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望海風斗 もやもや吹き飛ばす充実したステージ「NOW! ZOOM ME!!」開幕
雪組トップスター、望海風斗の退団前のコンサート、望海風斗MEGA LIVE TOUR
「NOW!ZOOM ME!!」(斎藤吉正作、演出)が11日、宝塚大劇場で開幕した。当初4月から5月にかけて東京と神戸で開催の予定だったが新型コロナの感染拡大で延期になり、場所を宝塚大劇場に変えて4か月遅れて初日を迎えた。定評のある望海の歌唱力を最大限に生かしながらバラエティー豊かな構成で、望海の魅力のすべてがつまったコンサートに仕上がった。
コンサートは休憩をはさんでたっぷり3時間。望海を中心に雪組選抜メンバー23人がフル稼働、エネルギッシュでパワフル、延期になってたまっていたもやもやをすべて発散せんとばかりのダイナミックなステージ。
オープニングから映像を縦横に駆使、望海がポスターと同じ濃い緑色のミリタリールックで登場するとソーシャルディスタンスで半分の観客しか入っていないはずの大劇場のボルテージが一気に上がった。望海はじめ全員が「ZUKA ZUKA ZOOM UP」と歌うオープニングの主題歌が弾む。
「ZUKA」は、宝塚歌劇の愛称のひとつだが、これまで歌詞として使われたことはなかった。フランス語由来のタカラジェンヌに対して英語由来のヅカガールという言葉があり、一般ではどちらもよく使われている。しかし、宝塚としては「ヅカ」という言葉を公式に使うことはなかったと思う。かくいう私も「ヅカ」は使ったことがない。「ヅカガール」ではなく「タカラジェンヌ」という言葉の響きが宝塚にふさわしいと思っていたからだと思う。今回堂々と「ZUKA ZUKA」と歌う雪組生たちを見て宝塚も変わったなあという感慨に陥った。
まあ、それはさておき、コンサートは一部が、アイドル、プリンセスプリンセスやKANなど懐かしいJポップなどもふんだんに登場、アイドル歌手風、ルパン風の名探偵、怪傑ゾロ風の悪党、無人の箱から美女が登場するマジックなど、次から次へとバラエティー豊かに展開、息もつかせぬ1時間20分だった。
たいがいおなかがいっぱいになったところで、しかし、お楽しみは二幕に入ってからというのも憎い構成。ドラマ「3年B組金八先生」をパロディー化した「106年雪組アヤナギ先生」から始まる二幕は彩凪翔のとぼけた先生ぶりが抜群でのっけから大爆笑の連続。詳しくは見てのお楽しみだが、続く望海を中心とした「雪組パロディー」も爆笑の連続。
「壬生義士伝」「ファントム」「星逢一夜」「ひかりふる路」を喜劇仕立てに一つの物語にまとめたコントで、無茶苦茶な無理やりパロディーに客席も腹を抱えて大爆笑。かつての愛読者大会のコントを思い出させる楽屋落ちのギャグもふんだんに登場、ファン大喜びだった。
笑いに包まれた後は望海と組のメンバーとのMCコーナー。初日は沙月愛奈、桜路薫ら6人がこの日を迎えたうれしさを思い思いに。続くリクエストコーナーが歌の望海の本領発揮のシーン。数多くのリクエストから望海が選んだ3曲は「スカーレットピンパーネル」から「ひとかけらの勇気」。「ブラックジャック危険な賭け」から「かわらぬ思い」そして「ザ・レビューⅢ」から「愛の旅立ち」。朗々と歌う望海のなめらかな歌声をじっくり聴けた至福の時だった。
フィナーレはオープニングのミリタリールックに戻って、華やかにエンディング。アンコールはこのコンサートの望海のためにナオト・インティライミが作詞、作曲した「夢をあつめて」を初披露。さわやかで耳に心地よい楽曲で、これからの望海のテーマソングになりそうだ。テーマソングといえば「Music Revolution」の「Music in my life」を望海がピアノの弾き語りで歌う場面もあり、まさに望海の集大成といったステージだった。
望海をきっちりサポートした彩凪の芸達者ぶりにも乾杯!諏訪さきがこれという場面で歌に起用され好唱していたのも印象的だった。
新型コロナ感染予防のため、一階最前列から5列目までは無人、コンサートにはつきものの客席降りもなく、まだまだいつもの宝塚ではないのだが、見ている間は、そのことを一瞬忘れさせた望海マジックコンサートだった。公演は19日まで。
©宝塚歌劇支局プラス9月11日記 薮下哲司