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Channel: 薮下哲司の宝塚歌劇支局プラス
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宙組新トップコンビ、真風涼帆と潤花の大劇場お披露目公演が開幕!

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©️宝塚歌劇団

 宙組新トップコンビ、真風涼帆と潤花の大劇場お披露目公演、Musical「シャーロック・ホームズThe Game Is Afoot!~サー・コナン・ドイルの著したキャラクターに拠る~(生田大和作、演出)とタカラヅカ・スぺクタキュラー「Delicieux!(デリシュー)‐甘美なる巴里‐(野口幸作作、演出)が26日、宝塚大劇場で開幕した。二人の若手実力派の演出家がロンドンとパリを舞台に、新トップコンビのために腕によりをかけた新作二本立てだ。

「シャーロック・ホームズ」は作者の生田氏にとって大劇場作品としては「シルクロード」に続く今年二本目だが、ミュージカルとしては「鎌足」以来、大劇場作品としては「CASANOVA」以来2年ぶりの新作。本人がコアなシャーロキアンで真風のホームズを見てみたかったという、ずいぶん個人的な発想から実現した企画のようだが、真風の持つミステリアスなムードとは一見相反するようなホームズの人間的なキャラクターが、生田マジックによって相乗効果を生み出し、これまでにない真風のコミカルな一面が出て新しい魅力が横溢した。お話そのものはコナン・ドイルのいくつかの短編からインスパイアした生田氏のオリジナル。切り裂きジャック事件に端を発した謎解きが宿敵モリアーティ(芹香斗亜)との対決に発展していく。肝心の謎解きがいまいちすっきりせずやや生煮え感があるものの、シャーロキアンにはこたえられない細かいこだわりが随所にあり、ミュージカル処理も本格的で上質のエンターテイメントに仕上がった。

初舞台生39人の口上のあと再び緞帳が上がると、舞台は海軍大臣ウィリアムズ(寿つかさ)が、一夜を共にしようとする愛人にせがまれて大事な宝をみせてしまう場面から。その女はアイリーン(潤花)。ある時はオペラ歌手、ある時はスパイという謎の女性だ。

この序章があってロンドン1890年、切り裂きジャック事件が頻発して騒然とする冬の街の雑踏に舞台は移る。犯人逮捕に躍起となるレストレード警部(和希そら)をしり目に浮浪者たちが暗躍、なにやら犯人のしっぽをつかんだ様子。浮浪者のリーダーが実は探偵ホームズ(真風涼帆)薄汚い姿から一転、英国紳士に早変わり、さっそうと登場すするという仕掛け。のっけから人を食った出だし。全編そんな感じで、登場人物の話していることがどこまでホントなのかウソなのか一向に見極めがつかないストーリーが展開していく。推理小説マニアにはなかなか歯ごたえのあるストーリーだろう。

詳しい話は見てのお楽しみとして、ただ一点 冒頭の海軍大臣が持っていた宝の正体はあとで何かわかり、これをアイリーンが持ってしまったことで彼女に危機が迫るのだが、この辺が説明不足で後半の展開にやや緊迫感を欠く要因となっている。ここをもう少しすっきりさせるとさらに面白くなると思う。

とはいえホームズの居室のベーカーストリート221Bの凝った装置などもみどころで、ホームズが拳銃を撃ち放して「VR」(女王ビクトリア・レジーナの略)の弾痕を作るなど原作を忠実に再現している。

ホームズに扮した真風は、登場シーンからグラパンのパロディかと思わず笑えたが、全編硬軟自在、ふり幅の広い人物像の設定で新たな魅力を発散。最後までけむに巻いた。ぜひシリーズ化してほしい。

新コンビの潤花は、ずいぶんと大人っぽい謎の女性役で、オペラ歌手という触れ込みで本格的な歌唱も披露、一方、スパイらしい一面もあり、ホームズとも因縁の仲。紆余曲折の末にハッピーエンド?というところも洒落ていて、いろんな面を出せる役を潤が生き生きと演じている。真風との相性はぴったりなようだ。

芹香が演じたホームズの宿敵モリアーティは悪役の権化のような役。生田氏もホームズと対等かそれ以上に膨らませていて二番手ならではのおいしい役に仕立て上げた。芹香もそれに応えて、久々に水を得た魚のように弾けていて、みていても気持ちよかった。ラストの意外な登場にも要注目!

ホームズといえば相棒はワトソン。桜木みなとが、”俺お前”のようなバディ感覚で演じていてうまく雰囲気をつかんでいた。関係はないが韓国版ミュージカルでは一路真輝が女として演じていたのを思い出した。

ほかに和希のレストレード警部、遥羽ららのハドソン夫人、ワトソンの婚約者メアリーの天彩峰里らが原作のレギュラー陣。いずれもホームズの世界に違和感なく溶け込んでいた。

一方、期待のレビュー作家、野口氏のスぺクタキュラー第4作となった「Delicieux!」も、野口氏の真風にシャンソンを歌わせたいという発想からうまれた新感覚のパリレビュー。マカロンなどのスイーツをテーマに、初舞台生のラインダンスもある、宝塚ならではの豪華絢爛のレビューだ。

憧れのパリに出てきた田舎娘ラ・フルール(潤)がギャルソン(芹香)の誘いに乗ってパティスリーに案内されるところからはじまり、ゴンドラに乗ったパティシエ(真風)が舞い降りるというオープニングからとろけるような甘いムード。一転して、純白の衣装に早変わりした真風を中心に大階段を使った、全員真っ白の鮮やかなプロローグへ。フルーツタルト、キャンディー、ショコラケーキ、アイスクリームとスーツの冠の着いた場面が連続して壮大なカンカンに発展、マカロン型ペンライトを持った客席を巻き込んでの総勢120人の華やかな総踊りは目を奪う豪華さ。コロナ禍で出演者の人数を制限していた時を思うと、ようやくここまで戻って来られたかと感慨無量だった。

赤、白、青のトリコロールカラーを中心に、とりわけ白とピンクを基調にした舞台はとにかく明るく、耳なじみのシャンソンが次々に新感覚のアレンジで登場、まさにデリシュー(おいしい)レビューだった。王妃のお茶会と題した第二章がみもので、芹香がマリー・アントワネット、真風がフェルゼンに扮し、芹香が豪華なわっかのドレス姿から一瞬の早変わりで見事な美脚を披露、真風とデュエットして銀橋でポーズ、客席からは思わず歓声が上がった。

真風のベラミと潤のアメリカンチェリーが桜木のレザンを絡めて踊るフォレ・ノワールの妖しいダンスもアダルトなムード。真風と潤の個性が際立った。芹香を中心としたシャンソンをヒップホップ風に歌い踊るシーン、和希と水音志保、山吹ひばりの「夢千鳥」トリオの場面などもあって華やかな中詰めへ。桜木と和希が残って初舞台生のラインダンスにつなぐのだが、このラインダンスがまた豪華絢爛。舞台中央に三段の円形のマカロンタワーがしつらえられてその上に39人が勢ぞろい。ピンクの羽がなんとも鮮やか。「モンパリ」「パリゼット」「華麗なる千拍子」などパリレビューの名曲に乗って初々しいラインダンスを繰り広げた。

「シャーロック・ホームズ」が冬のロンドンが舞台で暗い霧のイメージなので、レビューの明るさがひときわ映えて、スイーツたっぷりおなか一杯の二本立てだった。

©宝塚歌劇支局プラス6月26日記 薮下哲司

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