」(講師・薮下哲司)の11月から来年4月までの秋季受講生のみなさんを募集中です。毎月第4水曜日、午後1時半から3時まで西梅田の毎日文化センターで開講します。最新の宝塚情報や公演をわかりやすく解説、時にはタカラジェンヌOGやスタッフなどゲストを交えてのトークもある宝塚ファンならわくわくの1時間半です。11月は30日開催で2016年度宝塚グランプリノミネートを発表、受講生のみなさんの投票で各部門年間ベストを決定します。ふるってご参加ください。受講料(6か月18150円)=別途入会金必要=など詳細は同センター☎06(6346)8700までお問い合わせください。

 

★来年2月8日、雪組トップコンビ早霧、咲妃プレサヨナラ公演(中日劇場)鑑賞ツアー、好評受付中★

 

○…宝塚のマエストロ、薮下哲司と宝塚歌劇を楽しむ観劇会の第2弾「宝塚歌劇雪組公演イン中日劇場特別鑑賞バスツアー」(毎日新聞大阪開発主催)を、来年2月8日(水)に実施することになり、好評受付中です。

午前8時、西梅田から観光バスで出発、7月末の退団を発表した雪組トップコンビ、早霧せいな、咲妃みゆが主演するプレサヨナラ公演「星逢一夜」と「Greatest HITS‼」12時の回を名古屋・中日劇場のA席(8000円)で観劇、幕間に昼食(特製弁当)をとり、終演後にはノリタケの森のレストランでアフタヌーンティー(サンドイッチやスコーンなどの軽食付き)を飲みながら薮下哲司が公演を解説、午後7時半ごろに大阪に帰着という日帰りツアーです。

参加費は22500円(消費税込み)。先着40名様限定(定員になり次第締め切ります)チケット難が予想される公演です。まだ間に合います。席が確保されているこのツアーのご予約をおすすめします。


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