写真:竜宮城の亀に扮する龍真咲 ©宝塚歌劇団
月組トップスター、龍真咲の初コンサート、ドラマティック・ドリーム「Dragon night‼」(藤井大介作、演出)が、1日、大阪・シアタードラマシティで開幕した。今回はこの初日の模様を報告しよう。
21世紀に入団したタカラジェンヌで初のトップスターになった龍も、トップ在位早くも3年目、いまや宝塚を代表するトップとなったのだから感慨もひとしお。その龍の初コンサートは、龍の魅力のすべてを見てもらおうと3部構成の欲張った内容。ドラゴンが旅に出るというコンセプトのもと第一部は「龍JIN」のタイトルでドラゴンが世界各地に羽ばたく様子をショー化。
美弥るりかと珠城りょうの二人が龍のエスコート役で、まずは2人が登場して龍を紹介、ゴンドラに乗った龍が舞台中央からゴールドのメタリックな衣装で現れると、満員の会場はそれだけで大興奮、旬のスターの勢いはさすがだ。
一部は龍扮するドラゴンがロシア、イタリア、インドそしてニューヨークと旅をしながら歌い踊る。クラシック、カンツォーネ、マサラ、ゴスペルと龍が歌いたい歌の集大成。相手役の愛希れいかが出ていないので、ロシアの歌姫が白雪さち花、黒衣の未亡人が楓ゆき、インドの妃が早乙女わかばとお相手がころころ変わるのも一興だった。なかで狂おしきドラゴンの場面でダンスの相手役の少女に抜てきされた麗泉里が可憐で要注目。ドラマチック仕立てのショーだが、初日はまだいまいちこなれていない感じがした。
休憩をはさんで始まった二部は思いがけない趣向があって、客席も一気に盛り上がった。「龍宮城」のタイトルの2部は海の中という設定で、龍はなんと亀で登場。シルバーの甲羅を背負った龍に、満員の客席からは歓声と笑い声が。浦島太郎などゲストを乗せて龍宮城に案内する亀という設定で、初日のゲストは美弥と早乙女。亀の龍と楽しいトークをくりひろげた。途中で2人が手伝って、龍が亀からかっこいい男役に早変わり「ハムレット」の主題歌につないだ。
3部は龍が愛してやまない宝塚コーナー。「バイブレーション」から始まって「ノバ・ボサノバ」メドレーへ。「アパッショナード」や「カリビアンナイト」など宝塚ラテンでおおいに盛り上がったあとはミュージカルメドレー。「ロシュフォールの恋人たち」「蜘蛛女のキス」「モーツァルト!」と龍が歌いたかったというナンバーを披露。選曲がなかなか通好みで楽しめた。クライマックスは全員がおそろいのバラ模様のTシャツで登場、「ベルサイユのばら」のテーマ曲をロックにアレンジした組曲にあわせてコンテンポラリー風のダンスを披露。そして最後は龍が「ラ・カージュ・オ・フォール」の主題歌「アイ・アム・ホワット・アイ・アム」を歌って締めくくった。この曲は、月組の大先輩である大地真央がバウのコンサートで初めて歌った曲、奇しき縁に感慨無量だった。
全体的には欲張りすぎて散漫な印象もなくもなかったが、ラストの一曲が、月組ファンにはツボだったのではないだろうか。
©宝塚歌劇支局プラス9月1日記 薮下哲司