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彩風×夢白×朝美 雪組ロマンチックトリオ快調「愛するには短すぎる」開幕

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彩風×夢白×朝美 雪組ロマンチックトリオ快調「愛するには短すぎる」開幕

 

彩風咲奈を中心とする雪組による全国ツアー公演、ミュージカル「愛するには短すぎる」(小林公平原案、正塚晴彦脚本、演出)とファッシネイト・レビュー「ジュエル・ド・パリ!」~パリの宝石たち~(藤井大介作、演出)が25日、梅田芸術劇場メインホールで開幕した。大西洋航路の豪華客船を舞台にしたロマンチックコメディと宝石をテーマにした最新レビューのツアーバージョン、彩風率いる現在の雪組にぴったり全国ツアーにふさわしい明るく華やかな舞台だった。

 

「愛するには‐」は、2006年、星組のトップだった湖月わたるのサヨナラ公演の演目として上演されたロマンチックコメディ。ロンドンからニューヨークに向かう大西洋航路の豪華客船を舞台に繰り広げられる4日間の物語。英国留学から帰国の途に就く資産家の養子フレッドと親友で舞台作家志望の親友アンソニー、客船のショーダンサー、バーバラの3人を中心に乗り合わせた様々な人間模様をからみあわせながら展開する群像劇で、初演はフレッド湖月、アンソニー安蘭けい、バーバラ白羽ゆり3人抜群のコンビネーションを発揮、以後2011年に柚希礼音、凰稀かなめ、夢咲ねねの星組、2013年に龍真咲、美弥るりか、愛希れいかの月組と中日劇場と全国ツアーで2度再演、今回4度目の上演となる

 

船内だけで展開する話なので、大劇場上演時は、回り舞台を効果的に使用してデッキと船室をスムーズに転換していたが、全国ツアー公演ではそういうわけにはいかないので、装置を工夫してしのぎ、彩風、朝美絢、夢白あやのトリオは初演に勝るとも劣らない呼吸の良さで、客席をおおいに沸かせた。

 

舞台は甲板でアンソニーに扮した朝美が主題歌を歌場面から始まり、フレッド(彩風)が、船室で少年時代の夢を見ているシーンにつながっていくミズーリの故郷で、フレッドの幼名マイケル少年(絢斗しおん)は幼馴染のクラウディア(琴峰紗あら)に将来の夢を語り、結婚の約束をしている。しかし実際の結婚相手は養父が決めたナンシー(音彩唯)だった。眠りから覚めたフレッドは、散歩に出たデッキ、船内で上演されるショーのダンサー、バーバラ(夢白)と出会う。二度目にバーバラがマネージャーのフランク(華世京)に因縁を付けられているところを救った時、世間話から自分たちがあの幼馴染の二人だったことがわかり、フレッドの心はおおきく揺れる。

 

20年ぶりに出会った幼馴染との懐かしくも純粋な思い、資産家の養子として安定した進路を取るか、すべてを捨てて愛を選択するか、4日間の葛藤が熱い思いとともにほろ苦い切なさをもって描かれる。

 

彩風が、何不自由なく育った資産家の青年の不器用で朴訥な雰囲気を巧みに表現、まるで最初から彩風に当て書きされたような風情を醸しだした好演。アンソニーの朝美とのセリフの間合いも絶妙で、二人のコンビが充実期に入っていることをうかがわせた。

 

やや押しの強いアンソニーは初演の安蘭けいのイメージが強いが、朝美も軽さの中に親友思いの心遣いがにじみでた芝居心のある深い読みで演じ切り、ラストに余韻を残した。

 

夢白は、白羽、夢咲、愛希とそうそうたる娘役トップが演じてきたバーバラを、自分に引き寄せて自由に演じて好ましかった。女優を目指しながらも母親の看病のために故郷に帰ろうとする優しい心と自立心兼ね備えた芯のある女性像を柔らかく表現、好感が持てた。

 

初演で未沙のえるが演じて当たり役とした執事ブランドン役は専科の凛城きら。さすがの実力で”間”の演技で見せた。出ただけで笑いを取る存在感は見事だった。

 

基本的にはこの4人がメーンキャスト。あとはどの役も群像劇の一人という感じ初演で柚希礼音が演じたバーバラのバンドマネージャー、フランクは華世京。アクの強いプレイボーイ的な役だがあまり大きな役ではなく、ショーシーンでのダンサー役などで見せた。新人公演の主演で人気上昇中の紀城ゆりやは人気女優ドリー(音彩唯)のマネージャー役、諏訪さきは初演で涼紫央が演じた舞台プロデューサーのマクニールでそれぞれ存在感を示した。

 

バレエ団の団長ロバート役を演じる予定だった透真かずきとスノードン侯爵(真那春人)の妻ヴィクトリアの妃華ゆきの休演が初日前日に発表され、それぞれ天月翼と琴羽りりが代役で演じた。急な代役にも関わらずふたりともそうは思えない演技で安定感があったのはさすがだった。特に天月の一夜漬けとは思えない自然な作りこみには感嘆。

 

「ジュエル・ド・パリ」は、7月に東京公演が終わったばかりの新作レビューのツアーバージョン。パリの名所をいろんな宝石に見立てて展開するレビューで、「モンパリ」から「愛の宝石」「すみれの花咲くころ」までさまざまな宝塚の名曲を新たなアレンジで現代によみがえらせている。和希そら、縣千が別箱に出演するため、そのナンバーに誰が入るかというのが注目だったが、コンコルド広場のオベリスクの場面で和希が演じたクレオパトラは叶ゆうりが起用され、迫力あるダンスを披露。後半の縣千がセンターを踊ったバスティーユの場面は諏訪がリード、凱旋門Aは諏訪と華世といった役替わりだった。

 

彩風、夢白は入れ代わり立ち代わりのフル稼働、彩風は品格のあるダンスにさらに磨きがかかり、夢白はカンカンでアクロバティックな激しいダンスのあと、息も乱さずソロを歌いあげたのには驚嘆。

 

中詰めでは客席降りも復活、フィナーレまで一気呵成に盛り上げた。中軸2人の突然の休演にもかかわらず、それを補って余りあるパワー爆発のステージだった。

 

©宝塚歌劇支局プラス8月26日記 薮下哲司





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