特別講座が終わったところでの記念撮影
左から薮下、草笛雅子氏、永岡俊哉氏
草笛雅子さんが独自のミュージカル唱法を熱弁
甲南女子大学「宝塚歌劇講座特別編」~音楽の視点から見る宝塚歌劇~開催
演出家の三木章雄さんと元月組の出雲綾さんを招いて「宝塚レビュー」を第一回のテーマに開いた甲南女子大学の「宝塚歌劇講座特別編」。元雪組トップスター、一路真輝さんをゲストにミュージカル「エリザベート」について、そして元星組トップスター、安蘭けいさんをゲストに「宝塚歌劇と漫画」をテーマに開催してきましたが、その後、コロナ禍で休止を余儀なくされ。今年、ようやく3年ぶりに開催にこぎつけることができました。第4回となった今年は、9月10日、大学に元雪組娘役の草笛雅子さんを招いて「音楽の視点から見た宝塚歌劇」をテーマにオンライン講座という形で開催、全国各地から約100人の受講者がありました。
講座は甲南女子大学「宝塚歌劇講座」担当の永岡俊哉講師の司会進行で始まり、まず甲南女子大学宝塚歌劇講座の前任で映画、演劇評論家の薮下哲司講師による基調講演「音楽の視点からみた宝塚歌劇」からスタート。宝塚歌劇誕生から振り返り、小林一三翁が目指した高邁な精神が現在まで続いている原因であることを明らかにしたうえで、女性だけの劇団であることで必然的に男役と娘役の発声法の違いが生まれていったことにふれ、それが「エリザベート」以後のミュージカル劇団としての宝塚歌劇でどう変化していくべきか問題点と課題を提起する内容。
ゲストの草笛さんは宝塚音楽学校を首席で卒業、宝塚歌劇団在籍中は、ショーのエトワールはじめさまざまな歌の場面で重用された雪組のプリマドンナだったが、退団後に請われて入団した劇団四季で、宝塚的唱法を全否定されてから発声を一からやり直したという経験の持ち主。その後、研修で訪れたブロードウェーで「ミックスボイス」を会得、さらに香港で京劇の発声法を学んで、独自のボイストレーニング法を開発した。
「寺田瀧雄先生のように男役トップスターの声域を熟知して、そのスターの一番声の出やすい音程で優れたメロディーを書ける座付き作曲家が、主題歌を作曲していた時は良か
ったけれど、「エリザベート」などのミュージカルはオリジナルでは実際の男性が歌っていたパートを女性である男役が歌うことになるので、娘役は高く、男役は無理に低い声を出すことになります。その時の声の出し方が問題です。ミックスボイスを会得すれば男役娘役の区別なく低い声も高い声も自由にだせるので、これからの宝塚歌劇には必要不可欠なボイストレーニングだと思う」と熱弁。実際、すでに退団して女優として活躍しているOGの一人もミックスボイスを会得したことで男役の発声からから女役の発声にすんなりと移行できたという。ミュージカルの発声に関する貴重なお話をじっくりと聞けて非常に有意義な講座になりました。
終了後の質疑応答では52年前に舞台袖で歌っていたという男性から「いまでも男性がカゲソロをしているのか」と質問があるなど、意外なところで意外な人が受講されていたのだと感じ入った次第。ちなみに男性コーラスのカゲソロは男性の声がどうしても必要な場面に時々使われていて、1974年の「ベルサイユのばら」初演の前ごろまではあったと記憶しているが以降は完全になくなった。
©宝塚歌劇支局プラス9月10日 薮下哲司