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Channel: 薮下哲司の宝塚歌劇支局プラス
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真風涼帆 恋するコブラをかっこよく熱演、宙組公演「HIGH&LOW」開幕

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©️宝塚歌劇団


真風涼帆 恋するコブラをかっこよく熱演、宙組公演「HIGH&LOW」開幕

近未来の荒廃した街を舞台に男たちの縄張り争いを描いたバトルアクションシリーズ「HIGH&LOW」が、真風涼帆を中心とした宙組によって宝塚の舞台に登場、「THE PREQUEL(前日譚)」(野口幸作脚本、演出)として27日、宝塚大劇場で初日の幕を開けた。男たちがただただ喧嘩を繰り返すだけのアクションシリーズをどう宝塚的に落とし込むのか興味津々の舞台だったが、喧嘩を歌とダンスに代えてテンポよく展開、知られざるコブラの純愛ストーリーを絡ませて、男役のかっこよさを際立たせ、最後まで飽かせなかった。

2015年に日テレ系の連続ドラマとして初放送されるや人気沸騰、2020年までにシリーズ5作が放送され、2016年からは映画シリーズも公開、音楽、コミック、ゲーム、SNS、テーマパークなどあらゆるメディアを巻き込んだ人気シリーズになっているが、男たちがただただ喧嘩を繰り返すだけのストーリー。あまりにも宝塚の世界観とはかけ離れたシリーズなので、どういう形で宝塚に落としこむのか興味深かったのだが、それらの作品群の前日譚(THE PREQUEL)を新たに構想、抗争の影に咲いた純愛をテーマにしたのが成功の一因。宝塚的「HIGH&LOW」の世界が現出した。

近未来のとある大都会。かつてムゲンという伝説のチームがこの一帯を支配していた。しかしある事件をきっかけに突如ムゲンは解散。その数ヶ月後、無数のチームが群雄割拠していた。そんな中、ROCKY(芹香斗亜)率いる「White Rascals」が開いた仮面舞踏会で「山王連合会」のリーダー、コブラ(真風)は幼馴染のカナ(潤花)と再会する。久々の再会に胸をときめかせたコブラだったがカナには誰にも言えない秘密があった……。
真風コブラを中心とする「山王連合会」、芹香扮するROCKY率いる「White Rascals」桜木みなと扮するスモーキー率いる「RUDE BOYS」鷹翔千空扮する村山良樹率いる「鬼邪(おや)高校」そして瑠風輝扮する日向紀久率いる「達磨一家」に対して、それらを一気にぶっ潰そうと留依蒔世を頭とする苦邪組(クジャク)が暗躍、五つのチームVs苦邪組という対決の構図。「SWORD」結成前夜、守るべき女性、守るべき街との間で葛藤する男たちの物語だ。
宙組の男役が5つのチームに分かれてかっこよく登場するプロローグは、チームごとに大きな拍手がわき、なんだか昭和の宝塚大劇場にいるような錯覚に陥った。芹香チームが白づくめでカッコいいことこのうえなく、他のチームの衣装が薄汚く見えたのが難点だが、それぞれ個性的な役割を担い、チームごとにスピンオフして新たなストーリーが作れそうだ。
ノーブルな雰囲気が似合う真風だが、乱暴なセリフも堂に入り、喧嘩集団のリーダー、コブラにふさわしい貫禄。一方、幼馴染のカナに振り回される純情ぶりもほほえましく、コブラの知られざる一面を巧みに表現した。潤花も秘密を抱えながらも天真爛漫な明るさを最後まで押し通したカナをけなげに好演。男役中心の殺伐とした舞台の清涼剤的役割を果たした。ハイローファンに人気の火が付きそうだ。
ROCKYの芹香は金髪、サングラス、純白のタキシード。これで目立たないわけはなく、真風コブラと男同志の友情でタッグを組む場面などまさに男役の美学のお手本そのもの。スモーキーの桜木も歌の表現力は五つのチームの中でもピカ一、こういうところで実力を発揮できるのがさすがだった。
この公演で退団する留依のリン、圧倒的な悪の存在感。有終の美を飾った。ショーのフィナーレではエトワールで登場、見事な美声を聞かせてくれた。もっともっと宝塚での男役を見たかったひとりだ。退団が惜しまれる。
娘役は苺美瑠狂(いちごみるく)の総長純子の天彩峰里、クジャクのKIDAに扮した春乃さくらが目だったぐらいだが、いずれも宝塚の娘役とは思えないパワフルさ。
巧みに宝塚的世界に落とし込んではいるものの異色の舞台には違いなく、崇高なテーマもなんだかこじつけのようで現実感がなく、男役のかっこよさだけが際立った感じの舞台だった。

ファッシーノ・モストラーレというサブタイトルがついた「Capricciosa!!」~心のままに~(藤井大介作、演出)は、自由気ままなカプリチョーザこと真風が、ナポリ、ベネチア、フィレンツェ、ミラノ。ローマなどイタリア各地を駆け巡るという趣向のショー。聞き覚えのあるカンツオーネに新たな歌詞を付けて歌い継ぎながら展開していく。
暗転からパッと照明がつくと、銀橋に真紅の衣装の男女がずらり並んだ豪華なプロローグから華やかそのもの。真風、潤花の息の合ったコンビぶりが存分に楽しめるほか芹香、桜木の見せ場、聴かせどころもふんだんにあり、天彩、春乃のソロ、ラインダンスのリーダーを務めた優希しおんの見事なダンスと実力派の起用も的を得ていた。千秋楽まで完走できることを祈りたい。

©宝塚歌劇支局プラス8月27日記 薮下哲司
 


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