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Channel: 薮下哲司の宝塚歌劇支局プラス
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雪組新トップコンビ彩風咲奈×夢白あや、大劇場披露公演「Lilacの夢路」開幕

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©️宝塚歌劇団



雪組新トップコンビ彩風咲奈×夢白あや大劇場披露公演「Lilacの夢路」開幕

 

 

雪組の新トップコンビ、彩風咲奈と夢白あやの宝塚大劇場披露公演、ミュージカル・ロマン「Lilac(ライラック)の夢路」~ドロイゼン家の誇り~(謝珠栄作、演出)とファッシネイト・レビュー「ジュエル・ド・パリ‼」(藤井大介作、演出)が、22日開幕した。109期生39人の初舞台公演ともかさなって、初日から華やいだ雰囲気に包まれた。

 

Lilac-」は、19世紀初頭のドイツを舞台に、プロイセン王国のユンカー(騎士領所有の貴族)であるドロイゼン家の長兄である彩風扮するハインドリヒが4人の弟たちと力を合わせてドイツの発展のために様々な障害と闘いながら鉄道建設に邁進するというストーリー。

 

思わず今年生誕150年を迎えた宝塚歌劇団の始祖である小林一三翁のファミリーストーリーと重ね合わせたが、作者の謝氏も、少なからずそれを意識しながら書き下ろしたよう。

 

19世紀初頭といえば日本は江戸時代末期だが、イギリスでは産業革命が起き、フランス王政復古が揺らぐなど価値観が目まぐるしく変わっていった時代。ドイツも連邦諸国の統一が叫ばれていた時期で、そんな歴史的背景を予備知識として知っていた方が面白く見れるが、基本的に兄弟愛の物語。彩風と夢白ふんするバイオリニスト志望のエリーゼとのラブストーリーも並びはこの上なく美しいが、付け足しのような感じで、新コンビ披露というにはやや物足りなかった

 

オープニングのハインドリヒの夢に出てくる謎の魔女(美穂圭子)の正体がラストで明かされ3分余りですべてが丸く収まり、あっけにとられているうちに幕となって一件落着というのも思わず絶句してしまった。

 

ただオープニングの「ファウスト」の夢のシーンはじめ、つねにきらきらとした星が降るような幻想的な舞台はまるで水の入ったオブジェの中にいるよう。幻想的な舞台美術が素晴らしく、ドラマの弱さを補って余りあった。夢のような宝塚の世界は満喫できよう。

 

彩風は、由緒正しい貴族の長兄にぴったりはまり、その直情的な行動にも誰もが憧憬をもって対するというカリスマ的雰囲気を体全体から醸しだした好演。一連のトップ主演作の中でもビジュアル的にも最も彩風らしさの出た作品となった。

朝月希和退団後、相手役として起用された夢白は、「ボニー&クライド」でその相性の良さは確認済みだが、19世紀初頭、女性が音楽家として生きることが難しい時代に、あえてその道を選ぼうとする意志の強さを明確に打ち出すエリーゼを、品を失わずさわやかに演じた。彩風扮するハインドリヒと自然と惹かれあっていく過程がいまいちよく書けていなくて盛り上がらないのが残念だが二人の並びはこのうえなく美しい。

 

ハインドリヒの4人の弟たち。一家の財務を担う次男のフランツが朝美絢。軍人で製鉄所を任されている三男のゲオルグが和希そら。官僚に秘書を務める四男のランドルフが一禾あい、そして音楽学校生の五男、ヨーゼフの華世京。それぞれ役割を与えられているが、華世扮するヨーゼフがハインドリヒエリーゼを紹介、二人の出会いのきっかけを作るのと、朝美扮するフランツが、ハインドリヒとの結婚を願う銀行頭取の娘ディートリンデ(野々花ひまり)にひそかに思いを寄せているというのが後半への大きな伏線となっていく。

 

縣千は、エリーゼの幼友達で鉄職人のアントン、エリーゼがハインドリヒに紹介、彼らの鉄道建設事業に携わることになる。溌溂とした演技が印象的だが、後半の鍵を握る重要な役とだけ言っておこう。魔女役の美穂圭子の歌声と存在感の確かさも特筆しておこう。

 

「ジュエル・ド・パリ」は宝塚レビューの原点、パリをテーマに様々な名所をめぐりながらパリの魅力を満喫しようという豪華絢爛であり洗練されたレビュー。

 

ルノワールやロートレックら画家に扮した朝美や和希ら雪組スターたちが銀橋に勢ぞろい、舞台中央から現れた彩風扮する美女が「私を描いて」と歌い、彩風が大きな冠を外すと同時に、衣装が引き抜かれ一瞬のうちに燕尾服の美男子に変身。彩風の導きによって大階段にはおそろい黄色のミモザの衣装を着た109期生39登場。「モン・パリ」に乗せてラインダンスへ。プロローグにいきなり初舞台生のラインダンスというのは意表を突いた展開。

 

続いて夢白、和希、美穂、朝美とスターたちのパレードが続きエッフェル塔の前で彩風と夢白を中心に全員がラインアップ、彩風と夢白だけが残ってジャジーにアレンジした「愛の讃歌」を銀橋でデュエット、ピンクをメーンにした淡い色彩がいかにもパリレビューの感覚。モンパルナス、コンコルド広場、ルーブル美術館とめぐるなか、コンコルド広場の場面で和希がクレオパトラを思わせるオベリスク女Sで奏乃はるとのソロをバックにダイナミックなダンスを披露するみどころ。

 

ラインダンスを最初に持ってきたことから構成がいつものレビューとは違ってとにかく新鮮。彩風のカンカンボーイS、カンカンレディSの夢白を中心にしたから華やかなカンカンからシャンゼリゼ大通りのパリメドレー、凱旋門での彩風、夢白のデュエットダンスとあっというまにフィナーレのパレードとなった。おなじみのシャンソンを大胆なアレンジで聴かせたところも刺戟的で、ショースターとしての彩風の見せ場もたっぷりあって楽しめるレビューだった。

 

©宝塚歌劇支局プラス423日記 薮下哲司

 


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