「蒼穹の昴」が作品賞など6部門で受賞!
渦中の原田諒氏が最優秀演出賞!宝塚グランプリ2022決定
毎日文化センター(大阪)宝塚歌劇講座の受講生のみなさんを中心にオフィスエトワールの会員、在阪、在京任意の宝塚歌劇担当記者や評論家などに広く投票を呼びかけて決定する恒例の「宝塚グランプリ」2022年の投票結果が決まりました。
以下がその結果です。
最優秀作品賞
★ミュージカル(大劇場)部門
雪組公演「蒼穹の昴」(脚本、演出原田諒)
★ミュージカル(大劇場以外)部門
宙組公演「カルトワイン」(作、演出栗田優香)
★レビュー部門
FULL SWING!(作。演出三木章雄)
★再演部門
グレート・ギャツビー(作、演出小池修一郎)
最優秀主演男役賞(大劇場)
月組・月城かなと(今夜、ロマンス劇場で、グレート・ギャツビー)
最優秀主演男役賞(大劇場以外)
花組・柚香光(TOPHAT)
最優秀主演娘役賞(大劇場)
宙組・潤花(HIGH&LOWほか)
最優秀主演娘役賞(大劇場以外)
花組・星風まどか(TOPHAT)
最優秀助演男役賞
雪組・朝美絢(蒼穹の昴ほか)
最優秀助演娘(女)役賞
花組・音くり寿(TOPHAT)
最優秀歌唱賞
星組・礼真琴(ディミトリほか)
最優秀ダンス賞
花組・柚香光(TOPHATほか)
最優秀新人賞
月組・彩海せら(グレート・ギャツビー新人公演)
演出賞
原田諒(蒼穹の昴)
主題歌賞
星組公演「Gran Cantante!」(同名主題歌、青木朝子)
振付賞
張春祥(「蒼穹の昴」京劇シーン)
衣装デザイン賞
蒼穹の昴(有村淳)
美術賞
蒼穹の昴(松井るみ)
特別賞
真風涼帆(5年7か月宙組トップとして貢献)
選考経過
作品賞は今年から大劇場作品、大劇場以外の作品、さらにレビュー作品を別枠にしてすべての上演作品の中から各部門2作品を選んでいただくという選考に変更、主演男役、娘役も大劇場と大劇場以外の主演者の中から各部門2人を選んでいただきました。
その結果、最優秀作品賞は浅田次郎原作の長編を見事に舞台化した雪組公演「蒼穹の昴」が、圧倒的な強さを見せて、助演男役賞、演出賞、振付賞、衣装デザイン賞、美術賞とあわせて6部門で栄冠を獲得しました。
作品賞の次点は月組公演「今夜、ロマンス劇場で」で、途中経過では「蒼穹の昴」を上回るなど大健闘。主演男役賞は主演の月城かなとが「グレート・ギャツビー」の好演とともに花組の柚香光、雪組の彩風咲奈の倍に近い得票を獲得しました。
主演娘役賞は宙組の潤花が「HIGH&LOW」の演技で受賞。「ディミトリ」の星組、舞空瞳が続きました。
大劇場以外の別箱公演では宙組公演「カルトワイン」と花組公演「冬霞の巴里」が最後までデッドヒート、3票差で「カルトワイン」が作品賞に輝きました。
レビュー部門はさらに混沌。星組公演「FULL SWING!」星組公演「Gran Cantante!」宙組公演「Capricciosa!心のままに」が三つ巴。さらに雪組の別箱公演「Odyssey」も猛追、最終的に「FULL SWING!」がわずか1票差で抜け出しました。
再演部門は宙組公演「Never Say Goodbye」と月組公演「グレート・ギャツビー」の小池修一郎作品同士の一騎打ちという感じでしたが花組公演「TOPHAT」の人気も根強く、一時はどうなるかと思われましたが、最終的に 「グレート・ギャツビー」に決まりました。
「TOPHAT」人気はそのまま大劇場公演以外の主演男役、娘役賞に引き継がれ柚香と星風が受賞、二人の息の合ったデュエットダンスは今も記憶に残ります。
最優秀ダンス賞も「TOPHAT」の超絶テクニックのダンス力で柚香が文句なしの受賞。
「TOPHAT」は助演娘役賞でも音くり寿が受賞。実力派の娘役の退団のはなむけとなりました。ちなみに次点は「蒼穹の昴」で西太后を大迫力で演じた一樹千尋でした。
大劇場の助演男役賞は「蒼穹の昴」で春児を好演、京劇シーンを鮮やかにこなした雪組の朝美絢が「今夜、ロマンス劇場で」「グレート・ギャツビー」の月組の鳳月杏をわずか1票差で破って栄冠。「蒼穹の昴」の京劇シーンは振付賞もあわせて獲得しました。
これまでずっと望海風斗が独占してきた最優秀歌唱賞は星組の礼真琴、正当に受け継がれたといっていいでしょう。「Never Say Goodbye」などの留依蒔世の健闘も記憶にとどめたいと思います。主題歌賞は久々に観劇後誰もが口ずさんだ星組のショー「Gran Cantante!」が「蒼穹の昴」の「昴」と「今夜、ロマンス劇場で」にわずか1票差で受賞となりました。
最優秀新人賞はコロナ禍で大劇場での新人公演が中止、東京でしかなかった「グレート・ギャツビー」新人公演の好演で彩海せらに。次点は「今夜、ロマンス劇場で」新人公演の月組・礼華はるでした。「蒼穹の昴」新人公演で好演した華世京がノミネートされていないことへの疑問がありましたが、華世は昨年「ほんものの魔法使」での衝撃的なデビューですでに新人賞を受賞しており対象外でした。
注目の演出賞は「蒼穹の昴」の原田諒氏が独走、圧倒的な票数で他を寄せ付けず受賞となりました。12月に入って団報で阪急電鉄に異動辞令が出たことで、ハラスメント疑惑が浮上、不安に感じていたのですが、東京公演千秋楽直後に週刊文春が報道、大スキャンダルに発展。本人はすでに退職したと歌劇団が正式に発表しましたが、上田久美子氏に続いて歌劇団は有能な作家を失うことになってしまいました。
とはいえ作品に罪はなく、出演者の好演に傷がつくということはなく、「蒼穹の昴」という作品の価値が損なわれることはありません。2022年宝塚グランプリの最優秀作品として永遠に記憶にとどめたいと思います。
©宝塚歌劇支局プラス12月28日記 薮下哲司