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Channel: 薮下哲司の宝塚歌劇支局プラス
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和希そらが影のあるクールな外科医好演 雪組公演「双曲線上のカルテ」開幕

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和希そらが影のあるクールな外科医好演 雪組公演「双曲線上のカルテ」開幕

 

雪組の実力派人気スター、和希そら主演のミュージカル・プレイ「双曲線上のカルテ」(石田昌也監修、脚本、樫畑亜依子潤色、演出)が28日、梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで開幕した。

 

「失楽園」などのベストセラー作家、渡辺淳一原作による医療小説「無影燈」を、イタリアに舞台を移してミュージカル化した作品で、2012年に雪組の早霧せいなの主演で初演、今回、主人公の影のあるクールな外科医役に和希を得ての11年ぶりの再演。原作は田宮二郎、中野良子主演で「白い影」のタイトルでドラマ化され「白い巨塔」とともに医療ドラマブームの先駆けとなった。

 

初日直前に和希扮するフェルナンドの同僚の医師ランベルト役を演じる予定だった縣千の体調不良による休演が発表され、眞ノ宮るいが急きょ代役で出演している。

 

優秀な外科医、フェルナンド(和希)は、バチカン・カソリック大学病院での約束されたエリート・コースを捨て、ナポリ近郊の個人病院、マルチーノ・メディカル・ホスピタルで勤務していた。孤独な影を秘めたフェルナンドだったが、看護婦のモニカ(華純沙那)はいつしかフェルナンドのクールな眼差しに惹かれ、恋に落ちる。外科医としての腕前は秀逸でありながらも夜勤中に酒を飲み、医療法違反の手術をし、さらには女のうわさも絶えないフェルナンドに、正義と理想の医療を旨とする若き医師ランベルト(眞ノ宮)は反発を強める。だが、一見傍若無人にみえるフェルナンドの行動の裏にはある秘密が隠されていた。

 

初演に出演していた専科の夏美ようが院長、五峰亜季がその妻、雪組組長の奏乃はるとがフェルナンドの養父と3人が同じ役で出演という珍しい再演だが、樫畑潤色は、骨格はそのままに新たな登場人物の設定やシーンを大幅改変するなどして樫畑色に塗り替えた。初演にあった登場人物がカンツオーネを歌いつぐ息抜きのようなユーモラスな慈善パーティーの余興場面がカットされ全体的にずいぶん上品になった印象。

 

和希、華純、眞ノ宮そしてクラリーチェ役の野々花ひまり4の人物設定は初演を踏襲、大きな変更点は久城あす演じるレントゲン技師ジョルダーノを大きく膨らませ、初演では二幕から姿を見せる咲城けい扮する院長の愛人アニータ(希良々うみ)の息子アントーニオを前半から登場させたこと院長暗殺を狙って病院に乱入する革命軍団のエピソードもカットされた。二幕のアイドル、アマーリア(白綺華)入院のエピソードも改変された。の分、真の医療とは、愛とは、そして命とはという深いテーマが浮き上がり、さらに感動的な舞台になった。

 

和希は、初演の早霧のイメージを大事にしながら自分の色を濃厚に出し、金髪の長髪に白衣、私服のトレンチコートを巧みに着こなし、独特の抑制の効いたセリフ回しで影のあるクールな医師を好演。また新たな和希の世界を作り上げた。和希のためのラストのシャープなダンスソロも目に焼き付いた。

 

相手役のモニカに起用された華純は「夢介千両みやげ」新人公演のヒロインを好演、注目していたが、疑うことを知らない純粋なモニカを、屈託のない愛くるしい笑顔で演じぬき、なめらかで美しい歌声とともに文句なしに素晴らしかった。とりわけフェルナンドの秘密を自分だけ知らず泣き崩れる場面はせつなく感動を呼んだ

 

縣休演で急きょ代役となったランベルトの眞ノ宮も、フェルナンドと対になる大役を急ごしらえとは思えない地に足の着いた誠実な演技で体現。これまで蓄えてきた力の大きさを発揮して見事だった。

 

初演と同じ役の3人のベテラン勢が若手主演陣をしっかりと支え、末期がん患者チェーザレ役の桜路薫も滋味豊かな味のある演技で舞台を和ませた。

 

©宝塚歌劇支局プラス829日記 薮下哲司

 


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