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Channel: 薮下哲司の宝塚歌劇支局プラス
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永久輝せあ 王道のプリンス役で初主演  バウ公演「PR×PRince」開幕

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 ©宝塚歌劇団

 

 

永久輝せあ 王道のプリンス役で初主演  バウ公演「PR×PRince」開幕

 

雪組期待のホープ、永久輝せあの単独初主演となったBow Happy Romance「PR×Prince」(町田菜花作、演出)が、28日から宝塚バウホールで開幕した。永久輝の初主演と平成生まれの若手作家、町田菜花氏のデビューが重なったフレッシュずくめの新作の登場となった。

 

プリンスが主人公といっても中世のお話ではなく、現代ヨーロッパの貧乏小国ぺキエノが舞台。財政難と環境汚染に悩まされているぺキエノ王国。その危機的状況からの脱却のため第一王子ヴィクトル(永久輝)を筆頭にヴァレンティン(綾凰華)ヴァルテリ(彩海せら)の容姿端麗な3人の王子を前面に出した観光PRキャンペーンをSNSで発信することになり、結果大成功。お妃募集の大パーティーを開催することになるのだが…。

 

ヴィクトルの目に生まれつき神秘的なパワーがあるのがこのお話のカギで、眼鏡をとったり外したりすることで人格ががらりと変わるのがミソ。眼鏡をかけているときは学究肌の引っ込み思案だが、ひとたび眼鏡をはずすと思い切りきざなプレイボーイになる。その変わり身で永久輝の二つの面を同時にみてもらおうという狙いだ。なんとも安易ではあるが、約束事として目をつぶってみてばそれなりに楽しく、ファンはその変わり身の面白さに笑い転げて大喜び、満員の会場は笑い声が絶えない。

 

漫画世代らしい破天荒なファンタジーなので、ストーリーはあってないようなもの、永久輝はじめ綾、彩海のかっこよさにひたすら見とれているうちに2時間半がすぎるといった具合。現在、重鎮とよばれている座付き作家の若いころにもこんな作品があったような気がしてほほえましかった。王子たちの母親であるベアトリス王妃(舞咲りん)が「初日、中日、千秋楽」「お茶会に全国ツアー」という観劇オタクという楽屋落ちも笑わせた。

 

永久輝は、漫画から抜け出てきたような純白のプリンスと眼鏡をかけた研究熱心な学者王子をオーバーなまでに使い分けて、思い切り楽しんでいる感じ。ブロンドのかつらと純白の衣装が見事なまでに似合って、水も滴る王道のプリンスぶりだった。

 

相手役は、バウ初ヒロインとなった潤花。ヴィクトルの研究室で一緒に研究しているエルという役どころで、研究者としてのヴィクトルの誠実さにひかれているが、実は…。というどんでん返しがある。新人公演のヒロインなど徐々に抜擢が続き、今回バウヒロインを射止めた。素直な演技に好感が持て、何より笑顔が印象的だ。

 

綾の第二王子、彩海の第三王子もそれぞれに展開があって、きちんと見せ場もあるのが憎い。綾のすらりとしたプロポーション、彩海のぱっちりとした瞳の輝きとどちらも魅力的。とりわけ彩海にはつらつとした新鮮さを感じた。それぞれの相手役は星南のぞみと彩みちる。いずれも一癖ある役だが昆虫マニアのプリンセスという彩がユニークで面白かった。

 

ほかに若手で印象的な役としてはぺキエノ国の大臣三人組。ガスパルの叶ゆうり、ダミアンのゆめ真音、エリアスの一禾あお。長老格ガスパルためぐちで進言するダミアン役を演じたゆめのセリフ回しが今風でなんとも感じが出ていた。

 

デビューとなった町田氏は、過去のいろんな作品のエッセンスをちりばめながら気が付いたら大ハッピーエンド。理屈抜きで肩の凝らないエンタテイメントに仕上げている。ただ最初からちょっぴり遊びすぎのような気もするので次回作はもう少しきちんとした作品を期待したい。

 

©宝塚歌劇支局プラス3月31日記 薮下哲司

 


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