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Channel: 薮下哲司の宝塚歌劇支局プラス
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彩風×夢白、雪組新トップコンビ披露「BONNY&CLYDE」開幕

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©️宝塚歌劇団



彩風×夢白、雪組新トップコンビ披露「BONNYCLYDE」開幕

 

雪組の新トップコンビ彩風咲奈が夢白あやのお披露目となったミュージカル「BONNYCLYDE」(大野拓史潤色、演出)が6日から名古屋御園座で開幕した。映画「俺たちに明日はない」や宝塚歌劇でも「凍てついた明日」の題材となった実在したギャングカップルを描いたブロードウェー・ミュージカルの宝塚版。雪組ニューカップルのこのうえな幸先のいいスタートになった。

 

「スカーレット・ピンパーネル」などですっかり宝塚ファンにもおなじみとなったフランク・ワイルドホーン作曲のこのバージョンは、クライドを田代万里生、ボニーを濱田めぐみというキャストですでに日本で一度上演されていて今回が二度目。今回、野々花ひまりが演じているクライドの兄嫁ブランチ役を元雪組娘役トップだった白羽ゆりが演じていたので覚えている方も多いだろう。

 

ストーリーは「俺たちに明日はない」や「凍てついた明日」と同じだが二人を取り巻く人物構成が微妙に違っているので、それぞれを見比べるのも面白いかも。なんといっても衝撃のラストシーンを冒頭でみせてしまい、ラストは暗示で終わるのがこのバージョンの最大の特徴。ミュージカル版だと静かに終わるところ、宝塚は華やかなフィナーレが付くので、悲劇性が弱まり、新コンビの好ましさもあいまって気持ちよく帰路に着ける作品となった

 

クライド役もボニー役も発端は少年、少女時代から始まり、それぞれ夢翔みわ、愛陽みちが演じ、西部の反逆児ビリー・ザ・キッド星加梨杏)映画女優クララ・ボウ(菜乃葉みと)にあこがれる二人を歌とダンスで表現、夢見る普通の子供だったことを強く印象付ける。大人になった二人が彩風と夢白にチェンジして登場、その出会いからラストまで、最初のこの場面がその後の伏線として効果的だった。

 

少年がそのまま大人になったようなクライドがまた彩風にうってつけで、悪事を悪事とも思わずどんどんのめりこんでいくさまが、少年のころの悲惨な体験に裏打ちされていて思わず応援したくなる。クライド独特の魅力を彩風が見事に表現していた。

 

ボニー役の夢白も登場シーンのあでやかさで一気に惹きつけ、前トップの朝月希和とは全く違った個性で存在感を示し、宝塚オリジナルではなく海外ミュージカルならではの彩風とほぼ互角の大役を堂々と演じ切った。これが初めてとは思えない息の合ったコンビぶりで、二人が並ぶと地味な衣装でも舞台が華やかになるのが最高だ。夢白が歌う「踊らないの?」はワイルドホーンならではの佳曲で、宝塚でも今後長く歌い続けていかれるだろう。

 

そんな新コンビを脇で支えたのがクライドの兄バック役を演じた和希そら。当初はクライドとともに強盗に参加していたが、自首して刑期を終えて更生、クライドとは別の道を歩むのだが。弟の危機を知って……。切ない兄弟愛を和希ならではの深い読みで演じて強い印象を残した。

 

ミュージカル版で白羽が演じたバックの妻ブランチの野々花も、平穏な日々を願うスクエアな女性を嫌味なくストレートに熱演した。

 

咲城けいが扮したボニーに熱く片思いするダラス郡の副保安官テッド役も実在の人物。このバージョンではかなり大きな役回りになっていて、その実直な雰囲気が咲城によく似合っていた。

 

牧師役の久城あすはじめベテランの活躍どころも多くあり、若手では聖海由侑、蒼波黎也、華世京がバロウギャングのメンバーとしてトリオで登場するがハリーに扮した華世の出番が多く際立っていた。

 

フィナーレは和希の主題歌披露から始まるが、彩風と夢白のデュエットダンスで和希が歌う「ブルースレクイエム」はなんと「凍てついた明日」の主題歌。大野氏が宝塚の先輩演出家で退団した荻田浩一氏にオマージュを捧げたというところだろうか。

 

©宝塚歌劇支局プラス28日記 薮下哲司


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