彩凪翔、退団後初ステージ!タカラヅカ・ライブ・ネクスト旗揚げ「アプローズ夢十夜」バウホール公演開幕
退団後のタカラジェンヌの芸能活動を全面的に支援しようと宝塚歌劇団の親会社、阪急阪神ホールディングスが新たに立ちあげた「タカラヅカ・ライブ・ネクスト(TLN)」の旗揚げ公演「アプローズ夢十夜」(三木章雄作、演出)が東京公演に続いて23日、宝塚バウホールで開幕した。
今春、退団したばかりの元雪組の人気スター、彩凪翔の退団後本格的初舞台で、TLNに籍を置く音花ゆり(元星組)、貴千碧(元月組)、透水さらさ(元雪組)、風馬翔(元宙組)、星乃あんり(元雪組)の5人にゲスト出演の笙乃千桜(元雪組)、星吹彩翔(元宙組)を加え、スペシャルゲストとして東京に彩輝なお(元月組トップスター)、宝塚に水夏希(元雪組トップスター)を招いて繰り広げる各9人のこぢんまりしたステージ。
舞台は宮沢賢治作の「セロ弾きのゴーシュ」を下敷きにしたストーリー仕立てのショーで、休憩なしの約1時間40分。「長い旅の末、古いオペラハウスにたどりついたスターになる夢を抱く若者、翔と彼を迎える200年間愛する舞台に棲みつき、見果てぬ夢を見続ける「夢見る者たち」が出会い、互いに競演、稽古し切磋琢磨して信頼関係を築くまでの十夜のエピソードをショーアップした」(三木章雄氏)もので、さまざまなキャラクターに扮したネクストメンバーがそれぞれの持ち味を披露して彩凪を新しい夢に誘っていくという巧みな構成。
舞台は19世紀初頭に開場した古風なオペラハウス「アプローズ座」。終演後の何もない舞台に純白のフェアリーのようなスタイルで現れた翔(彩凪)が、次なる新たな夢を求めて歌いだすというところからスタート。この純白のコート、東京公演に出演した彩輝がサヨナラショーで着た衣装。彩凪が彩輝に頼んで貸してもらったのだとか。
宝塚的な豪華な衣装は彩凪とヒロイン格の音花のドレス姿だけで、ほかのメンバーはすっぴんに近いメーク、衣装もシンプルなもので統一、様々なキャラクターに扮して彩凪にからむ。各人が何に扮しているのかあまりよくわからなかったが、音花、透水は歌、貴千、笙乃、星乃はダンス、風間は芝居、星吹は歌に芝居にとオールマイティーな活躍ぶり。貴千の長いダンスソロ、透水が「ジュピター」を現役時代そのままの歌声で熱唱したのが印象的。いずれも在団時から実力派として活躍したメンバー、多分にショーケース的な意味合いがあるが各人がそれにこたえ見ごたえ聴きごたえがあった。
一方、彩凪扮する夢に生きる翔の姿は、退団間もない彩凪の姿に重なり合い、現役オーラがまだ身体中に漂う彩凪の存在感とバウホールという場所が独特の空間を生み出すことに成功。退団後初舞台がこんなステージから再出発できる彩凪はなんと幸せものだと思った。これから外の世界の荒波に送り出す前の宝塚からのエールとも感じられる幸福感が漂う舞台だった。
一方、後半に登場した水夏希は、退団後10年たって初めての里帰りステージ。宝塚時代に培った男役オーラとその後の女優としての活動で身に着いた新たな魅力が相乗効果、里帰りならではのリラックス感もあいまって、一時代を築いたトップらしいさすがのステージを展開した。
真っ赤なパンツスーツで登場した水はいきなり男役オーラで圧倒、間奏曲の間に純白のドレス姿に早変わり「エビータ」の主題歌「アルゼンチンよ泣かないで」をしっとりと歌いこみ、男役から女優への鮮やかな変身ぶりで一気に水の世界へと誘った。続いてミュージカル「グレーテストショーマン」から「ネバーイナフ」を熱唱。懐かしい「joyful」の主題歌のあと彩凪とのトークでは雪組の下級生だった彩凪のエピソードを披露するなど楽しい話題が尽きず、客席は暖かい笑いに包まれた。そして彩凪と「Dreamgirl」をデュエット、盛り上がったところで「フォーエバータカラヅカ」を全員で大合唱してショーのステージ締めくくった。25日の公演はライブ配信も決まった。
退団後のOGの活動を支援する目的で生まれたTLN、俗にいう「夢組」の誕生で、純矢ちとせ(元宙組)や澄輝さやと(元宙組)ら今回出演しなかったメンバーも所属している。今回メーンで出演した彩凪はメンバーではないが、2025年の大阪万博に向けてさらなる人材の確保を図り、活動も拡大していきたいとしているので、今後の動向を注目したい。
©宝塚歌劇支局プラス9月23日記 薮下哲司