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Channel: 薮下哲司の宝塚歌劇支局プラス
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新トップ高世麻央、松竹座で好発進!OSK「春のおどり」始まる

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OSK春のおどり





OSK日本歌劇団の新旧トップスターの公演が、ほぼ同時に大阪のキタとミナミで上演された。新トップ、高世麻央の披露公演「レビュー春のおどり」(6月1日~7日、大阪松竹座)と元トップ、桜花昇ぼる主演の「太鼓×歌劇 大阪城パラディオン(守護神)~将星☆真田幸村~」(5月30、31日、サンケイホールブリーゼ)がそれ。そのいずれもが宝塚がらみでしかも力作だった。今回はこの模様を報告しよう。

まず新トップ、高世の「―春のおどり」。2004年に旧OSKが解散、新生OSKの活動拠点となった大阪松竹座の恒例となった演目で、12回目の今回は大貴誠、桜花に続く新トップ高世のお披露目公演。日本物の「浪花今昔門出賑」は、宝塚100周年記念公演「宝塚をどり」の振付でもおなじみの山村友五郎構成、演出、振付。洋物の「Stormy Weather」は、2008年の宝塚退団後7年ぶりの本格的レビューとなる荻田浩一の作、演出。これはOSKファンはもちろん、宝塚ファンにとっても必見のステージとなった。

日本物の幕開けは「春のおどりはよーいやさー」から始まる定番のチョンパーから。
高世を入れて総勢39人、宝塚一組の半分のメンバーだが、桜満開の華やかな舞台はいつみても心が浮き立つ。まして新トップ披露である。センターの高世が好きとおった声で歌う主題歌に合わせての総踊りに客席からは思わず「タカセ!」のかけ声が。

今回の出し物は、松竹開業120年と道頓堀開削400年も合わせて記念しており、プロローグが終わると安井道頓に扮した特別専科の緋波亜紀が道頓堀の歴史をひとくさり。高世を中心に桐生麻耶と真麻里都らによる殺陣の場面へといざなう。獅子舞が大暴れする明るく派手な川祭りの場面に続いて、かつて商都大阪で栄えたミナミを代表するお茶屋・大和屋に伝わる「南地大和屋へらへら踊り」の再現が見もの。娘役トップの牧名ことりを中心にした9人の娘役が伝統のお座敷芸を熱演した。OSKならではの趣向を取り入れた日本物で、宝塚の日本物とは一味違った雰囲気がいい。

続く洋物は、久々に荻田Worldが堪能できる心地よい快適なレビュー。6月なのに「春のおどり」とは何事、とばかり「Stormy Weather」(荒れ模様)というタイトルにしたという荻田ならではのショーで、オープニングの「レイニーデイ」はブルーの傘に白の衣装の娘役が花道に勢ぞろい、かつての荻田作の雪組公演「パッサージュ」の幕開きを思い出させる雰囲気の中、舞台中央からベージュのトレンチコート姿の高世がせりあがってくる。バックの装置があまりにも安っぽいのが難だが、それは目をつぶってもあまりある粋さに息をのむ。

そして、この場面から野性的な「ハリケーン“カリブ”」に移っていく展開がお見事。これぞレビューのお手本。トレンチコートの高世が、金ぴかの派手な衣装の雷神(シャンゴ)となって再び花道からせりあがり激しいダンスのあと、ダイナミックにプロローグが締めくくられる。セクシーな極楽鳥はOSKきっての期待の二枚目男役スター、悠浦あやとと来た。悠浦はこのあとも、高世に続く、これからのOSKを担うスターとしての劇団の方針に応じて、ここぞという場面での大抜擢がありながら、ほかのスターの邪魔にはなっていないという見事な起用法で悠浦を全面的に押し出し、彼女もそれに良く応えたさわやかな好演ぶり。

トップお披露目の高世は「タイフーン上海」では楊貴妃に扮してあでやかな踊りを披露するなど美しい女役も披露。歌、ダンスとも実力派だけにセンターに立ってさらなる大きな魅力を発散した。前トップの桜花のような春爛漫の明るさではないどことなく影のあるクールな二枚目ぶりが、日本ものや現代ものの洋物にぴったりで今後の活躍が楽しみだ。

ベテラン桐生のサポート、牧名の歌唱力、真麻のダンスとスターにはそれぞれの長所を生かし、若手にも見せ場をきちんと作ったところはさすがで、装置がシンプルな分、回り舞台やせり、花道を有効に使い、約一時間があっというまだった。退団後、宝塚OGのレビューなどでも手腕を発揮している荻田だが、こうやって一本の本格的なレビューは本当に久しぶり。男女混合の舞台より、女性だけのレビューづくりが本来の荻田流だと再確認した次第。

さて、元トップの桜花の舞台「大阪城パラディオン」は、OSKでも「闇の貴公子」など数々の作品を手掛けた北林佐和子の作、演出。これは元OSKだけでなく元宝塚も出演、OSKと宝塚さらに太鼓集団「打打打団 天鼓」のメンバーも出演するというユニークな舞台。

主演の真田幸村の桜花に対して、淀君がこだま愛、後藤又兵衛に鳴海じゅん、木村重成に麻園みき、塙団右衛門に未央一(好演)という宝塚勢が出演。長宗我部盛親に元OSKトップの洋あおいといった顔合わせ。これが実力派ぞろいで見ごたえのある舞台だった。ストーリー自体はこれまで何度も語られた真田幸村ものとの差はなかったが、打打打団の歯切れのいい太鼓の音色をバックにテンポよく語られると大筋はわかっていてもひきつけられるのと、出演者のそれぞれの芝居の巧さが2時間をあきさせなかった。女性陣のなかに数人男性が混じって激しい殺陣を演じたのも効果的。男役と実際の男性の配分のバランスが見事だった。今後の新しいパフォーマンスの形態になるかもしれないと思わせられた。次回作にも期待したい。

©宝塚歌劇支局プラス 6月1日記 薮下哲司




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