巨匠ハロルド・プリンスが柚希礼音の歌とダンスを絶賛、柚希復帰ステージ制作発表会見
先月退団したばかりの元星組トップ、柚希礼音の復帰第一作となるミュージカル「プリンス・オブ・ブロードウェイ」(10月23日~11月22日、東京・東急シアターオーブ、11月28日~12月10日、梅田芸術劇場メインホール)の制作発表が17日、東京都内のホテルで開かれた。今回はこの模様を報告しよう。
「プリンス―」は「ウエストサイド物語」「屋根の上のヴァイオリン弾き」のプロデュースを担当、「キャバレー」や「オペラ座の怪人」を手掛けたブロードウェイ最高の演出家、ハロルド・プリンスが、自らの.半生を数多くの自作をたどりながら振り返る自伝的ミュージカルで、ブロードウェイに先駆けて日本で初演される新作。現在、ブロードウェイの舞台に実際に立っている現役の実力派スターが数多く出演するなか、柚希はブロードウェイの舞台にあこがれる少女REON役を演じ、劇中では「蜘蛛女のキス」などプリンス作品のナンバーを披露する。
この日は、「オクラホマ!」再演でジャド役を演じてトニー賞を受賞したシュラー・ヘンズリーが「屋根の上のヴァイオリン弾き」と「スウィニー・トッド」、現在「オペラ座の怪人」のクリスティーヌ役を演じているケイリー・アン・ヴォービーズがソロを披露、その後プリンス、共同演出を担当するスーザン・ストローマン、そして柚希が登場、会見がスタートした。
金髪のショートヘアで白いブラウスに黒のパンツというスタイルは現役時代そのまま。プリンス氏やストローマン氏からは「素晴らしいダンサーであるとともにニューヨークで会ったとき歌も聞いたがとてもよかった。今回は日本語で歌う歌など彼女のための場面を作り、男役の場面も一場面考えている」と最大級の賛辞を浴びた柚希は「このような機会をいただけて大変光栄。高い壁ですが全身全霊で挑戦したい」と緊張気味に抱負。来月から三か月間、単身ニューヨークに向かい、現地出演者とリハーサルに参加するといい「お米がないとだめなので土鍋を持参して自炊、英語学校に通いながら頑張ります」と心はすでにニューヨークに飛んでいる様子だった。
会見後に単独会見に応じた柚希は「宝塚を退団することを決めて、どんなことをすれば自分自身、納得できてファンの方にも喜んでもらえるのかと、漠然とは考えていたのですが、この話をいただいたときに、これまでの自分に甘えるよりもより高い壁に挑戦をすることが、たとえ失敗しても自分にもファンの方にも納得してもらえると思い、挑戦することにしました」と復帰第一作にこの作品を選んだ理由を語り、昨年、武道館コンサートのあとの休みの期間にニューヨークを訪れたとき、プリンス氏に会い、英語で「くたばれ!ヤンキース」の主題歌を披露したことが、今回の出演につながったことも明らかにした。「私自身は全然できてないと思ったのですが、男役の低い声がかえって新鮮だったみたいです」と振り返った。「この公演のあとのことはまだ何も考えていない。宝塚時代もそうだったが目の前の山を越えることができれば次の山が見えると思う」とこの公演に賭ける並々ならぬ意欲を見せていた。
プリンス氏によれば、柚希はオープニングにブロードウェイにあこがれる少女役で舞台全体の導入役のような形で初期のプリンス作品を歌とダンスで紹介、「太平洋序曲」の場面では水兵役で男役姿も披露。歌は日本語で歌う「蜘蛛女にキス」ともう一曲英語の曲のソロも考えているという。この作品のニューヨークでの公演はまだ決まっておらず「日本初演の成果がそのカギを握るだろう」と日本公演の重要さを話していた。
またプリンス氏の声の役を市村正親が担当することもこの日同時に発表され、本人も出席。「オペラ座の怪人」日本初演の際、ラウル役でオーディションを受けた市村をプリンス氏の一存でファントム役に抜擢されたことを明かし、26年来の恩返しができることを喜んでいた。
一方、柚希は、この公演の準備のために宝塚のマンションをすでに整理して東京に引っ越したが、この12日には星組時代の後輩、真風涼帆が出演している宙組公演「王家に捧ぐ歌」を大劇場で観劇。「12年前に自分がでていたのに大感激、改めて宝塚の素晴らしさを再確認しました。でも終わってからスローで踊るダンス場面のダメ出しだけはきっちりしてきました」と宝塚愛が変わっていないことを笑顔で強調していた。
©宝塚歌劇支局プラス6月17日記 薮下哲司