安蘭けい、遠野あすかと4年ぶりに宝塚に里帰り、
ディナーショー「時の経るホテル」開催
元星組のトップスターで女優として活躍している安蘭けいが、6月30日、相手役だった遠野あすかをゲストに迎え、新装なった宝塚ホテルに初登場、ディナーショー「時の経るホテル」(菅野こうめい構成、演出)を開いた。
2019年、旧宝塚ホテルのフェアウェルと自身の退団10周年を記念して開いたディナーショー以来、4年ぶりとなった安蘭のディナーショー。多忙なスケジュールをぬっての出演で、東京公演はなく宝塚1回だけという贅沢なショー。コロナ禍も一段落して、テーブルの仕切りも取れ、会場は満席、久々の安蘭を温かく迎えた。
濃いワインレッドのゴージャスなドレスで登場した安蘭、いきなり宝塚時代の代表作「スカーレット・ピンパーネル」から「ひとかけらの勇気」からオープニング。従来のディナーショーではアンコール曲として歌ってきた代表曲からのスタートに客席のファンも一瞬、驚きを隠せなかったが、その豊かな歌声に引き込まれ、一気に安蘭の世界に誘った。
2曲目は、ミュージカル「キング・アーサー」から「報いを受けなさい」続いて、ドラッグクィーンに憧れる息子を応援する母親を好演した「JAMIE」から「He’s My Boy」をしっとりと歌いこむ。「最近は年齢相応の母親役が増えて」と笑いを誘う。
自身が出演した最新ミュージカルからの持ち歌のあとは、宝塚ホテルならではの宝塚メドレー。「私の宝塚初物語」というコンセプトで、まずは初舞台「ベルサイユのばら」から「愛あればこそ」次は、新人公演初主演の「JFK」から「ニューフロンティア」バウ初主演「イカロス」そして女役初挑戦「王家に捧ぐ歌」から「アイーダの信念」とつづけた。
そして星組トップお披露目「シークレット・ハンター」で相手役となった遠野あすかが登場、主題歌「Eres mi amor大切な人」をデュエットというなかなかの構成。ここでひとしきり出会いの思い出話など二人の懐かしいトークが炸裂。コンビの代表作となった「スカーレット・ピンパーネル」から「あなたこそ我が家」をデュエット、現役時代と変わらない息の合ったところを見せつけた。
ここからは「雨に唄えば」のバンド演奏から始まる、6月という季節柄「雨」にまつわる歌のコーナーへ。この日、宝塚は雨模様。なんともタイムリーな構成。「はじまりはいつも雨」「最後の雨」などに続けてヒット曲「雨の御堂筋」を軽快に歌いあげて大いに盛り上げた。
ラストソングはミーシャが歌ってヒットした「アイノカタチ」を安蘭流に情感を込めて歌い、ショーを締めくくった。ここで再び遠野を呼んで最後の締めのご挨拶。遠野が三歳のさくらちゃんの育児に追われている近況なども披露、なごやかな雰囲気が漂うなか退場。鳴りやまぬ拍手に応えての安蘭のアンコールソングはミュージカル「サンセット大通り」からヒロイン、ノーマが歌うソロの大曲「アズ・イフ・ウイ・ネバー・セイ・グッドバイ」を披露。これがライフワークとしてこれからも歌い続ける決意に満ちていて、まさに至福の絶唱。充実感あふれるディナーショーだった。
安蘭の今後の予定は9,10月にミュージカル「ラグタイム」(井上芳雄、石丸幹二、綺咲愛理らが出演)その後、雪組プレ100年記念コンサートに出演する。遠野は2013年から宝塚受験スクール「Classy」を主宰。毎年、多数の合格者を輩出しており、今年も「8人合格させていただきました」と笑顔で話していた。
©宝塚歌劇支局プラス6月30日記 薮下哲司