宙組トップ、真風涼帆「任務完了」&月組鳳月杏ディナーショー
宙組トップスター、真風涼帆のサヨナラ公演、アクション・ロマネスク「カジノ・ロワイヤル」~我が名はボンド~(小池修一郎潤色、演出)が11日、東京宝塚劇場で千秋楽を迎え、真風が相手役の潤花、寿つかさ組長ら6人とともにラストステージを踏んだ。この日は
全国映画館でのライブビューイングとライブ配信のほか「カジノ・ロワイヤル」本編のみ全世界にも各地の字幕付きで配信されるという宝塚としては初めての試みも行われた。
本公演後に行われたサヨナラショーは5月の宝塚大劇場での内容と同じだったが、コロナ5類移行後とあって、出演者も客席も伸び伸びとした空気感につつまれ、「カプリチョーザ」「デリシュー」と続くレビューコーナーでは手拍子もひときわ大きく響いた。終演後の最後の挨拶は男役の正装、黒の燕尾服姿で登場。「この豪華絢爛の世界で私は何ができるのかと夢中で走り続けてきました。一人では到底できなかったことを様々な人との出会いと大きな愛でここまで成長させていただきました。8代目宙組トップスター、真風涼帆、任務完了いたしました」とジェームズ・ボンドにひっかけて締めくくった。
終始笑顔で「幸せという言葉では言い表せないほどの幸せ」と話していた真風だったが、何度目かのカーテンコールで「この人を呼ばないと」と次期トップスター、芹香斗亜を紹介したときだけは涙腺が爆発。「18年間ずっと横にいてくれて本当に頼もしい仲間でした、彼女いてくれてこその私だった」と真風が話すと、ふたりとも涙、涙。芹香も「ずっと真風さんの背中を追ってきたのに、明日からいらっしゃらないと思うと寂しくて。でもそんなことも言っていられないので頑張ります」と健闘を誓う。そんな芹香に真風が「応援するからね」とエールを送るなど感動的なバトンタッチとなった。
一方、同じ日、月組のスペシャルな二番手スター、鳳月杏が、宝塚ホテルに続いて「Gemini」(中村一徳構成、演出)のタイトルで二度目のディナーショーを第一ホテル東京で開いた。各組トップ、二番手の中で気が付いたら、いつの間にか現役最上級生スター、真風と同期の堂々たる貫禄の宝塚を代表する男役スターだ。
英かおと、彩音星凪、羽音みか、一乃凛の月組生4人をゲストに迎えてのワンマンショーで昭和歌謡、タンゴ、宝塚メドレーの三部構成。
バンドがいきなり懐かしい曲を演奏「星降る街角」(英&彩音)「恋のバカンス」(羽音&一乃)を歌うとシルバーメタリックに赤をプラスした衣装で鳳月が華やかに登場。なんとフランク永井でヒットした「君恋し」をしっとりと披露。意外な選曲で驚かされたが、昭和歌謡は凰月たっての希望とか。続いて「伊勢佐木町ブルース」「チャンピオン」「ランナウェイ」「め組のひと」で盛り上がった。「ランナウェイ」のサングラスが懐かしい。
昭和歌謡のあとはがらりとかわって渋いタンゴ。4人を従えて「Kiss of Fire」「Hermando’s Hideaway」をかっこよく決めた。
宝塚メドレーは最近の出演作から選曲。「大江戸墨田川音頭」(川霧の橋)から始まって「スペイン人は赤が好き」(ELPIDIO)とつづけたが、やはり本人はこれが一番歌いたかったのだろうと思ったのが「あかねさす紫の花」。「天比古の唄」「紫に匂う花~恋の歌」と二曲。明日海りおとの共演による博多座公演が鮮やかによみがえった。思い入れたっぷりの熱唱だった。
ほかに一乃との「七夕の宵」(雪華抄)羽音との「衛星ドリーマー」(出島小宇宙戦争)などにつづいて、最後の曲に選んだのは宝塚を代表する名曲「皇帝の魔女」の「愛の歌」。
鳳月の宝塚愛に満ちた締めくくりだった。
©宝塚歌劇支局プラス6月11日記 薮下哲司