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天華えま、初々しくもさわやかに初主演、星組公演「桜華に舞え」新人公演

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天華えま、初々しくもさわやかに初主演、星組公演「桜華に舞え」新人公演

北翔海莉のサヨナラ公演となった星組公演「桜華に舞えSAMURAI The FINAL」(斎藤吉正作、演出)新人公演(同担当)が、研5の天華(あまはな)えまの初主演によって13日、宝塚大劇場で開かれた。今回はこの模様をお伝えしよう。

「桜華に舞え-」は、幕末から明治初期の激動期の日本で活躍、西郷隆盛とともに西南戦争で散った最後の武士の一人、桐野利秋の半生を描いた作品。北翔の宝塚最後の作品として斎藤氏が温めてきた題材という。フィクションをからめてダイナミックに展開したが、やや盛り込みすぎで、当時の背景と鹿児島弁に堪能でないと、おいてきぼりになる可能性大。ただ、新人公演は本公演と違って、出演者の序列にとらわれずに冷静に見ることができるので、作者の意図がより明確に伝わる強みがある。今回は本公演と同じ斎藤氏が演出を担当しているので、その辺が特に顕著で、「義と真心」というテーマがはっきりと浮かび上がり、ずいぶんわかりやすい公演となった。

その大きな功績は、桐野を演じた天華のさわやかで素直な演技だ。ダイナミックな北翔の演技を手本に、変に小細工せずストレートに演じ、それがうまく作用した。これまで特にこれといった印象はなかったのだが「黒豹のごとく」新人公演で真風涼帆が演じたラファエルを演じたとき「非常に素直な演技で凛々しいたたずまい。今後の活躍を大いに期待したい」と絶賛した覚えがあるが、今回もその素直さが特に吹優とのからみで生き、見事にその期待に応えてくれた。歌唱もくせがなく、なにより瞳がきらきら輝いていて、見る側の心を浮き立たせるような不思議な魅力があった。このままうまく育ってほしいものだ。

紅ゆずるが演じた隼太郎役は綾凰華(研5)。綾も芝居心があるうえに天華に劣らずスター性十分の資質を持っており、今回のこの役もいい味を出し、天華とも息ぴったりでいいコンビだった。後半、明治新政府側であることから、故郷の人々から冷たくあしらわれるくだりは、紅とはまた違ったペーソスが漂った。

吹優(本役・妃海風)は小桜ほのか(研4)。オープニングから薙刀を持って銀橋を渡るシーンがあるなど、なかなか一筋縄ではいかない難役を、精いっぱい務め上げた。歌、芝居はなかなかしっかりしているので、日本物の化粧をもう一工夫すれば、さらに見栄えがするだろう。桐野を父親の仇であることと、自分の命の恩人であることを同時に知る場面が吹優としての一番の見せ場だが、ここはうまかった。

あと印象的だったのは大久保利通役の桃堂純(研6)。貫録たっぷりに見せながら小芝居もきかせて、彼女らしい面白い役作りだった。礼真琴が扮した八木永輝には紫藤りゅう(研7)が回った。すでに新人公演主演を経験していて、今回はいわゆるおいしい役への挑戦。鬼気迫る執念のような気がほしかったが、あっさりとまとめていた。もっと自由にできるはずなので次回の課題にしてほしい。それに比べ、ヒサ役(綺咲愛里)を演じた真彩希帆(研5)は、登場シーンからヒサになり切っていてそのうまさには舌を巻いた。後半の薩摩で、吹優の小桜とからむ場面も、観客の感情移入は完全にヒサに向くほどだった。吹優とヒサという桐野をめぐる二人の女性の描きかたが、やや中途半端なのが、新人公演で浮かび上がったともいえる。本公演でヒサを演じた綺咲(研7)は万里柚美が演じた大給夫人役を演じた。

あと西郷隆盛(美城れん)の音咲いつき(研7)が、さすが上級生の貫録で舞台を締めた。また母の仇として山縣有朋をつけ狙う太郎少年(小桜)を演じた二條華(研3)の健気さが印象的だった。

©宝塚歌劇支局プラス9月15日記 薮下哲司




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