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珠城りょう、集大成ステージ「Eternita」開催
8月に退団する月組トップスター、珠城りょうのスペシャルライブ「Eternita」(三木章雄構成、演出)が、15、16、17の3日間、宝塚バウホールで開かれた。もともとは新宝塚ホテル初の現役トップスターのディナーショーとして企画されたショーだが、昨今の事情でバウホール公演として実現、そのため出演者も珠城を含めて鳳月杏ら5人だけ、休憩なしのインティメイトなコンサートだった。
緞帳が上がると大きな耳をつけたウサギの格好をした珠城が登場。客席に向かって注意事項をのべたあと、いよいよ開幕。オープニングはウサギのスタイㇽにちなんだ「アリスの恋人」の「A MAD TEA PARTY」から。すっかり忘れていたがウサギで出ていたのだと懐かしく思い出した。幕開きからこの通りで、全編とにかく珠城のこれまで出演した多くの作品からの主題歌がずらり。ファンにはこれ以上ないプレゼントとなった。
鳳月そして輝月ゆうま、佳城葵、朝霧真が加わって「カルーセル輪舞曲」を歌った後、珠城を中心に最初のご挨拶。タイトルの意味が永遠であることなどを説明。共演の4人に自己紹介代わりにタイトルをもじって「いまタベルナラ何?」と質問、四人が食べたいものを披露するなど最初から和気あいあいムード。続いて珠城が下級生時代の出演作から主題歌をメドレーで歌う「EARLY DAYS」のコーナーへ。
トップを飾ったのは明日海りおが月組時代に主演したバウホール公演「春の雪」からの主題歌。珠城が明日海扮する松枝の親友役を好演した作品だ。ついで「アーサー王伝説」「1789」「鳳凰伝」「激情」と懐かしい作品群が続き、自身のバウホール初主演作「月組の皇子」から3曲をメドレーで。さすがに思い入れもほかの作品とは違うようだ。
二度目のMCタイムは、出演者それぞれの思い出深いエピソードの披露、続いて鳳月を中心にいまや月組の代名詞となった「Apasionado‼」を歌い始め、途中で真っ赤の衣装に着替えた珠城も加わって熱く歌い踊った。珠城の月組に対する熱い思いがストレートに伝わった一曲だった。
珠城が一人残ってここからは「Glorious Days」のコーナー。「雨に唄えば」を歌ったあと再びMC。新人時代の失敗談などを披露、懐かしの新人公演主題歌メドレーへ。「エドワード8世」「スカーレット・ピンパーネル」「ロミオとジュリエット」などなど。
「ロミオ」の「世界の王」から4人が入り、歌い終えた後4人が女役として珠城と共演するなら何の役をやりたいかを披露。鳳月が「グランドホテル」のグルーシンスカヤといえば輝月は「雨に唄えば」のキャシー、佳城が「夢現無双」のお通、朝霧が「エリザベート」のシシーと答えておおいに盛り上がっていた。
続いて「ロミオ―」新人公演でベンボーリオを演じた輝月が「どうやって伝えよう」を「ベルサイユのばら」からは鳳月が「心の人オスカル」。最後は全員で「クリスタルタカラヅカ」を歌ってこのコーナーを締めくくった。
最後のコーナーは珠城がどうしても歌いたかったという「Precious Songs」の数々。「赤と黒」から「恋こそ我が命」。「New Wave月」で踊った「ベサメムーチョ」を相手役に鳳月を迎えてセクシーに。「激情」から「愛すること生きることどうしてこんなに切ないの」をしっとりと歌った後、最後の曲は「PUCK」から「ジャスト セイ ダンス トゥナイト」を全員で歌ってにぎやかにフィナーレ。
カーテンコールでは、珠城が珍しくゴージャスなアクセサリーをつけて登場。山下達郎の「ずっと一緒さ」を歌いはじめると客席からはペンライトの洪水。おもわず涙ぐみそうになりながらの熱唱となった。「反則だよ」と笑わせながら、投げキッスならぬ投げハートで「あー幸せ!」の言葉を残して幕を閉じた。最後まで笑顔をたやさず、感情に流されず、手堅くまとめ、珠城らしさ全開のステージだった。
恵まれた容姿と体格で、早くから大役に抜擢されながら、どれも着実にこなしてスター路線を歩み、2016年に研9でトップに就任、天海祐希以来のスピード出世と話題になった珠城。トップ5年目での退団となるが、今回はその宝塚生活前半の集大成といったステージ。トップ時代の作品は、本公演のサヨナラショーに取っておき、それまでの軌跡をたどるといった構成だったが、こうやって作品を振り返ってみれば、改めて恵まれたスターだったなあと思い知らされた。個人的には「月組の皇子」と「All for one」が珠城の個性を最大限に生かした代表作だったと思っていて、今回、後者の曲がなかったのが残念だったが、サヨナラショーで聞けることを期待したい。
©宝塚歌劇支局プラス1月17日記 薮下哲司