米倉涼子 三度目のブロードウェーから凱旋「CHICAGO」来日公演開幕
女優、米倉涼子が、7月1日から2週間、ブロードウェーのアンバサダー劇場でロングラン中のミュージカル「CHICAGO」にロキシー役で出演、今回で3度目となったが前2回以上の成果を収めて、8月1日から大阪・オリックス劇場から始まった日本での凱旋公演に臨んでいる。
米倉は3度目のブロードウェー挑戦にあたって、1か月前から現地入り、初日に向けて体力作りから英語の再特訓を重ねて公演に臨み、ブロードウェーでは大評判だったそうだが、大阪公演も、その評判にたがわない魅力的な好舞台だった。
米倉の初登場シーンはヴェルマ(アムラ・フェイ・ライト)が歌う「ALL THAT JAZZ」の途中からだが、相手役の男優が大柄なので、背の高い米倉がずいぶん小さく見え、なんともキュート。芯のあるクリアな英語のセリフと本場の共演者にそん色のないパワフルな歌、本場のダンサーたちに交じってのダンスも手足の振りが大きくて華やかな存在感があり、日本人が一人まじっているという感覚はまったくなかった。
一幕終わりの独白を含む約7分間のビッグナンバー「ロキシー」も、硬軟織り交ぜた堂々たるもので、2012年、2017年の時から比べても大きく進化したようだ。これまで誰も到達できなかった舞台女優としての大輪を咲かせたと思う。
ミュージカル「CHICAGO」については、タカラジェンヌOGバージョンが2015年にブロードウェーで上演されたりしているので、改めて紹介する必要はないだろうが、今回の日本公演メンバーはキャストがどの役も充実していてなかなか見ごたえがあった。ビリー役のピーター・ロッキアーはハンサムだがやや若くて貫禄がでないかなあと思ったが、歌唱力が抜きんでていて、そんな杞憂は一気に吹き飛んでしまった。
渡辺謙といい、米倉といい英語の舞台でこれだけの存在感を出せるスターが登場したのは頼もしい限り。二人が主演する現代的なスマートな舞台がブロードウェーで実現できないものかと思わず夢を描いてしまった。
大阪初日は米倉の44歳の誕生日で、終演後の舞台裏では時ならぬサプライズパーティーがあったりして和気あいあいだった。
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一方、歌舞伎の中村獅童がバーチャルアイドル、初音ミクと共演する話題の舞台「八月南座超歌舞伎」公演も2日、京都南座で開幕した。千葉の幕張メッセで毎年上演されている「超歌舞伎」初の劇場バージョン。今後、海外公演も見据えた試験的な公演だが、伝統ある南座とこの新しい試みが思いのほかぴったりあって、新たな歌舞伎公演の可能性を見たようだった。
演目は幕張メッセで好評を呼んだ「今昔饗宴千本桜(はなくらべせんぼんざくら)」の劇場リニューアルバージョン。歌舞伎の「義経千本桜」と初音のヒット曲「千本桜」とコラボした新作歌舞伎だ。最新技術の鮮やかな映像を駆使、生身の歌舞伎役者とバーチャルアイドルを見事にシンクロさせたクライマックスは、歌舞伎を見慣れた大人にも、ゲームやアニメで育った若者にも満足できるまさしく「超歌舞伎」。南座がコンサートホールに変身したかのような熱狂ぶりに感慨も新たで、ラストにはなんと宙乗りまで実現、会場の興奮ぶりはいわずもがなだった。
歌舞伎版「ワンピース」や「ナルト」の時にも思ったのだが、アニメの超現実的な世界と歌舞伎の荒事の様式美は妙にマッチするところがあり、今回もその二つがさらに相乗効果的に魅力を倍増、これまで見たことがない新しい演劇体験だった。南座公演は26日まで。だまされたと思って一度ご覧あれ。
@宝塚歌劇支局プラス8月4日記 薮下哲司