©️宝塚歌劇団
柚香光、星風まどか、花組新コンビ誕生!「哀しみのコルドバ」全国ツアー開幕
柚香光と華優希退団を受けて専科から花組に編入した星風まどかの新トップコンビによる全国ツアー公演、ミュージカル・ロマン「哀しみのコルドバ」(柴田侑宏作、樫畑亜依子演出)パッショネイト・ファンタジー「Cool Beast!!」(藤井大介作、演出)が25日、梅田芸術劇場メインホールから始まった。マタドール役がことのほか似合う柚香と大人の雰囲気漂う星風の堂々たるたたずまいが、5度目の上演となった「哀しみのコルドバ」が、柴田氏がこの二人のために書き下ろしたような錯覚を覚えるほど鮮やかに甦った。
「哀しみ―」は1985年、先ごろ亡くなった峰さを理さんがトップ時代の星組で初演されたスパニッシュミュージカル。人気絶頂の闘牛士(マタドール)エリオが、初恋の女性で、今は実業家ロメロの愛人となっているエバと10年ぶりに再会、再び恋の炎が燃え上がるという柴田氏作品の王道ストーリーライン。これに寺田瀧雄氏の流麗な主題歌と情熱的なスパニッシュを絡めた舞台は男役を引き立てるには最たるもので、まさに宝塚でしか見られない世界だが、柚香、星風の新コンビがこの世界にぴったりはまった。
闘牛士スタイルの柚香がスポットに浮き上がるオープニングから、その立ち姿のシルエットの美しさにためいきが漏れる。赤いマントを翻して動き始めるとどこを切り取っても絵になる。全国ツアーのシンプルな装置ではもったいないほどのオーラが輝いた。スペイン中の人気を集めるカリスマ的闘牛士という設定を納得させるだけの魅力があった。
そんな柚香ふんするエリオの初恋の女性エバに扮した星風は、社交界を取りしきる上流社会の未亡人という役柄を見事に体現していて、その堂々たる風情は、久々に再会したエリオが驚くのもむべなるかなというほどだった。華とはまた違い、柚香と互角に対峙できる相手役で、星風の存在が柚香をさらに底上げする力さえ感じさせた。いい相手役に恵まれたと思う。これからの作品が楽しみだ。
エバのパトロン役のロメロが永久輝せあ。若い人気闘牛士ビセントに聖乃あすか。エリオのフィアンセ、アンフェリータに音くり寿。ロメロの甥でひそかにアンフェリータに思いを寄せるフェリーペに優波慧というところが物語に大きく絡む主要登場人物。
永久輝のロメロはもともとはベテラン男役、新城まゆみが演じた役で、再演時から二番手男役の真矢みきになった役で、大人の雰囲気が要求される難役。これを永久輝が、ひげを蓄えて風格さえ感じさせる落ち着きで演じぬき、その存在感の確かさに驚かされた。一途な愛を貫くビセントを演じた聖乃もそのさわやかさに芯が通って成長を感じさせた。優波が演じたフェリーペは結構おいしい役。後半の見せ場をしっかり印象付けた。「銀ちゃんの恋」にまわった水美舞斗が不在なのだが、それを感じさせない永久輝、聖乃らの成長が頼もしかった。
長いソロ場面があるアンフェリータの音は、彼女ならでは歌唱力を存分に発揮、切ない女ごころを歌に託して絶品だった。歌といえば専科の美穂圭子も忘れてはいけない。占い師マルーカを存在感たっぷりに演じて作品に深みを出した。
「Cool‐」は、つい先日公演を終えたばかりの新作だが、星風のための新たな場面を加え、水美のところの役替わりも含めて全国ツアー用にリニューアルしたショー。S6のアフリカの場面、ラビリントス迷宮のあとのS7結婚式の場面が星風のソロの場面に変わり、凪七瑠海のところに高翔みず希、瀬戸かずやのところに永久輝、水美のところに聖乃、永久輝と聖乃のところに優波と一之瀬航季が役替わりで入った。ということで、柚香が女役でセクシーに踊るS15のベラクトルムの場面は永久輝が相手を務め、妖しいというよりはさらっとしたとびきり美しい場面に生まれ変わった。
水美のところに入った聖乃のダンス力もみものだが、歌では美穂圭子、羽立光来、和海しょうそして音といった実力派が聞かせ、ダンスと歌のバランスがよくとれたショーにもなっていた。
柚香と星風はフィナーレのデュエットダンスのキレのいいリフトひとつで呼吸の良さが伝わった。初日あいさつでも柚香はしきりに「花組に来てくれた星風をよろしく」と紹介、「全国をまわりながら親交を深めたい」と話すなど、相性の良さを強調していたのが印象的だった。
©宝塚歌劇支局プラス8月25日記 薮下哲司
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