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暁千星 最高のバースデー、バウ・ワークショップ「A―EN」アリバージョン開幕

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暁千星 最高のバースデー、バウ・ワークショップ「A―EN」アリバージョン開幕

月組期待の若手スター、暁千星が主演したバウ・ワークショップ「A―EN(エイエン)」(野口幸作作、演出)のアリバージョンが14日、宝塚バウホールで開幕した。今回はこの模様を報告しよう。

「A―EN」は、朝美絢と暁が主演する2バージョンがある月組若手による芝居とショーのワークショップ。朝美バージョンに続く暁を中心にしたアリバージョンも、朝美版と同じく、芝居はニューヨークのブルックリンにある高校が舞台の青春ドラマ。ショーもセットや衣装はよく似ていて、曲も同じ曲が使われたりするが、場割が微妙に違っている。出演者は全くかぶらない月組若手20人で、研1、2メンバーにも大きな役が付いてアーサーバージョンと同様、搾りたてのレモンそのままのフレッシュきわまりないステージとなった。

芝居は「プロムレッスン」とタイトルは朝美版と同じだが、朝美版が、イケメン男子がうだつのあがらない地味系の女子を「マイ・フェア・レディ」よろしく美しく変身させるというストーリーだったが、暁版はその逆で、男前のカッコイイ女子、マリッサ(海乃美月)が、転校生のアニメおたくの不思議系男子、アリエル(暁)をジュニアプロムのキングに仕立てるまでを描く。朝美版が卒業前のプロムだったのに対し、学年が少し下という設定だ。

海乃扮するマリッサを中心にした制服女子が勢ぞろいして歌って踊るシーンから始まる芝居はなんだかAKBミュージカルと勘違いしそうな幕開き。ブロンドのヘアをなびかせて歌う海乃が、ひときわ背が高くてなかなかかっこいい。そこへ転校生のアリエルことアリ(暁)が、メガネに耳当て帽子というさえない格好で登場。転校初日から遅刻はするわ、メガネは壊すわ、ドジりっぱなしで、クラスのメンバーからは笑いものに。担任の先生(颯希有翔)の配慮でマリッサの隣に座ることになり、マリッサが学校の案内をすることになったことが、2人の出会いのきっかけとなって…、というストーリー。

野口演出は、朝美版と同じく今どきの少年少女の学園物の雰囲気を濃厚に出しながら、快調なテンポで展開。保健室のセクシーな先生(玲美くれあ)と体育教師(有瀬そう)のちょっぴり大人な関係をコミカルにまじえながら、マリッサの元カレ、コリン(蓮つかさ)と新しい彼女サンドりーヌ(美園さくら)とのライバル関係、マリッサの親友カレン(舞雛かのん)と中国系アメリカ人ウー(英かおと)らを巧みに配して、アリとマリッサのピュアラブをお定まりだがさわやかに描いている。脇に至るまで個性的な役と配役が面白い。

暁は不思議系のさえない男子役がさまになっていて、おかしくもかわいい。ラストのイケメン男子での登場もすっきりしていて若々しさがあふれた。台詞が早口で、客席の笑いとかぶって聞き取りにくいところがあったので、その辺は改善の余地ありかも。ヒロインの海乃は「1789」でオランプ役を演じた経験値がやはり大きくて、舞台での存在感や演技の余裕などは一番。卒業したら、どこかの大企業でバリバリのキャリアになるだろうな、と思わせる雰囲気まで漂わせていた。

一方、ショーは、ダンサー暁を存分に楽しんでもらおうという狙い。暁もその期待にこたえて身体能力のすべてを出し切っている。しかし、難易度の高い振りもずいぶん楽々としていて余裕たっぷり。全場面にメーンとして登場、歌い踊りまくるが、汗やしんどさをまったく感じさせないのがすごい。柚希二世という呼び声もあながち過大評価ではないことが証明されたようだ。

純白の豪華なマント姿で三日月に乗って宙づりで登場、早変わりで真っ赤な衣装に変わるプロローグは朝美版と同じ。続いて英かおとのファムファタールを相手にセクシーに踊るジャズ、「Moon River」などの月の曲のメドレー、美脚をふんだんに披露する女役のラテン、純白の軍服姿で「ブーケダムール」などの宝塚クラシック、「黒い鷲」で登場するシャンソン、そしてかっこいいシルバーグレイの背広のダンスと考えられるあらゆるパターンが見られる。海乃とはムーンメドレーのデュエットでからむが、これがなんとも洒落たダンス。とにかく大きなファンキックもくるくる回るピルエットも楽々で、どの場面も眼福だ。ラテンの女役も、バックの男役ダンサーと同じ振りをダルマ姿で踊る。これには少々びっくり!ラテンの場面の相手役は研1の礼華はる。朝美版で天紫珠李が抜擢されたように、ここでも大抜擢。芝居でも実行委員役で身長と甘いマスクが目立っていたが、これで一気に名前を覚えた。ほかにも芝居で美容師志望の学生とトラヴィスを好演した新斗希矢がショーでも英、礼華とともにキュートボーイなどで客席おりに起用されるなど、若手の抜てきが目立った。

歌では、芝居の担任教師役でアリの応援歌を好唱した颯希が、ショーでもジャズやクラシック、シャンソンの場面のソロで美声を聴かせた。有瀬のパワフルな声、美園の透き通った声とともに歌の人を印象付けた。

公演終了後のカーテンコールでは、観劇していた美弥るりか、珠城りょうら「Dragon night」メンバーの紹介もあり、満員の観客は自然発生的に総立ちのスタンディング。予想していなかったハプニングに暁も大感激だった。初日の9月14日は「おとめ」を見て頂ければ分かるように、故意か偶然か、暁の誕生日。終了後には、幕内ではメンバーからのサプイズのお祝いがあったというが、暁にとっては、最高のハッピーバースデーになったに違いない。

©宝塚歌劇支局プラス9月15日記 薮下哲司


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