君島さん、早くもスター性十分。宝塚音楽学校第102期生文化祭開催
宝塚音楽学校第102期生文化祭が13日から宝塚バウホールで始まった。今回はこの初日第1回の模様をレポートしよう。
第1回とあって中川阪急電鉄社長はじめ会場は関係者や父兄で満席、長女、憂樹さんの晴れ姿を見ようと実業家の君島誉幸、十和子さん夫妻が会場に姿を見せたことから報道関係者も多数つめかけ、久々に華やかな雰囲気に包まれた。
文化祭自体の中身はこれまで通り。第一部は「日舞、予科生コーラス、クラシック・ヴォーカル、ポピュラー・ヴォーカル」(三木章雄構成、演出)第二部が演劇(谷正純作、演出)、第三部がダンスコンサート(三木章雄演出)と続く。102期生40人は3月18日からの星組公演から初舞台を踏むことになっており、すでに口上の日程も決まり、芸名も発表されているが、入団前の音楽学校の文化祭では本名で出演、芸名との併記は規制されているので、以下本名のみで記す。
日舞は恒例の「清く正しく美しく」から。ヴォーカルのソロは廣田祐奈さん。「凛として花一輪」(パンフレット掲載の好きな言葉)という言葉通り、凛とした表情と歌声で魅了、群舞も銀の扇子づかいがよくそろった。
続く103期生40人による予科生コーラスは、中島みゆき作詞、作曲の「糸」と民謡「八木節」の2曲。「八木節」が、手拍子や軽いステップを交えて、明るく軽快な歌声がホールにひびきわたった。
クラシック・ヴォーカルは板垣日向子さんが歌劇「トゥーランドット」から「誰も寝てはならぬ」甲藤晶子さんが「微笑みの国」から「君はわが心のすべて」を披露。いずれも日頃の成果をきちんと歌いこなしたが、甲藤さんの男役ならではの低音の発声が際だった。ポピュラー・ヴォーカルは、昨年亡くなった宝塚歌劇の大作曲家、入江薫さんを追善しての名曲メドレー。「嵐が丘」の板垣さん、「霧深きエルベのほとり」から「うたかたの恋」を平野彩華さん「鴎の歌」を甲藤さんが歌い、力強い歌声を披露した。話題の君島さんは廣田さんと「白いライラックの花は好き」ので登場。アイドル的要素十分の甘い顔立ちで、一見しただけでスター性は十分だ。なめらかな低音の歌声も魅力的。
「花のオランダ坂」の名曲「私は桃の花が好き」を歌ったのは斎藤沙也さんと矢島彩音さん。斎藤さんの堂々たる歌声が印象に残った。「ジャワの踊り子」から「雨の街角」をデュエットした久田侑女さんと利倉久美子さんのコンビは、歌唱はもうひと押しが足りずやや物足りなかったが、初々しさは一番だった。
「エスカイヤ・ガールズ」でメーンをとった娘役の名子ひとみさんと山本さくらさんの華やかな雰囲気はすぐにでも本公演で通用しそう。舞台に花が咲いたような明るさだった。
「ベルサイユのばら」の「バラが咲く」や「風と共に去りぬ」の「新しき南部」「水色の愛」そして「ノバ・ボサノバ」冒頭に流れる「ソル・エ・マル」など、これも入江さんの作曲だったのかという新しい発見もある意義のある選曲だった。なかでも「ソル・エ・マル」を歌った濱平亜美さんがフィーリングのある好唱だった。
第二部の演劇「オーロラの歌声」は、18世紀後半、スウェーデンを舞台に、皇太子のクリストフが、農民から近衛兵を選抜するために2年間、田舎で候補生の若者たちとともに訓練に精を出すうちにめばえた身分を超えた友情と愛を描いた心温まる青春群像ドラマ。
A組は主演の皇太子クリストフが君島さん。宿舎の娘エルヴィラが名子さん。候補生の班長ヤンが三川綾花さん。エルヴィラの姉フェリシアが山本さんといった配役。
冒頭、厳しい訓練から抜け出そうとしたエリック(西脇恵子さん)とその恋人レーナ(東堂瑠伽さん)が登場、追いかけてきた候補生たちにつかまってしまう。長身で甘いマスクの西脇さんの軍服姿がなかなか決まっていて立ち姿は抜群だが、台詞がやや甘いのが惜しい。候補生班長ヤン役の三川さんの、すっきりした二枚目ぶりがさわやかだ。自己中心でみんなから浮いているルーカス役の丸山ひかりさんは真風涼帆に似た容姿と長身でひときわ目立った。役柄的にもおいしい存在。主演の君島さんは、そこにいるだけで周囲が明るくなる天性のスターとしての資質のようなものを持ち合わせ、皇太子という役柄にまさにぴったり。それにふさわしい品格もあり、スターの素質十分。魅力的な歌唱とともにこれからの活躍に期待したい。
エルヴィラ役の名子さんとフェリシア役の山本さんの二人も大型娘役の資質十分。華やかなヒロインが似合う名子さん、勝ち気な雰囲気がかっこいい山本さん、それぞれ華やかで品があるのがいい。役を変えても二人とも十分通用するだろう。豪華な姉妹だった。
B組はクリストフが板垣さんに代わり、エルヴィラが今宮花乃さん、ヤンが福元果音さん、フェリシアが服部瑠莉紅さんという配役。
ダンスコンサートはバレエ、ジャズダンス、モダンとさまざまなダンスを交代で踊り継いだ。群舞が多いなか、タップでの板垣さん、名子さんの華やかなコンビがやはり目に飛び込んだ。どれも極めて難度が高く、それをテンポよくパワフルに踊り切った102期生40人のダンスのレベルはかなり高いといってよさそうだ。君島さんを筆頭に男役、娘役ともにスター性豊かな生徒も多く、なかなか楽しみな102期生といってよさそうだ。
一方、上演中の宝塚大劇場公演「るろうの剣心」の雪組メンバーにインフルエンザが猛威を振るい、6人が休演するという異例の事態となっている。
武田観柳役の彩凪翔もその一人で、急きょ真那春人がピンチヒッターに立っている。ところがその真那が火事場の底力を発揮、見事な代役ぶりで急場をしのいでいる。台詞にパワーがあり、いつ稽古したのかと思うほど役が身についているのだ。実力派の面目躍如だ。演出の小池修一郎氏は「フルパワーでお見せできないのは残念だが、サッカーのゲームでけが人が出たときに出場したピンチヒッターが活躍する例もあり、宝塚もそういったチームプレーに似た部分もあります」とサッカーにたとえて、雪組の団結力をたたえている。休演中の彩凪は、さぞ無念だろうが、1日も早く治して完全復帰を目指してほしい。
©宝塚歌劇支局プラス2月13日記 薮下哲司