OSK、未来への扉を開くレビュー「春のおどり」開幕
紅ゆずる芸能生活20年を記念ディナーショー「Vingt Rosso」開催
昨年、創立100周年を迎えたOSK日本歌劇団が、トップスターの楊琳を中心にした101年目最初のレビュー「春のおどり」(上島雪夫作、演出、振付)を2月4日から大阪・道頓堀の大阪松竹座で開幕した。同座は今年が開場100周年、そのこけら落としを飾ったのがOSKの前身、松竹楽劇部というゆかりもあって、記念の公演ともなった。
OSK101年目最初のレビュー「春のおどり」は、一部がミュージカル・アクト「レ・フェスティバル」二部がレビュー「未来への扉~Go to the future~」の二部構成。いつもは和洋の二部構成だが、今回初めて洋物2本で組み合わせたのが新味。
「レ・フェスティバル」は「シェルブールの雨傘」のジャック・ドゥミ監督によるフレンチ・ミュージカル「ロシュフォールの恋人たち」のプロットをそのままに、フランスの港町ロシュフォールで開かれるフェスティバルにやってきた様々な人々の出会いやすれ違い、再会を歌とダンスだけで描いたポエティックなミュージカル。映画はカトリーヌ・ドヌーブ、ジョージ・チャキリスそしてジーン・ケリーなど米仏のスターが競演した大作だった。
なか
ジーン・ケリーが演じたアメリカのスターを楊、フランソワーズ・ドルレアックとドヌーブ姉妹が演じた双子の姉妹役を舞美りらと千咲えみ、ミシェル・ピッコリが扮した孤独に生きる男に桐生麻耶、ダニエル・ダリューが演じた孤独に生きる女に朝香櫻子、ジャック・ぺランの夢見る水兵役を翼和希、ジョージ・チャキリスらの旅芸人トリオを天輝レオ、壱弥ゆう、椿りょうといった配役。
映画を見ている人にとっては簡単なストーリーなのだが、セリフがないので初見の人には誰と誰がすれ違っているのかわかりにくいかも。音楽も宝塚のレビューで時々使用されるミシェル・ルグランの曲ではなくオリジナル曲を使用、好ましい佳編ではあるが、準備から本番へと進むなか肝心のフェスティバルの場面に盛り上がりを欠いたのが惜しい。
「未来への扉」は、ダンスのOSKの集大成的なレビューで、楊を中心にした華やかなプロローグからヒップホップやワルツ、燕尾服の群舞、ラインダンスと様々なダンスシーンを展開、OSKの未来への希望をつづる華やかなレビューに仕立てている。
OSK出身のブギの女王、笠置シヅ子をモデルにしたNHKの朝のテレビ小説「ブギウギ」が趣里をヒロインに今秋から放送が始まるが、次世代のスター、翼がヒロインの先輩役、橘アオイ役で出演が決まり、カーテンコールで楊が舞台上から翼を紹介する場面もあり、101年目を迎えてOSKのさらなる上昇機運をうかがわせた。
一方、元星組のトップスター、紅ゆずるが、芸能生活20年を記念したディナーショー「Vingt Rosso」(藤井大介構成、演出)を2月5、6の両日、ホテル阪急インターナショナ。ルで開催した。背中が大きく開いた真っ赤なドレスで登場した紅は「キラールージュ」を皮切りに「うたかたの恋」「ジャン・ルイ・ファージョン」「スカーレット・ピンパーネル」「アナザー・ワールド」「鎌足」そして「風と共に去りぬ」から「ナイト&ディ」などなど懐かしい宝塚の曲を次々に披露。コロナ禍で大半の公演が休演となった退団後の主演ミュージカル「エニシングゴーズ」からも一曲。天寿光希、紫月音寧、夢妃杏瑠と共演者も元星組メンバーで固めた豪華な顔あわせ。歯に衣を着せぬ本音トークを炸裂させながらサヨナラ公演「GOD of STARS」で縁ができたシャダイン作曲、自身が作詞したという新曲をよくとおる歌声で締めくくり、終始笑いの絶えない一時間半だった。
カーテンコールのあいさつで「宝塚の上下関係の厳しさは絶対なくしてはいけない。私も下級生のころ厳しく叱られたけれど、あとになってその意味がわかり、感謝しかありませんでした。私もみんなに厳しくしたけれど、いまはこんなに仲良く慕ってくれる、それが宝塚なんです」と、宝塚独特の上下関係の厳しさのすばらしさを強調していたのが印象的だった。
©宝塚歌劇支局プラス2月7日記 薮下哲司