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Channel: 薮下哲司の宝塚歌劇支局プラス
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侑輝大弥、7年目で念願の主演、花組「巡礼の年」新人公演

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新人公演プログラムより抜粋転載
©️宝塚歌劇団

侑輝大弥、7年目で念願の主演、花組「巡礼の年」新人公演

ピアノの魔術師といわれたピアニスト、フランツ・リストの半生を描いたミュージカル「巡礼の年」~リスト・フェレンツ、魂の彷徨~(生田大和作、演出)の新人公演(中村真央担当)が21日、宝塚大劇場で上演され、入団7年目にして初の主役をつかんだ実力派のホープ、侑輝大弥(ゆき・だいや)が、本公演で柚香光が演じているリスト役を熱演、堂々と演じ切った。

若いころにアイドル的にもてはやされ、生きる意味を失いかけていたリストが伯爵夫人との恋で目覚め、自分なりの生きがいを追い求めていく物語。実人生とはかなり違って生田的脚色が加えられていて、初見時は柚香光、星風まどから出演者の熱演は別として、内容的にはあまり印象が良くなかったのだが、リストの「魂の彷徨」というフィクションとして見直すと、後半の展開にやや不満が残るもののよくまとまった話ではあった。中村真央(中村暁氏の愛娘)は新人公演二度目の担当だが作品をよく理解した仕上がりを見せていた。

リストに扮した侑輝は、幕開けのジョルジュ・サンド(太凰旬)との濃厚なからみから退廃的なムードを巧みに漂わせ、柚香と同じヘアスタイルも思いのほかよく似合っていて絶頂期のリストの雰囲気をよく体現。ピアノの弾き語りも効果的だった。柚香からは「もっと自然に」とのアドバイスを受けたというが、柚香と違ってやや演技が硬質なのでそのあたりの指摘があったようだ。全体的にもうすこししなやかに演じることができれば理想的だが、侑輝のこの演技でも十分説得力があった。「銀ちゃんの恋」で出世役のジミーを演じたことで注目したのだが、芝居、歌、ダンスといずれも芯のあるしっかりした力があるので、これからの活躍に期待したい。

マリー・ダグー伯爵夫人(星風)の星空美咲(研4)は、新人公演初ヒロインというが、すでに何度も外箱公演でヒロインを演じ、なんといっても「銀ちゃんの恋」の小夏の経験が生きていて、初ヒロインと思えない立派さ。上級生だが初主演の侑輝を包み込むようにサポートしたあたりは見ていてほれぼれするくらいの安定感があった。ソロもじっくりと聞かせた。

そして今回の新人公演最大の収穫といっていいのが水美舞斗演じているショパンに扮した鏡星珠(かがみ・せいじゅ)。106期というから研3だが、そうとは思えない落ち着きと一瞬、凪七瑠海かと思わせるすっきりした容姿。センターに立つだけで周囲がパッと明るくなるスターオーラは持って生まれた資質だろうか。盟友リストを思う演技もうわべだけではなく奥が深く思わず引き込まれた。後半の彼女のソロで主役二人が踊る幻想シーンも見事だった。今後の活躍を大いに期待したい。

永久輝せあが演じたサンド役の太凰旬、19世紀中半のパリ。退廃的なムード漂う中での男装の麗人、本役の永久輝をお手本にやや高いセリフで闊達に演じた。黒髪の長いヘアスタイルで見るとかつての実力派、香寿たつきがそこに現われたような錯覚にとらわれた。それだけ場になじんでいたということかも。

あと印象に残ったところではまず編集者エミール(聖乃あすか)に扮した美空真瑠(研4)、そしてダグー伯爵(飛龍つかさ)の希波らいと(研6)の二人。美空は本公演では柚香の少年時代を演じていて注目したのだが、アイドル的な容貌に似合わずしっかりとした演技で場を締めたのが印象的。また希波は、ヒロインの夫でこの作品では敵役でもあるのだが、美貌をひげで隠し、新人公演主演経験を生かした堂々たる押し出しで舞台を支配、新境地を見せてくれた。

タールベルク(帆純まひろ)の海叶あさひ(研6)ロッシーニ(一之瀬航季)の夏希真斗(研4)の二人もそれぞれ適役好演。音くり寿が演じたラプルュナレド伯爵夫人の美羽愛は幾分おとなしめに演じたのも好感が持てた。

新人公演としては全体的にバランスよくまとまっていて非常に好感度の高い舞台だった。

©宝塚歌劇支局プラス 6月22日記 薮下哲司
 


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