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明日海りお 笑顔で宝塚大劇場にお別れ 花組公演千秋楽
5年半にわたって花組トップに君臨、絶大な人気を誇る明日海りおのサヨナラ公演、ミュージカル「A Fairy Tale」-青い薔薇の精―(植田景子作、演出)とレビュー・ロマン「シャルム!」(稲葉太地作、演出)が、9月30日宝塚大劇場で千秋楽を迎え、明日海が大劇場に別れを告げた。宝塚きっての人気スターのサヨナラ千秋楽とあって、この日の大劇場周辺は午前中の恒例入り待ちから、公演後の花のみちパレードまでファンが絶えることなく、周辺は一種の興奮状態が続いた。
映画館でのライブビューイングも大阪市内のTOHOシネマズ梅田だけで3スクリーン(定員1800)完売の人気。台湾、香港も含めた全国規模で少なくとも3万人が見た勘定になる。その昔は、大劇場に入れなかったファンのためにロビーに音声を流し、挨拶の声を聞き漏らすまいと必死に耳を傾けていた光景を覚えている。その後、小さいテレビが改札付近に置かれて多くのファンがサヨナラショーに見入っていたものだ。もちろん無料でファンサービスだった。それがいまや入場料4600円の一大興行に。サヨナラ公演のライブビューイングだけで1億の収入になる時代になった。感慨無量だ。
それはさておき、公演後に行われた明日海のサヨナラショーは、花組トップ時代の作品を振り返ったコンパクトな構成。緞帳があがると、ウエッジウッドカラーの衣装に羽を付けた明日海が登場。まずお披露目公演「エリザベート」から「愛と死の輪舞」を歌い、「宝塚幻想曲」では花組メンバーが白い扇をもって明日海を飾り立てた。続いて「カリスタの海に抱かれて」「新源氏物語」「金色の砂漠」と主題歌をメドレー。「Messiah」では明日海を中心に感動の大合唱を再現、続く「エキサイター」では客席に降りてハイタッチ、ファンを熱狂させた。
柚香光が「メロディア」を歌う間に黒っぽい衣装に着替え、カサノバに扮した明日海は従者に水美舞斗を従えて下手から銀橋に登場。舞台中央で真っ赤なドレスを着た女性に「ベアトリーチェ!」と呼ぶと振り返ったのは瀬戸かずやというお笑いから、同時に退団する芽吹幸奈、白姫あかり、乙羽映見、城妃美伶の4人をからめて主題歌を歌うという展開
続いて代表作「ポーの一族」から2曲。アラン役の柚香とのデュエットによるフィナーレナンバーとメリーベルに扮した華優希とのダンスナンバーがロマンティックに再現された。
同時に退団する娘役4人の銀橋でのにぎやかな「サンテ!」のあとは、純白にピンクの花柄のガウン姿の明日海が大階段から登場、「ビューティフルガーデン」から、サヨナラする明日海の現在にリンクした「エターナルラブ」そして「ハンナのお花屋さん」から「ハッピネス」を花組全員で歌ってエンディング。明日海らしいさわやかなラストショーだった。
「男役に強くこだわってきたので」と男役の正装である黒燕尾で大階段を下りた明日海に花束を渡したのは、同期の雪組トップ、望海風斗。この時、望海がなにやらささやいたが「生まれ変わってもまた一緒にやろう」と言われたのだとか。最後の挨拶は「まだ東京公演があるので」と涙は見せず「大好きな宝塚大劇場さん。ここで感じたこと、ここで過ごした時間、そのすべてを忘れません。さよなら!」と手を振って大劇場に別れを告げていた。
音楽学校の文化祭でかわいらしい少年役で印象的だった明日海。17年後、こんなにも大きく立派に花開かせて送り出す宝塚の懐の大きさに改めて感じ入った千秋楽だった。
©宝塚歌劇支局プラス10月1日記 薮下哲司