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礼真琴、令和初公演で次期トップ披露、星組公演「アルジェの男」全国ツアー開幕

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礼真琴、令和初公演で次期トップ披露、星組公演「アルジェの男」全国ツアー開幕

 

「令和」初の宝塚公演となった礼真琴を中心とする星組公演、ミュージカル・ロマン「アルジェの男」(柴田侑宏作、大野拓史演出)とスーパーレビュー「ESTRELLAS(エストレージャス)」〜星たち〜(中村暁作、演出)全国ツアー公演が、4日、梅田芸術劇場メインホールから開幕した。礼の星組次期トップスター就任が発表されてから初めての公演とあって、満員の客席はお祝いムードであふれ開演アナウンスから大きな拍手に包まれた。

 

次期トップの発表の時期はさまざまで、トップスターの退団公演が終わってもなかなか発表されないケースもあるなか、退団を発表はしているものの現トップ、紅ゆずるのドラマシティ公演がまだ始まってもいない前に次期トップが発表されるというのは最近では異例のこと。それだけ劇団の礼への期待度の大きさがうかがえる証明ともなった。

 

さて「アルジェの男」だが1974年に鳳蘭主演による星組で初演、1983年には初演の新人公演で主演した峰さを理で再演、その後、しばらく間をおいて2011年、霧矢大夢主演による月組で再演された柴田侑宏作のオリジナル。初演は、大原ますみが退団、安奈淳が花組に組替えになったあと鳳が名実ともに星組の単独トップになった最初の公演で、相手役がまだ決まっておらず柴田氏が鳳と当時の星組の3人の娘役のために当てがきした作品だ。

 

お話は、第二次大戦前、フランス領だったアルジェで孤児として育ったジュリアンが、パリに出て野望の階段を昇り詰めていく様子を、彼を愛した3人の女性の愛憎を絡めて描いたもので、3人の女性を相手にかなりヒールな部類に属する青年が主人公のドラマだ。直近の月組公演は当時三番手だった明日海りおのためにミッシェルとアンドレという二つの役を一役にするなどの改変があったが、今回は初演当時の脚本に戻しての再演。

 

「陽のあたる場所」や「太陽がいっぱい」を思わせる野望を抱く青年の物語だが、柴田氏はそんな主人公を脅迫するさらなる悪漢を登場させ、主人公の悪を薄める味付けをしている。ジャックというその悪漢役を演じた専科の愛月ひかるが、見事にはまり、作品を大きく膨らませることに成功、初演以来の出来栄えとなった。

 

次期トップに決まって最初の公演となった礼は、オープニングのアルジェ街頭での仲間たちとのダンスシーンからシャープな動きが冴えて、早くもセンターがよく似合う。歌と台詞の切れも申し分なく、一介のチンピラがぐんぐんのし上がっていくその若さの情熱のようなものが身体全体からにじみ出た好演だった。今回は峰さを理が演技指導から振付を担当したと言うがその成果がよく表れていたと思う。

 

一方、ジュリアンを脅迫するチンピラ仲間のジャックを演じた愛月は、二番手というより拮抗する相手役というスタンスで役が大きく膨らみ、話に緊張感を漂わせることに貢献した。ジュリアンがパリに出た後、ジュリアンの恋人だったサビーヌがジャックと同棲するという展開が、愛月なら納得できた。専科入りしてから最初の公演だが、存在感は大きく、これからの他の組への出演も楽しみだ。

 

三人の娘役は幼馴染の恋人サビーヌが音波みのり。総督の娘エリザベートが桜庭舞。盲目の娘アナ・ベルが小桜ほのかという配役。音波の娘役としてのスキルがさすがで、ジュリアンを思う心根を巧みに表現した前半、パリでダンサーとして登場する後半の見せ場もうまかった。桜庭の緩急自在の演技の間、小桜のせつないソロ、それぞれに演じがいのある場面があって、いずれも適役好演だった。

 

前回、明日海が一人で演じたミッシェルとアンドレは、紫藤りゅうと極美慎が演じ分けた。パリでのジュリアンの理解者がミッシェル。アナ・ベルをひそかに慕う付き人がアンドレという役どころ。紫藤のミッシェルはさわやかな個性にぴったり。極美のアンドレは少ない出番だが、アナ・ベルへの思いをきちんと表現していて重要な場面を納得させたのは立派だった。

 

ほかに公爵夫人の万里柚美を筆頭に総督の朝水りょう、総督夫人の白妙なつ、内務大臣の大輝真琴ら脇の中堅、ベテラン陣が見事で、作品に厚みを出すのを助けていた。

 

ショーは、先日まで大劇場、東京宝塚で公演していた新作の全ツバージョン。紅のところに礼が入り、礼のところに愛月が入り、瀬央ゆりあのところに紫藤や極美がはいるといった感じの役変わりが楽しめる。礼が客席から登場するシーンや愛月のための新ナンバー「あの日出会えた奇跡」紫藤と桜庭のフレッシュコンビによる「きっとキミの夢になる」など全ツならではのオリジナル場面もあるほか、礼がヒップホップ風に激しく歌い踊る「バック!」はダンシングスター礼の面目躍如。最近のショーのなかでも強烈なインパクトだった。客席降りも2回、人数がコンパクトな分、出演者のレベルの高さとサービスで見せた。ダンスリーダー的存在の漣レイラの超人的なダンス力も際立った。

 

礼が歌い踊ると、次の場面には愛月が登場、まるでダブルトップのショーを見ているようだった。二人が同時に出る「星サギの夜」などは見ごたえ十分。個性が全く違うので最後まで気持ちよく楽しめた。ここでも愛月の存在感が光っていた。

 

初日カーテンコールは、万里柚美組長が、令和初の公演で、礼の次期トップ就任と愛月の専科入り最初の公演であること、さらに峰さを理が「アルジェの男」の振付を担当したことを紹介、満員の客席からは温かい拍手が送られた。礼も「緊張しましたが、お客様の温かい拍手が背中を押してくださいました。北海道の千秋楽まで一緒にツアーしましょう」とあいさつ、最後まで明るい笑いの絶えない初日風景だった。

 

©宝塚歌劇支局プラス5月5日 薮下哲司記

 


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