4月30日に第一ホテル東京で開催の同ディナーショーのちらしより
さようなら宝塚ホテル!鳳蘭&香寿たつきディナーショー開催
来春、宝塚大劇場北側に新築オープンのため閉館となる宝塚ホテルでは今年いっぱい数多くのタカラジェンヌOGがホームカミングしてフェアウェルディナーショーを行うが、その第一弾として4月13日、鳳蘭と香寿たつきのジョイントディナーショー「オンリー・ワン・タイム」(酒井澄夫構成、演出)が宝寿の間に満席のファンを集めて華やかに開かれた。
鳳と香寿は在団年はだいぶ離れているが、この1、2月に再演された「オペラ座の怪人」の続編、ミュージカル「ラブ・ネバー・ダイ」でマダム・ジリー役をダブルキャストで演じるなど、このところゆかりが深い。今回のディナーショーは、宝塚ホテルのフェアウェルに加えて「ベルサイユのばら」などの作曲家で“宝塚のモーツァルト”といわれた故寺田瀧雄氏の生誕88年を記念、全曲を寺田メロディーで統一した宝塚ホテルのフェアウェルにふさわしい懐かしくも聴きごたえたっぷりのディナーショー。しかも指揮が寺田氏の直弟子、𠮷田優子氏、バックコーラスが華村りこ、出雲綾、久慈あかりという豪華版。会場には劇団関係者や新旧の宝塚ファンが大集合、現役生の姿も多くみられた。
鳳は、髪をリーゼントにまとめ、黒のシックなパンツスーツという男役を意識したスタイルで登場。長い髪を束ねて男役風にまとめた香寿とともに「ベルサイユのばら」の主題歌「愛あればこそ」をデュエット。会場を一気に寺田瀧雄の世界に誘い込んだ。
続いて香寿が「愛の面影」鳳が「駆けろペガサスの如く」と続けると、一気にかつての男役時代にタイムスリップ。この二人は先日行われた「ベルサイユのばら45」のイベントには「ラブ・ネバー・ダイ」出演中で参加できなかったため、その鬱憤をこのディナーショーで晴らした感じ。出雲らも「ばらベルサイユ」を変わらぬ美声で披露した。
続いて「風と共に去りぬ」から香寿が「真紅に燃えて」鳳が「さよならは夕映えの中で」を。鳳が「レット・バトラーを演じているとき本当に男になったような気がした」と当時のエピソードを話して笑わせた。
香寿と出雲のデュエットによる「エル・アモール」(「哀しみのコルドバ」から)や鳳の「セ・シャルマン」「愛の宝石」といった代表曲のほかに、それぞれの思い出深い寺田メロディーも。鳳が初めて青天のカツラで日本物を演じた「いのちある限り」香寿が新人公演で主演、旧大劇場の最後の作品となった「忠臣蔵」から「花に散り雪に散り」を心をこめて歌いこんだ。香寿は「もし機会があれば大石内蔵助はもう一度演じてみたい役」と吐露、客席からは大きな拍手が起こった。
鳳は「この恋は雲の涯まで」「わが愛は山の彼方に」と大作の主題歌を続けて披露。「サビの部分が全く同じ旋律なんです」と笑いながら歌い比べて見せた。一方、香寿は、寺田氏の遺作となった「凱旋門」から「いのち」を歌い、出演中だった香寿が、亡くなった当日の公演では涙で歌えなかったエピソードを披露した。
そして香寿が「歌いたかった曲」という「愛!」を絶唱。鳳が彼女の代表曲でもある「セ・マニフィーク」を客席に降りて、手拍子と共に会場一体となって歌いショーを締めくくった。
寺田氏の幅広い音楽的才能の豊かさが二人の才能豊かなエンターテナーによって見事に甦った一瞬だった。二人ともついこの前まで女優として舞台に立っていたとは思えない男役の歌声への切り替えだった。
最後は鳳がいつもディナーショーの最後に「舞台で死にたい」と歌う「歌い続けて」で締めくくったが、カーテンコールは「さよなら宝塚」を「さよなら宝塚ホテル」と合いの手を入れて全員で合唱、閉館する宝塚ホテルへの惜別をこめながら、新しい宝塚ホテルでの再会を期していた。
宝塚ホテルではこのあと5月25日に矢代鴻、立ともみ、8月31日に霧矢大夢(彩吹真央特別出演)や10月31日に安蘭けいとタカラジェンヌOGのディナーショーが連続して行われる。
©宝塚歌劇支局プラス4月14日記 薮下哲司