109期生40人が2年間の成果を発表、宝塚音楽学校文化祭開催
宝塚音楽学校の文化祭が2月24日から26日までの三日間、宝塚バウホールで開催され、109期生40人が2年間の研さんの成果を披露した。最終日26日4時の回を鑑賞することができたのでその模様を報告しよう。
20倍以上の倍率を勝ち抜いて入学するものの毎年一人か二人必ず途中落伍者がいる厳しい同校で、誰一人欠けず40人全員が文化祭に出演できたのは近年珍しいこと。まずそこから109期生全員を讃えたい。
文化祭自体は、日舞、クラシックボーカル、ポピュラーボーカルと続く第一部、二部の演劇、三部のダンスと成績上位の生徒がそれぞれの主要なパートで技量を披露する構成は従来通り。コロナ禍で中止されていた予科生のコーラスが2年ぶりに復活した。
オープニングは恒例の黒の紋付、緑の袴の正装による日舞「清く正しく美しく」。ソロはクラシック、ポピュラーとも首席の今岡悠さんが透き通った美しい声で熱唱、日舞は板倉彩さんがセンターでリードした。板倉さんは、目鼻立ちがくっきりとした整った容姿で、ボーカル、演劇、ダンスでも活躍、ひときわ目立つ存在。
ボーカルではクラシックは吉川陽葵さんが「ほほえみの国」から「君はわが心のすべて」と岡本のぞみさんの「道化師」から「衣裳をつけろ」と男役二人。岡本さんの厚みのある低音の響きが印象的だった。
ポピュラーは宝塚主題歌メドレーで、男役上位の久保田舞桜さん、増子栞さん、山田早瀬さん、吉川さんの4人を中心に「タカラジェンヌに栄光あれ」からスタート、岡本さんはここでも「花の業平」から「忍ぶの乱れ」を好唱。締めを飾ったのは「霧深きエルベのほとり」から「鴎の歌」を歌った山田さんと「ラ・ラ・ファンタシーク」から「愛の宝石」を歌った今岡さんだった。途中「アンド・ナウ!」から「そして、今」を板倉さん、久保田さん、南平友里愛さん、望月瑠々子さんの男役4人が歌い継いだが、長身の久保田さんはじめ美形ぞろい、入団後の活躍が楽しみだ。
二部の演劇「BE SUREⅡ」(正塚晴彦脚本、演出)は、舞台芸術を学ぶ学生たちが卒業公演の制作会議をするなか、彼らがイメージする公演の内容が彼らによって展開されていくという複雑なステージ。A組とB組に分かれ、最終回はB組だった。
会議を仕切る緑川を俳優、森口瑤子の長女、坂元南月さん、脚本を書いた青山を今岡さん、彼らより1年先輩の黒田を増子さん、後輩の赤田を千々松春紀さんといったところが会議の主要メンバー。台本上の主役ピエールは岡本さん、その友人エドワードに板倉さん、二人が思いを寄せるが皇太子妃に決まるマリーに首席の河合杏実さん、その姉のエリザベスに坂元さん、キャサリンの今岡さんの5人が台本上の主要人物。会議のメンバーが台本上の人物になって早変わりで登場するので誰が何をやっているのか初見の観客には随分不親切な舞台だが、演じる方はやりがいがありそう。ここでは坂元さんの芝居心のある二役が全体のまとめ役として光っていた。河合さんのヒロインとしての存在感にも注目したい。
ダンスコンサートは振付家、平沢智氏の愛娘、平沢桜さんが大活躍。オープニングのジャズダンス(尚すみれ振付)から切れのいい動きで目を奪った。バレエ「韃靼人の踊り」(鈴木星佳振付)でペアを組んだ久保田さんと田中南帆さんのダイナミックなデュエットも素晴らしく、長身から繰り出す難易度の高いリフトなど久保田さんの圧倒的な迫力がみものだった。
美形ぞろいで全体にレベルが高いが日舞センターを踊った板倉さんの彫りの深い美貌、歌に芝居に活躍した今岡さん、長身で圧倒的な存在感を示した久保田さんの3人がとりわけ印象に残った109期の文化祭だった。
©宝塚歌劇支局プラス2月27日記 薮下哲司