藤咲えりディナーショー「Sincere」宝塚ホテルで開催
元宙組の娘役スター、藤咲えりが、8月10日、宝塚ホテル琥珀の間で「Sincere」と題したディナーショーを行った。今年いっぱいで93年の歴史に幕を閉じる旧館のフェアウェルイベントの一環として開かれたもので、集まったファンは由緒あるホテルの雰囲気を楽しみつつ、藤咲の歌声に聴き惚れた。
藤咲は2005年初舞台の91期生。音楽学校時代から歌唱力に定評があり本公演でも早くから歌のソロで抜擢された。2012年に中日劇場公演「仮面ロマネスク」で念願のトゥールベル侯爵夫人役を演じ「自身の娘役人生を全うした」としてその後の大劇場公演で退団した。現在は後進に歌やダンスを教えながら自らも歌のレッスンを続けている。今回はそんな藤咲が、宝塚にゆかりのふかい曲をメーンに選曲、ゲストに同期生で元花組の人気男役スター、鳳真由を迎えてのディナーショーとなった。
オープニングは、藤咲がショーで初めてソロをもらったという映画「フラッシュダンス」の主題歌を歌いながら客席から登場。純白のパンツスーツにピンヒールというスタイルで、在団中の藤咲のイメージとはがらりとかわったかっこよさ。
ステージに上がって、簡単にあいさつしたあとまずは「いつか王子様が」などのディズニーメドレー。ロマンティックな雰囲気に浸ったところで、シャンソンメドレーへ。「パリはシャンソン」「鏡の中のつばめ」と続けた後で、宝塚メドレー。「アーネストインラブ」の「悪い人」のあと「夢人」「愛の宝石」と宝塚の名曲を歌った後、いよいよ鳳真由が登場。藤咲とのデュエットが実現した。
「ファントム」花組新人公演でエリックを演じた鳳がエリック、藤咲がクリスティーヌに扮して「ホーム」続いて鳳トート、藤咲エリザベートで「エリザベート」から「私が踊るとき」を披露、息の合った二人に満員の場内からは思わずため息が。なんとこの二人初舞台以来共演するのは今回が初めて、デュエットも歌ったことがないと言うのだからびっくり。同期生というだけの安心感が二人を包み込んでいた。
続いて先ごろ亡くなった柴田侑宏氏の追悼コーナー。「目が見えていらっしゃらないので名前を名乗ってご挨拶したら、言わなくてもちゃんとわかるよと、いわれたのには本当にびっくりしました」と柴田氏の集中力の鋭さは驚異的だったという。柴田作品のなかからは「琥珀色の雨に濡れて」を心込めて披露。
一方、鳳は退団後、大学に入学、現在二年生。受験中に見て大感激したという「ポーの一族」から大好きな「哀しみのヴァンパネラ」を初披露した。
Jポップコーナーの後クライマックスは「ルドルフ・ザ・ラストキス」から「サムシング・モア」「ミッドナイトブルー」そしてラストソングの「ローズ」と立て続けに歌いこみ約二時間たっぷり、藤咲初のディナーショーは充実した内容だった。
会場には澄輝さやと、貴千碧ら退団した同期生や公演を終えて駆け付けた星組メンバーらが席を埋め、藤咲の晴れ姿を祝福していた。
©宝塚歌劇支局プラス8月16日記 薮下哲司
◎宝塚ホテルフェアウェルイベントのお知らせ
宝塚ホテルでは9月15日(日)にフェアウェルイベントの一環として「スパークリング・マルシェ」と題したスペシャルコンサートを西館L階「すみれの間」で開く。出演は元宙組組長の大峯麻友はじめ元星組の久城彬、元星組の大洋あゆ夢、元宙組の優花えり、元宙組の芽映はるかと現在も活躍中の実力派メンバーが勢ぞろいして楽しいトークや懐かしの宝塚の名曲を歌い継ぐ。ディナーは18時~、ショーは19時半~で料金は18000円(食事、飲み物、ショー、消費税、サービス料込)問い合わせは☎0797(85)2638まで。