©️宝塚歌劇団
宙組トップ、真風涼帆リサイタル「FLY WITH ME(フライウイズミー)」ライブ配信
宙組のトップスター、真風涼帆のリサイタル「FLY WITH ME」(Produced by TEAM GENESIS from LDH JAPAN、野口幸作構成、演出)が10日から東京ガーデンシアターで開幕、11日の公演がライブ配信された。
東京ベイエリアに、最大8000人収容の国内最大の劇場型ホールとして誕生した東京ガーデンシアターでのコンサート形式のリサイタル。EXILE、三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEなど数々のアーティストを生み出しているLDH JAPANのライブの企画・演出を手掛けるクリエイティブチーム「TEAM GENESIS」のプロデュースによるステージで、同チームが協力する8月の宙組公演「HIGH AND LAW」の予告編的な意味合いを含めながら会場全体を空港、宇宙にみたてて大階段を効果的に使い16人という少人数ながら宝塚レビューの真髄を表現、見せ場連続のリサイタルだった。
舞台の巨大スクリーンに「MAKAZE AIRLINE」と書かれた飛行機の機体。芹香斗亜はじめクルーが乗り込むところからスタート。機長はもちろん真風。渋い色の金髪のヘアに凛々しい制服姿がことのほかよく似合う。白濱亜嵐作曲による主題歌に乗せて真風号いざフライト開始。巨大スクリーンの映像やコンサート仕様の照明など、いつもの宝塚とは一味違ったポップ色の強いステージだが。中身はまぎれもなく宝塚、そんな異空間に真風以下、タカラジェンヌが生き生きと魅力を爆発させた。
落ち着いたしっとりしたクラシカルなムードの似合う真風に、コンサート風のリサイタルは合わないのではと思っていたのだが。LDH的なものを宝塚モードに変えてしまった野口マジックの力で、面白い化学反応が生まれ、新たな宝塚レビューの形が出来上がったようだ。
次回公演「HIGH&LAW」の主題歌の披露や配役紹介などの予告編的な場面など、このコンサートが大劇場公演の前夜祭を兼ねていることを示唆しながら、真風の宝塚生活を振り返るコント風の場面も盛り込み、真風の退団の時期が近いこともうかがわせるなど、ファンとしては悲喜こもごもの構成。
そんななかで二番手の芹香のふり幅の広い柔軟な活躍ぶりが際立っていて、とんがったヘアスタイルや丸メガネなど奇抜なおしゃれ感覚が、派手な格好をしながらもおとなしめの真風と対照的で潤花もまじえたトークの場面も絶好調だった。潤花も役としての作りこんだものではなく、素の美しさが出たのもコンサートならではで、彼女本来の魅力が堪能できた。
真風は沢田研二のヒット曲「勝手にしやがれ」を彼女ならではのキザに歌いこなすなど、新境地も発揮、フィナーレには三代目J SOUL BROTHERSのヒット曲「R、Y、U、S、E、I」をボレロアレンジ、羽山紀代美振付による燕尾服のダンスで披露するなどLDH的なものの宝塚化がさえわたったコンサートだった。
ほかに紫藤りゅう、鷹翔千空、亜音有星の3人に活躍の場があり、天彩峰里のソロも聴きごたえがった。カーテンコールで真風が歌った「いまを生きる」(野口幸作作詞、青木朝子作曲)という新曲がまるで退団を意識したような歌詞だったのが気になるところではあったが、宝塚の新たなスタイルのコンサートとして記憶したい。
©宝塚歌劇支局プラス6月12日記 薮下哲司