©️OSK日本歌劇団
OSK新トップスター、楊琳お披露目公演「夏のおどり」開幕
来年100周年を迎えるOSK日本歌劇団の新トップスターに就任した楊琳(ヤン・リン)のお披露目公演「レビュー夏のおどりSTARt」(平澤智作、演出、振付)が14日、大阪松竹座で開幕した。当初は12日から開幕の予定だったが緊急事態宣言の延長で、大阪府内の劇場が土日は閉館することが決められたため二日遅れの開幕となったが、楊以下31人の出演者によるレビューはエネルギッシュそのものだった。
「STARt」は、謝珠栄門下で宝塚のショーの振付も担当している平澤氏が、一昨年の桐生麻耶のお披露目公演に続いて手掛けたレビュー。タイトルは「スタート」と「スター」と「アート」をかけた平澤氏の新トップスター楊に捧げた造語。通常のOSKのレビューは一部が日本物、二部は洋物だが、今回は100周年を前に新トップにふさわしい新しいチャレンジをというコンセプトで一部、二部とも洋物レビュー、休憩をはさんで1時間50分というコンパクトながらスタイリッシュなショーに仕上がった。
オープニングはゴールドのコートを着た楊が舞台中央から登場、若者が集うクラブという設定で舞美りらや千咲えみらを相手にのっけからホットなダンスを披露。OSKらしくないずいぶん垢ぬけた印象。羽那舞ら4人の娘役によるOSK名物チェリーガールズの復活も懐かしい。
新トップの楊は2007年初舞台。宝塚でいうと雪組の彩風咲奈や星組の愛月ひかると同期ということになる。OSKのトップとしてはとしてはかなり早い方で、前トップの桐生麻耶と比べると大幅な若返り。ステージ上のメンバーもフレッシュだ。
その前トップで特別専科の桐生はベートーベンの「運命」をロックアレンジした「ディスティニー」の場面でシルバーのシックなコート姿で登場、一瞬で場の空気を変えるだけの圧倒的存在感。あとから登場した新トップ楊にバトンタッチするシーンがなんとも素敵だった。
続いてスーパーマンになりたい黒縁メガネの冴えないサラリーマンに扮した楊のコミカルなシーンでは、マイケルジャクソン風の愛瀬光とエルビスプレスリー風の虹架路万とのかけあいが楽しい。
そして華月奏の素晴らしいソロからコンテンポラリーダンスをレビュー仕立てにした「A New Wild Blows」の圧巻の群舞で一幕を締めくくった。
休憩をはさんで二部は楊を中心に全員でOSKのこれまでの歩みや未来への思いを歌った「バトン」のコーラスからはじまり、「雨に唄えば」はじめ「キスミーケイト」などコールポーターの名曲の数々に乗せて名物ラインダンスも披露。ラインダンスがいつもより少し短く感じたが、全員で歌った「ザッツ・エンタテインメント」では客席から自然と手拍子が沸き起こるなどおおいに盛り上がった。
他にも若手男役陣のダンスや情熱的なスパニッシュなど、すべての場面に楊が出演、超人的な活躍ぶりをそうとは感じさせずにいとも楽々とやってのけた楊のパワフルでエネルギッシュなステージングがみものだった。
緊急事態宣言延長で公演回数が減ったばかりか、客席数も減らしての公演だが、出演者の熱量がじかに伝わるホットなステージだった。公演は18日まで。東京公演は8月5日から8日まで新橋演舞場で。
©宝塚歌劇支局プラス6月14日記 薮下哲司