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明日海りお、バースデーコンサート「恋するアリーナ」に3万人集結!
11月24日で退団が決まっている花組トップスター、明日海りおを中心としたRIO ASUMIスーパータイム@045「恋するアリーナ」(斎藤吉正作、演出)が25、26の両日、新横浜アリーナに各回1万人、計3万人のファンを集めて行われた。
トップ就任5年半、披露公演「エリザベート」から大劇場公演すべてが満員という宝塚歌劇団にとってドル箱的存在だった明日海が退団するにあたっての劇団からのでっかいバースデープレゼントであるととともに、さよなら公演前にもうひと稼ぎというコンサートでもあった。しかし出演者にとってもファンにとっても最高の祝祭であることは確かで、劇団側の思惑とは別の次元で、このビッグイベントを思い切り楽しもうという出演者たちと観客の心が一体となった熱い空間が横浜に現出した二日間だった。
25日初日と26日昼の部の2回、毎日新聞旅行のツアーメンバーとともに鑑賞したが、両日とも広い新横浜アリーナいっぱいのファンで満員の大盛況。舞台両サイドの見切りスタンド席も立錐の余地もないほど。ステージ中央には明日海の巨大な映像が映し出され、両サイドと中央天井のプロジェクターからは舞台の様子が流されるという、いつものコンサート仕様。開演前までは「エリザベート」や「ミー&マイガール」など明日海の歌声がずっと流されていてムードを盛り上げた。
そんな中、初日は10分遅れの午後7時10分からスタート。フード付きの白いオーバーオールに赤いキャップを被った明日海がステージ中央に現れると一斉に大歓声が沸き上がる。歌は2014年の花組のショー「TAKARAZUKA∞夢眩」で明日海が歌ったロックナンバー「MUGEN SPIDER」から。客席には当時のトップコンビ、蘭寿とむと蘭乃はなの姿もあって先輩への素敵なプレゼントにもなった。
瀬戸かずや、水美舞斗ら17人の出演者もキャップに色違いの衣装で勢ぞろい。明日海がデザインをリクエストしたというオープニングの衣装は、ラフなコンサートにぴったりのポップな感覚。自動制御で色が変わるリストライトで会場は真っ赤に染まった。
曲が終わったあとで明日海があいさつ。新曲「恋するARENA」を広い舞台を右から左まで走り回っての熱唱。アリーナ席両サイドに突き出たブリッジの両端はイントレになっていてかなりの高さまで上昇、手を振りながら歌う明日海の一挙手一投足に黄色い歓声が上がる。
コンサートは九つのブロックに分かれていて、さまざまな明日海の魅力を見てもらおうという趣向。下手からトロッコに乗って登場、アリーナ席とスタンド席の間の通路を上手まで河村隆一の「love is」を歌いながら通過するサービスもあってファンの興奮は最高潮。
この公演から娘役トップに就任する華優希の「恋するHEROINE」コーナーも。華はAKB48の「恋するフォーチュンクッキー」をアイドル風のひらひらの衣装で歌いながら登場。初日は10000人を前に、客席にまで伝染するほどのど緊張ぶりで声が震えがちだったが、それがまたなんとも初々しかった。歌い終わって華を明日海が「ニューヒロインの華ちゃんです」と紹介、温かい拍手に包まれた。ここで瀬戸と水美の「あぶない刑事」アキラとマイトが登場。二人が明日海にクイズを出すという楽しいコントが。
引き続き白姫あかりと乙羽映見による「ブルーライトヨコハマ」を皮切りにご当地横浜にちなんだ曲のメドレーがスタート。この日のゲストの鳳月杏がここから登場、明日海と鳳月のからみのあと「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」をかっこよく決めた。そのあと明日海は山崎まさよしの名曲「one more time、one more chance」をしっとりと歌ったが、気持ちが入っていてなかなか聴かせた。
続く「恋するMEGA運動会!」は、5年前の大運動会で最下位に終わった屈辱を晴らそうという明日海の念願の企画。18人で綱引きやリレーなど大運動会を再現、見事、優勝を勝ち取り、本物のトロフィーを授与された。「何の賞ももらえず、悔し涙にくれた」という5年前の雪辱を果たして「これで思い残すことなく次の公演に臨めます」と満面の笑みを見せた。このコーナーは組子を思う明日海の人柄がでてさわやかだった。
そして翌26日に誕生日を迎える明日海のためのバースデーコーナーへ。巨大なバースデーケーキのローソクを吹き消して、会場全体で「ハッピーバースデー」の大合唱。「リハーサルで何度も歌ったけれど、本番はやっぱり違います。一生忘れられないバースデーになりそう」と感慨深げ。そして、鳳月はじめ綺城ひか理、飛龍つかさら「Dream on!」チームとともにDA PUMPのヒット曲「USA」を、特訓したというオリジナルの振りも交えてエネルギッシュに再現、おおいに盛り上がった。
次の「恋するlady」は、ステージ中央の巨大なスクリーンに映し出されたスーツ姿の明日海と黒の帽子に黒とブルーのドレス姿の女性がデュエット。よく見たらその女性もなんと明日海だった。これまで演じてきた明日海の女役のイメージとは違った男役メイクのままロングヘアをなびかせたセクシーで男前な女役で、アダルトなムード満点。明日海の新たな魅力をみたようだった。
若手メンバーによる明日海賛歌のあとは、アキラとマイトが再び登場。客席のファンを指名して二人とのDance contestコーナー。これは客席を大いに沸かせた。そして黒の燕尾服に着替えた明日海が「ポーの一族」「カサノヴァ」そして「ハンナのお花屋さん」とトップになってからの代表曲3曲を披露。続いて出演者紹介とともに、明日海がみんなと歌いたかったという大好きな曲「きみとぼくのラララ」を全員で合唱した。
大詰めの「恋するFINALE」はさよならをテーマにした曲のメドレー。明日海は山口百恵が引退の時に歌った「さよならの向う側」をしっとりと歌ったが、声質も歌い方も違うのに思わず百恵を思い出したのは、歌に心が通っていたからだろうか。
全38曲、予定では約2時間のコンサートだったが、初日はトークが盛り上がったほか、カーテンコールが延びてたっぷり2時間30分。思いがけないロングバージョンとなった。26日は「花より男子」チームが二班に分かれて特別出演。昼の部には七海ひろき、壱条あずさら退団した同期生が大挙して客席に応援に駆け付け、ステージでは柚香光が鳳月のところには入り、ヨコハマメドレーでのマドロススタイルがよく似合っていた。場所がどこに変わろうが宝塚は宝塚。横浜アリーナを最初から最後まで明日海色に染め上げたライブエンターテインメントだった。
©宝塚歌劇支局プラス6月27日記 薮下哲司