望海風斗&真彩希帆の軌跡、小池修一郎の世界を探る、紅ゆずるインタビュー
多彩な特集「宝塚イズム41」6月1日発売!
新型コロナウィルス感染拡大予防のための緊急自粛要請が、徐々に解除の流れになり、全国の大型書店も再開の動きがでてきました。コロナ禍中の4月以来編集作業を重ねてきた「宝塚イズム41」(薮下哲司、鶴岡英里子編、著、青弓社刊、定価1600円+税)は6月1日発売。絶妙のタイミングで皆さんの手元に無事お届けできることになりました。
巻頭特集は「望海風斗&真彩希帆 ハーモニーの軌跡」。2月に今秋退団を発表した雪組のトップコンビ、望海風斗と真彩希帆のこれまでの輝かしい軌跡をイズム執筆メンバーに振り返ってもらいます。通常なら「望海風斗、真彩希帆サヨナラ特集」となるところですが、コロナ禍で宝塚歌劇の公演が中断。再開後は、スケジュールを新たに編成しなおして公演されることになり、退団日が遅ければ来年にずれ込む可能性があるため「退団が決まっている二人の軌跡をたどる」という形をとったのです。とはいえさすが実力派の二人です。入団当時から現在まで、しっかりと見守ってくださったメンバーの珠玉の原稿が集まりました。抜群の歌唱力とともに二人の相性の良さの秘密が解き明かされます。
小特集は「小池修一郎 華麗な世界の創造者」。今年3月に65歳の誕生日を迎え、歌劇団を役職定年となった演出家小池修一郎氏の創作の秘密と作品の魅力、宝塚での功績を論じます。宝塚歌劇団は親会社が阪急電鉄ですので、劇団員も演出家も会社員で、否が応でも社則に従っての定年退職を迎えます。もちろんその後も「団友」という立場で歌劇団の仕事に携わることは可能で、これまでにも柴田侑宏、酒井澄夫、岡田敬二、三木章雄、中村暁といった各氏はことあるごとに新作や自作の再演時に演出を担当しています。理事長を務めた植田紳爾氏は特別顧問という立場で別格ですが、「エリザベート」を筆頭にここ30年間、ヒット作を量産、宝塚歌劇の隆盛を演出家という立場から支えてきた小池氏も、これまで通り今後の宝塚での活躍が期待されます。特集では今年1月、自身の集大成的大作「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」を発表して、歌劇団の演出家としての立場に一区切りをつけた小池氏の演出家としての原点や、今後の活躍への期待など多彩なアプローチで小池氏に迫ります。
一方、今年2月に肺炎で亡くなった1960年代から1970年代にかけて宝塚で一時代を築いた稀代のショースター、眞帆志ぶきさんを偲ぶ特集も組みました。眞帆さんは、レビューがメインで芝居は前物だった宝塚の最後のスター。鴨川清作氏のミューズとして「シャンゴ」や「ノバ・ボサ・ノバ」など数々のショーの傑作を生みだした眞帆さんですが、全盛時代はまだビデオが普及する前で、音源は残っていても映像は全く残されておらず、その偉業は、ややもすれば忘れ去られがちです。きちんと記録を残しておかないといけないという思いから、追悼文と生前のインタビューをまじえた葬儀のルポを掲載しています。
OGインタビューは、昨年退団した元星組トップスター、紅ゆずるの登場。取材時点では公演予定だった退団後の初舞台、6月の新橋演舞場公演「熱海五郎一座」が残念ながら公演中止になってしまいましたが、宝塚への熱い思い、そしてこれからの抱負などをたっぷり聞いています。
恒例の大劇場公演評や新人公演評、外箱公演対談さらにOG公演評などもコロナ禍の休演で担当者が見られなかったり、取り上げる予定の公演が中止になったりと、さまざまな障害がありましたがなんとか原稿がそろい、発行にこぎつけました。こういう事態になってもみなさんの宝塚愛は変わらず、いつになく熱のこもった一冊になったと自負しています。
肝心の新型コロナは治療薬やワクチンは世界中の医療関係者の必死の努力にもかかわらず未開発のまま。緊急事態宣言の解除もさまざまな制約の上での見切り発車となりました。劇場も解除の対象に入り再開への兆しはありますが、閉鎖空間で客席はおろか舞台上も3密は避けられず、再開に当たって客席は一列おきの着席で両サイドは二席あけてとか、舞台と客席の空間を確保せよとか無理難題。キャパシティーの半分以下の入場者数では公演しても赤字は必至、第一こんな状態で観劇しても楽しむどころか不安が増すばかり。おまけにロビーでの滞留時間を短くせよとのお達しもあってグッズ販売もままならないという状態のなか、実際に再開できるのかどうかまだまだ先が見えない状態です。
宝塚歌劇は6月末までの休演が決まっていて、7月再開を目指していますが、この様子だと自粛以前の通常の状態で再開するのは難しそう。一刻も早く、演者も観客も安心して心の底から楽しめる空間を取り戻すことができることを望むばかりです。とりあえず6月1日発売の「宝塚イズム41」をお楽しみください。
©宝塚歌劇支局プラス5月17日記 薮下哲司