真彩希帆、退団後初ディナーショー「espressivo」で美声披露
4月に退団した元雪組娘役トップ、真彩希帆が、23、24の両日、宝塚ホテルで退団後初ステージとなるディナーショー「espressivo」(ステージング鶴美舞夕)を開いた。在団最後のミュージックサロンがコロナ禍で無観客、ライブ配信のみの開催となったため、ホテル側が真彩に退団後の最初の仕事に再チャレンジの機会を提供、実現したものだ。東京オリンピック開会式当日にもかかわらず、熱心なファンで満員の盛況だった
サヨナラショーやミュージックサロンで歌わなかった曲も含めて、タイトルの「espressivo」(表情豊かに)の意味を込めて、宝塚やミュージカルはじめ、これからの真彩の様々なジャンルでの活躍を予感させる素晴らしいステージで、真彩の美声に酔いしれた1時間半だった。
鮮やかなブルーのドレスで登場した真彩。最初の曲は「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」の冒頭で歌った「地上の天国」から。美しい歌声で懐かしい舞台が一気に甦る。「久しぶりのドレス」と笑いながら最初のMCも余裕たっぷり。
続いて「Super Voyager」、「ファントム」から「パリのメロディ」、「Music Revolution」、「ひかりふる路」から「革命の犠牲者」、「凱旋門」から「雨の凱旋門」と懐かしい曲を立て続けにメドレーで歌い継ぎ、客席をすっかり真彩の世界に引きずり込んだ。
ここで音楽監督の𠮷田優子さんのアイデアでちょっと変わった趣向。「皇帝と魔女」の主題歌「愛の歌」を歌う真彩の初々しい歌声が。なんと音楽学校文化祭で真彩が歌った録音テープの再現。途中から真彩が生声でこれにかぶせ、見事に歌い継いだ。「あれからずいぶん歌を勉強したことが自分でもよくわかります」と述懐。そして音楽学校での娘役の必修歌だという「ME&MY GIRL」から「一度ハートを失ったら」をしっとりと。
真彩ファンならこれで十分と思う至福の選択。しかしショーはまだまだ続きDisney Medleyに。「シンデレラ」「リトル・マーメイド」「アナスタシア」を立て続けに披露。どれも真彩が実際に舞台に立っているところを見たくなるような素晴らしい歌声だった。
さらに真彩のファンへのプレゼントとして「レ・ミゼラブル」から「ON MY OWN」、「ミスサイゴン」から「命をあげよう」、「エリザベート」から「私だけに」の3曲の中から一番希望の多い曲を即興で歌うというビッグなサービスコーナーも。3曲とも聞きたいのが人情だが、どの曲になったかは会場にいた人だけが知るシークレット。どれも難曲大曲、真彩ならではのコーナーだった。
純白のドレスに着替えたあとは極めつけ「ファントム」から「わたしの真の愛」。客席もペンライトの洪水となり望海風斗との素晴らしいコンビによる舞台がまざまざと甦ったところでエンディングとなった。鳴りやまない拍手に真彩がアンコールに選んだのはミュージカル「アリージャンス忠誠」で濱田めぐみが歌った「おひさま、たいせつなあなた」。コロナ禍で自粛生活をしていた時に、毎日歌っていた曲だそうで、「つらい毎日だけれど希望を捨てずに生きていこう」というテーマがいまにぴったりの曲だった。というわけでいつまでも聴いていたい近来まれに見る素晴らしいパフォーマンスだった。
真彩は、退団後初舞台として10月にミュージカル「ドン・ジュアン」(生田大和演出)への出演が決まっているが、これからの活躍がますます楽しみになってきた。
©宝塚歌劇支局プラス7月23日記 薮下哲司