明日海りお&”モトヨメ”4人大集合、20周年記念コンサート「VOICE IN BLUE」
元花組のトップスター、明日海りおの芸能生活20周年を記念したコンサート「VOICE IN BLUE」(小林香構成、演出)が19日、東京国際フォーラムホールCで東京公演千秋楽を迎え、ライブ配信された。この日は、明日海の花組トップ時代に相手役を務めた蘭乃はな、花乃まりあ、仙名彩世、華優希の4人がゲスト出演、明日海とそれぞれがデュエットするという夢の顔合わせが実現、ファンを喜ばせた。
4人が登場したのは二幕。渋いゴールドのパンツルックで登場した明日海が「お待たせしました」と紹介すると、思い思いのドレス姿の蘭乃、仙名、花乃、華の4人が登場。「ちょっと、ちょっと見せて」と明日海も客席に背を向けて4人のドレス姿をじっくり眺め「色とかかぶらないように大変だったでしょう」と気を使うと「何を着るとか最初は話し合っていたんですが結局、もうそれぞれ好きな感じで、みたいになって」と4人。花乃が一人朱色だった以外はみんな白っぽい明るいドレス。「みんなよく似合ってるよ」と明日海もほめちぎるなど最初から随分和やかなムード。
「相手役が4人というのは宝塚のトップ史上初めてなんですよね」と誰かが言うと、明日海は「でも同時に4人じゃないから」といって大爆笑の一幕も。ともあれ、この4人が同じ舞台に立つのはこの日が初めて。「忙しいところ日にちを合わせてくれてありがとう。退団して外の世界で男優さんとお仕事をさせていただくようになって、男優さんたちの優しさに触れ、私って宝塚時代に相手役さんたちにこんなに優しくしたかしらと反省ばかり。本当にみなさんありがとう」と頭を下げると4人は恐縮しきりで「明日海さんは超越した存在なので、ただただお慕いするだけ」と口をそろえた。
この4人、明日海の元相手役ということで「モトヨメ」というグループ名でLINEをしあっている仲だそう。これを知った明日海が「私も入れて」とこの場で新たに5人のグループラインを作ることを決定。さっそくそのアカウントの写真を自撮りでとることに。客席バックに明日海が5人の写真を撮り終えたところで、次はグループ名をなににしようかということでそれぞれがいろいろ提案、仙名はチャットGPTに考えてもらったというネーミングを披露したりしたが最終的には蘭乃が提案した「さゆみ王国」になりそうな気配のうちに時間切れ。明日海が「打ちあげで改めて考えよう」ということで一応ペンディング。それにしてもこの5人の仲の良さは格別。なんともいえない心地いいムードが漂った。
続いて一人一人とのデュエットコーナーへ。蘭乃とは「ベルサイユのばら」から「愛あればこそ」。プレお披露目公演だった中日劇場での思い出話に花を咲かせたり、月組の下級生時代に一緒に組んで踊った懐かしい話も飛び出した。「花組に組替えになって、もう明日海さんとご一緒することはないと思っていたら明日海さんが花組に来られて本当にうれしかったです」と蘭乃。
つづく花乃とはサヨナラ公演だった「金色の砂漠」からデュエット。明日海が「私も花乃も、二番手だった芹香(斗亜)もよその組からきて、花組としても私自身としても精いっぱいで、ずいぶん大変な思いをさせました」とねぎらうと「そんなことありません」と花乃が明日海の胸に顔をうずめて号泣する一幕も。
仙名とは仙名のサヨナラ公演だった「カサノヴァ」からダンスを交えてのデュエット。「舞浜でのコンサートでも随分盛り上げてくれたね」とコンサートが初めてで不安だった明日海にとって一番の強い味方だったことを明かしていた。仙名は「チャットGPTに明日海さんを電化製品にたとえたら何と聞いたら”高級ステレオシステム”と返ってきました」と紹介、明日海が「高級ね」と確認して笑いを誘っていた。
最後の相手役、華とは退団後に共演した「マドモアゼル・モーツァルト」から。明日海が「これまで出会った役のなかでも、自分として一番大切な役で、毎日が命がけ。千秋楽が来るのが悲しかった」といえば華も「感動で胸がいっぱいでした」と答え、また改めてモーツァルトとコンスタンツェで出会えることを願っていた。宝塚でのコンビは横浜アリーナのコンサートと「青い薔薇の精」だけだったが主題歌をアカペラでデュエット、華が「夏至の夜になると思いだします」というと明日海が「毎年夏至にはlineするね」と約束していた。
明日海の20周年ということで一堂に会した、元娘役トップスター4人だったが、誰もが明日海をこのうえなく慕い、明日海を盛り立てようとする熱い思いが見ていてすがすがしい、そんなコンサートだった。
コンサートは22日から大阪・梅田芸術劇場メインホールに場所を移して24日まで公演されるが、毎回ゲストが変わり、千秋楽は明日海と同期で専科の凪七瑠海が出演、ライブ配信が決まっている。
コンサートのセットリストは以下の通り。20周年コンサートらしく宝塚の曲から現在の曲まで網羅した内容。ピアソラの曲でタンゴを踊るシーンもあり、明日海の魅力のすべてをみてもらおうという3時間。ミュージカル、ジャズ、アカペラなど様々なジャンルに挑戦したが、歌は宝塚メドレーがやはり一番身体に馴染んでいて安心して聴くことができた。
一幕
「どこまでも」(モアナと伝説の海)
「hail holly queen」(天使にラブソングを)
「you can stop the beat」(ヘアスプレー)
「命をあげよう」(ミス・サイゴン)
「いとしい女よ」(イタリア歌曲)音楽学校で初めて習った歌
「私だけに」(エリザベート)
「sing sing sing」
「All that Jazz」(シカゴ)
「Maybe This Time」(キャバレー)
「アンサー」(アカペラコーナー)
「リフレクション」(ムーラン)
二幕
「Mのテーマ」(マドモアゼル・モーツァルト)
「私はエリーザ」(同)
「旅」(同)
「私がベルなら」(ガイズ&ドールズ)
「レッド・ドア・サロン」(エリザベスアーデンVsヘレナルビンシュタイン)
ゲストコーナー
宝塚メドレー
BLUE MOON BLUE
ポーの一族
愛と死のロンド(エリザベート)
宝塚幻想曲
金色の砂漠
サンテ
カサノヴァ
フォーエヴァータカラヅカ
ケサラ
名前のない空を見上げて(MISIA)
©宝塚歌劇支局プラス9月19日記 薮下哲司