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Channel: 薮下哲司の宝塚歌劇支局プラス
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桜木みなと、初々しくも堂々のラダメス役、宙組公演「王家に捧ぐ歌」新人公演

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桜木みなと、初々しくも堂々のラダメス役、宙組公演「王家に捧ぐ歌」新人公演


宙組期待のホープ、桜木みなとが主演したグランド・ロマンス「王家に捧ぐ歌」―オペラ「アイーダ」より―(木村信司脚本、演出)新人公演が23日、宝塚大劇場で行われた。今回はこの模様を報告しよう。

「王家―」は2003年に星組で初演、湖月わたるがトップ披露として主演のエジプトの将軍ラダメスを演じ、新人公演は当時研5だった柚希礼音が演じた。今回、桜木は本公演では初演で柚希が演じたメレルカを演じ、新人公演でラダメス役(本役・朝夏まなと)に起用された。いかに歌劇団が桜木に期待を込めているかこの配役でもわかろうというもの。新人公演は、一幕後半の勝利の凱旋シーンやアムネリスを中心とした娘役のナンバー、フィナーレがカットされた以外はほぼ本公演通りに進行、桜木はじめ主要な出演者の歌唱力のレベルが高く、聴きごたえのある新人公演だった。

フェアリー的な雰囲気で早くから注目されてきた桜木だが、歌の実力もなかなかで、一瞬、下級生時代の明日海りおを思い出させる雰囲気の持ち主。ラダメスは、湖月→柚希ラインが培った豪快な男役のイメージがあったが、今回の宙組公演の朝夏→桜木ラインはそんな先入感を覆し、エジプトの将軍ではあるが平和を愛する優しさが強調された。貴公子然とした容貌に加えて歌もしっかり歌える桜木は、役の力もあって思いのほか凛々しい力強さもあり、加えてナイーブさもよく表現して好演。宝塚の王道を伝統的な男役が出来そうで、今後の活躍を期待したい。

相手役のアイーダ(実咲凛音)は星風まどか。凰稀かなめのサヨナラ公演だった「白夜の誓い」で、凰稀扮するグスタフⅢ世の少年時代を好演して一躍注目された娘役ホープだ。可憐な容姿に似合わずパワフルな歌声の持ち主で、まさにこの役にはぴったりだった。「戦いは新たな戦いを生むだけ」と歌う声に説得力があった。

一方、ファラオの娘アムネリス(伶美うらら)は遥羽ららが演じた。豪華な衣装に助けられてプリンセスという雰囲気はよくでていたが、台詞や歌がまだ舞台の発声になっておらず上滑りしてやや気品に欠け、なんだか舞台稽古を見ているようだった。歌自体は高音低音ともによく伸びていただけにその辺が課題だった。一方、本役の伶美もエジプトの戦士役で出演。同じ衣装の戦士たちの中でもひときわ美形で、どこにいてもすぐに分かった。もともと音域が低いので少年役がよく似合いそうだ。

アイーダの兄ウバルド(真風涼帆)は瑠風輝。バウ公演「NewWave宙」で、留依蒔世とともに「闇に広がる」を歌って強烈なインパクトを与えた歌の人。身長がありどちらかというと豪快なタイプなので、二枚目は難しいかもしれないが、今回は実力を遺憾なく発揮して大器ぶりを示した。楽しみな存在になりそうだ。

ファラオ(箙かおる)は留依。重そうな冠と豪華な衣装をまといながら、圧倒的な歌唱力を披露して舞台全体を引き締めた。まさに申し分なし。アイーダの父親アモナスロ(一樹千尋)は、穂稀せり。台詞回しが本役の一樹そっくりだったのには思わず笑ってしまったが、それだけ忠実に役に向き合ったということで、それはそれで誠実さがうかがえて好感がもてた。

若手男役の役では、エジプト戦士のケペル(愛月ひかる)の和希そらが、さすがに場数を踏んでいるだけあって、舞台の居場所がわかった演技で、存在感があった。メレルカ(桜木)は秋音光。桜木同様、すがすがしい雰囲気でさわやかな印象。

エチオピアの囚人カマンテ(澄輝さやと)は七生眞希、サウフェ(蒼羽りく)は潤奈すばるだった。いずれも黒塗り、しかも暗い場面ばかり、そんななかの熱演だった。この二人に限らず、アンサンブルのレベルが高く、出演者が本公演の半分という少なさにも関わらず、コーラスの厚みも遜色なく、宙組若手の底力がいかんなく発揮されたステージだった。

©宝塚歌劇支局プラス6月25日記 薮下哲司


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