寿つかさ、退団後初舞台「THE MONEY」で初主演
「カジノ・ロワイヤル~我が名はボンド」で、真風涼帆と同時に退団した元宙組組長、寿つかさが、8月23日から東京渋谷のCBGKシブゲキ!で上演されたQQカンパニー公演「THE MONEY」~薪巻満奇のソウサク(保木本真也脚本、演出)に主演、退団後初舞台を飾った。千秋楽の27日ライブ配信された。その後30日から9月3日まで大阪心斎橋パルコのSPACE14で大阪公演が行われている。
「THE MONEY」は、元宙組の人気スター、七海ひろきが座長を務め、元雪組の緒月遠麻、元宙組の伶美うらら、元宙組の澄風なぎそして寿の元タカラジェンヌ5人だけが出演するシチュエーションコメディ。
寿の役柄は、ある日、突然失踪した夫を捜している主婦シンカンミツキ。夫の知り合いというマリ(緒月)を訪ねてとある洋館にやってくるが、マリは不在でそこにはアオイ(七海)という謎の女性がいて「あなたの夫が不正に稼いだ現金5000万円をもっている。事件の時効成立まであと三日なのであなたと山分けしよう」と持ち掛ける。金に困っているミツキはその提案に乗るのだが、洋館の主マリが帰宅、マリがよく利用するフード配達員ウオ(澄風)、ある横領事件を捜査している刑事のワタリサエ(伶美)が次々に現われてミツキとアオイは5000万円が入ったジェラルミンケースを隠すのに躍起となる。
というところからスタート、ドタバタ騒動の上にとんでもない展開が待っているというお話。1時間20分の一幕もので、歌もダンスもなく、ひたすらドタバタ劇が繰り返される。退団公演の「カジノ・ロワイヤル」でもロマノフ大公ゲオルギー役をぶっとんだ演技で舞台を盛り上げていた寿だけに、この手のコメディはお手の物。男役女役の枠を超えたうまさで退団後初舞台を難なく務め上げた。
プロデューサーも兼ねた七海はじめ緒月、伶美、澄風の3人もそれぞれ個性的で役にもあっていて、卒業後のさらなる成長ぶりがうかがえたのはうれしかった。ただ演じている方がやたら楽しんで演じている割には見ている側にそれが十分伝わっていないもどかしさが感じられたことも確か、その辺がやや残念な舞台だった。
とはいえ長年宙組組長として宝塚のシンボル的な存在だった寿の肩の荷をおろしたかのような吹っ切れた再出発にエールを送るとともに、今後のさらなる活躍を期待したい。
©宝塚歌劇支局プラス8月30日記 薮下哲司