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OSK新トップ、桐生麻耶お披露目公演「春のおどり」開幕
高世麻央退団後のOSKの新たなトップスター、桐生麻耶のお披露目公演、レビュー「春のおどり」が、4月13日、大阪松竹座で開幕した。3月末に東京新橋演舞場でお先にお披露目、東京から本拠地へと、これまでのOSKでは考えられなかった新たな公演形態となったが、桐生のほか次世代のスターたちにもふんだんにスポットを当てた構成で、ずいぶんフレッシュな感覚のステージ、劇団の100周年に向けて熱い思いがストレートに伝わる好舞台だった。
桐生は2004年、近鉄の支援打ち切りによる劇団解散から再結成そして現在に至るOSKの苦難の道を知る生き残りの数少ない一人。すでにかなりベテランになるが、劇団の現在の発展には欠かせないスター。桜花昇ぼる、高世麻央時代からしっかりとトップをサポート、ようやくトップの座が巡ってきた感がある。スペイン系アメリカ人の父と日本人の母との間に生まれ、彫りの深い容貌とひときわ高い身長で、豪快な男役というイメージのスター。遅咲きではあるが劇団キャッチフレーズの「究極の男役」はまさに桐生にふさわしい。
そんな桐生のトップ披露公演は一部が和物の「春爛漫桐生祝祭(はるらんまんきりゅうのまつり)」(山村友五郎作、演出、振付)二部が洋物の「STORM of APPLAUSE」(平沢智作、演出、振付)のレビュー二本立て。桐生はじめ楊琳、舞美りら、特別専科の朝香櫻子、緋波亜紀ら総勢41人の出演。
チョンパーで舞台がパッと明るくなると桜満開の下、若衆姿の男役と晴れ着姿の娘役が勢ぞろい。舞台中央から現れた桐生がテーマソングの「桜」を歌いながら総踊り。「春のおどり」定番の幕開けだ。タイトルに「祭」とある通り、さまざまな祭りがテーマ。上方落語をもとにした「しらみ茶屋」の場面は「節分祭」。愛瀬光、華月奏を中心とした滑稽な場面なのだがややテンポがぬるくて笑いをとるまではいかなかったが、宝塚では絶対見られないユニークな場面だった。第四場の「夏祭り」は「天神祭」がテーマで、一番お祭りらしい場面、桐生がハチマキの浴衣姿で「祭」と書いた大きなうちわをもって粋に踊ると、いやがおうでも盛り上がった。次いで富山の祭り「風の盆」でしっとりとした情緒をかもしたあとは、桐生のトップ口上もかねた華やかなフィナーレ。50分足らずのコンパクトなレビューだった。
夏祭りの場面は盛り上がったが、桐生のバタ臭い容貌には和ものは似合わず、しかも金髪に若衆姿といういでたちはやや違和感があった。いまやOSK恒例の「春のおどり」だからどうしようもなかったのかもしれないが、披露公演なのだから別に和ものにこだわることはなかったのではないかと思った。
二幕はオープニングからダンス、ダンス、ダンス。OSKならではのダンスショーで、平沢以外にもKAORIalive、三井聡ら宝塚でもおなじみの振付家の名前がずらりと並ぶゴージャスなステージ。幕開きのダイナミックな総踊りの興奮が冷めやらぬなか、続くクラシックの名曲で綴る「Fate Storm」がまた素晴らしく、桐生を中心としたその洗練された男役群舞は圧巻だった。2番手格の楊琳や若手の翼和希ら次代のスターたちの見せ場もふんだんにあり、初舞台生8人を紹介しながらラインダンスへと発展するロケットもOSKならではのド迫力。
桐生が舞美はじめ城月れいなど全娘役とワルツ、タンゴ、ジルバなど様々なスタイルのペアダンスを見せるジャズの場面が後半の見せ場で、桐生の包容力ある男役としての魅力はここで一気に爆発した。桐生にはやはり黒燕尾が一番よく似合う。歌は個性的で評価のわかれるところだがひときわ高い長身もあって舞台での存在感は抜群。7月には南座で泉鏡花原作の「海神別荘」に挑むというから面白そうだ。
©宝塚歌劇支局プラス4月16日記 薮下哲司