大地真央、花總まり初共演「おかしな二人」大阪公演開幕
元月組のトップスター、大地真央と元宙組娘役トップスター、花總まり、活躍した時代は違うが、それぞれ一時代を築いたカリスマスター2人が初共演したコメディー「おかしな二人」(ニール・サイモン作、原田諒潤色、演出)大阪公演が5日、シアタードラマシティで始まった。宝塚でも轟悠、未沙のえる(再演は華形ひかる)のコンビで上演された傑作コメディーの女性版、二人の丁々発止のやりとりがみものだが、なかでもコメディエンヌとして定評のある大地が本領発揮。カーテンコールには大地と花總がミュージカルナンバーを歌い継ぐデュエットまであって大満足のステージだった。
「おかしな二人」はニール・サイモンが1965年に発表、ブロードウェーで大ヒットした戯曲。ジャック・レモン、ウォルター・マッソーの共演で68年に映画化され、日本でもヒットした。舞台版も再三上演され、宝塚での上演は2011年、専科の轟悠と未沙のえるのコンビで初演された。1985年には設定を女性に変えたバージョンが上演され、日本でも直近では浅丘ルリ子と渡辺えりの共演で上演されたが、今回はその女性版の再演。演出は月組公演「ピガール狂騒曲」の原田諒。大地とは「ふるあめりかに袖はぬらさじ」に続いて二度目のコラボとなった。
舞台は1970年代のニューヨーク。思い切り散らかったアパートの一室でミドルエイジの女性たち4人がゲームをしているところから始まる。部屋の主オリーブ(大地)は、キッチンからとっくに賞味期限が過ぎたサンドイッチをもってやおら登場、常連のフローレンス(花總)が遅れているのをいぶかるメンバーたちに「もうすぐくるわよ」と心配するそぶりもみせない。そうこうするうちに14年間連れ添った夫のシドニーと別れて家出してきたというフローレンスがやってきてひと騒動、結局、オリーブのアパートにフローレンスが同居することに。かくして何事にも鷹揚なオリーブと潔癖症のフローレンス、正反対の性格の二人のおかしな共同生活が始まる。
1970年代のポップなモッズファッションを着こなして機関銃のようなセリフを立て板に水の如く連発する大地の縦横無尽の演技が見事で、時々挟む大阪弁のセリフの呼吸も抜群で、会話劇の醍醐味を味わわせてくれる。共演のシルヴィア・グラブ、宮地雅子、平田敦子、山崎静代もそれぞれの個性がかぶることなく存在感たっぷり、アンサンブルがうまくまとまっていた。ただ山崎演じるヴェラの間延びした性格それ自体はユニークだったが、広い劇場ではややセリフが聞こえづらく、せっかくの面白さが半減したのがもったいなかった。
一方、花總のこういうコメディー演技は宝塚時代も含めてこれまであまり見たことがなかったが、夫にも愛想をつかされるほどの潔癖症、しかし、どこまでも品のよさを失わないところが花總らしく、大地の連発銃のようなセリフもよく受けとめた。互角のやりとりという意味では大地に一日の長があるように思われたが、花總も体で受け止めていた。
オリーブとフローレンスに加えて友人たち一人一人の生きざまもミドルエイジの女性たちの生活の影がきちんと描かれていて舞台に厚みと深みを増していたことも付け加えたい。
ラストシーンで全員が「オズの魔法使」から「虹の彼方に」を歌い継ぐ場面で終わるのだが、これがカーテンコールへの伏線になっているのも心憎い演出だった。
カーテンコールでまず男性陣の芋洗坂係長と渡辺大輔がタップを披露、次いでシックな黒のドレスに着替えた大地が「虹の彼方」とともにジュディ・ガーランドのヒット曲「ゲットハッピー」を歌いながら登場、次に「ダイヤモンドは女の親友」から花總が入って、いろんなミュージカルナンバーのさわりを二人でデュエット、これはなかなか聞けない貴重なデュエットだった。
大地、花總で「おかしな二人」女性版、と聞いた時は一体どんな舞台になるのだろうかと思ったのだが、結果は大当たりだった。公演は8日まで。
©宝塚歌劇支局プラス6日記 薮下哲司