美しすぎるプレイボーイ、帆純まひろが好演!祝祭喜歌劇「CASANOVA」新人公演
期待のホープ男役、帆純まひろの初主演となった花組公演、祝祭喜歌劇「CASANOVA」(生田大和作、演出)新人公演(指田珠子担当)が2月26日、宝塚大劇場で行われた。
18世紀のヴェネチア、風紀紊乱の罪で収監されていた稀代のプレイボーイ、ジャコモ・カサノヴァが、カーニバルの喧騒のなか脱獄、偶然出会った総督の娘ベアトリーチェと運命的な恋に落ちたことから街中を巻き込む大騒動になるという恋あり陰謀ありの一大エンターテインメント。トップとして円熟期にある明日海りおならではのカリスマ性を十二分に発揮したカサノヴァが魅力的なステージだ。
新人公演は一本立て大作の常として大幅なカットバージョンでの上演となるが、今回も例にもれずオープニングがばっさりカットされカサノヴァが鉛の塔の牢獄に収監されるところからスタート。二部冒頭の仮面舞踏会も縮小され、フィナーレなしで約1時間50分。
カサノヴァ流の自由をベアトリーチェが自分のものにしていく過程がうまく浮き上がっていてテーマが鮮明になった分、本編より見ごたえがあった。ただ「仮面のロマネスク」を思わせるコンデュルメル夫妻のくだりやベアトリーチェの婚約者コンスタンティーノとゾルチ夫人など脇の部分がメインを邪魔しているようにみえてもう一工夫ほしい気がした。
また細かいことだが、カーニバルでベアトリーチェの馬車にカサノヴァが偶然乗り合わせたことから二人が出会うのだが、ヴェネチア中心部は陸地から離れた水の都で馬車では郊外には出られないはず。かつては陸続きだったのだろうか、出会いの場だけにちょっと疑問に思った。
さてカサノヴァを演じた帆純だが、いきなり監獄の場面から始まるので登場シーンが地味なのが残念だったが、すっきりとした美貌が、明るいブロンドのかつらとシルバーのコスチュームにはえて納得のカサノヴァ像。初主演とは思えない落ち着いた立ち居振る舞いでプレイボーイらしい色っぽさも十分。水夏希を思わせる身のこなしと鼻にかかった甘い歌声は瀬奈じゅんを連想させた。「蘭陵王」で瀬戸かずや扮する高偉の寵愛を受ける美少年役が印象的だったが、新人公演では二番手の役を演じることが多く、綺麗だが線の細い印象があったのだが、センターに立つと見違えるばかりに変身した。歌や演技はまだまだ改善の余地はあるものの今後の活躍に期待したい。
ベアトリーチェは仙名彩世退団後のトップ娘役に決まっている華優希が演じた。上り調子の勢いが身体全体から匂いたつような華やかさがあって、自由を求めるベアトリーチェそのものという感じ。いまの彼女にぴったりの役柄と、豪華なコスチュームが演技をさらに引き立てていた。歌唱の充実ぶりも頼もしかった。
「ポーの一族」「MESSIAH」で新人公演主演した聖乃あすかは、柚香光が演じたカサノヴァの宿敵、審問官のコンデュルメルに回ったが、これまた舞台に立っているだけでオーラが匂いたつ素晴らしい存在感。凝った衣装に美貌が映えた。権力への屈折した野望がわかりにくいので、ただの悪役になってしまっているのは残念だったが、何を演じてもこの美しさは強力な武器だ。
夏美ようが演じた謎の伯爵、ミケーレはバウ公演などで存在をアピールしている一之瀬航季が演じた。若い青年役が似合う一之瀬だが、こういう貫録たっぷりの伯爵役も華やかににこなし、特に台詞まわしの確かさはなかなかで、実力の一端を見せつけた感じ。今後のさらなる活躍が楽しみだ。
水美舞斗が演じたバルビ神父は愛乃一真(まの・かずま)。カサノヴァに心酔して旅を共にする役で、カサノヴァとのあうんの呼吸が大事な難しい役、一回だけの新人公演ではその辺はさすがにけいこ不足が目立った。雰囲気はよく出しているので次回に期待したい。
鳳月杏が妖しく好演しているコンデュルメル夫人は、まさかの舞空瞳が演じた。さすがに本役の鳳月ほどの妖しさはないものの思いのほか大人っぽく、少女っぽさだけではない振り幅の広さをみせつけた。この公演のあと星組への組替えが決まっており、新天地での活躍が楽しみだ。
下級生ではカジノの場面でモーツァルト(綺城ひか理)を演じた希波(きなみ)らいとのはちきれんばかりのはつらつとした演技が光っていた。「花より男子」でも大役に抜擢されていて今後に要注目だ。
ほかにもフォスカリーニ役の高峰淳、コンスタンティーノ役の泉まいら、ダニエラ役の音くり寿とそれぞれ自分の役どころをきっちりと演じ切り、全体的に破綻のないレベルの高い新人公演だった。ドーヴ・アチアの主題歌も何度も聴いているうちに耳に馴染み、忘れられない曲になりそうだ。
©宝塚歌劇支局プラス2月27日 薮下哲司記
雪組特別公演「20世紀号に乗って」鑑賞ツアー残席情報
雪組の望海風斗、真彩希帆主演によるコメディミュージカル、東急シアターオーブ特別公演「20世紀号に乗って」(原田諒脚本、演出)を3月28、29日の一泊二日で2回観劇する大阪発のツアーは現在3席のみ残席があります。一般前売りチケットはすでに完売しています。鑑賞を希望されながらチケットを入手できなかった方はぜひツアーにご参加ください。現地集合プランでの参加も受け付けます。料金などお問い合わせは毎日新聞旅行(大阪)☎06(6346)8800(受付時間平日10時から18時)まで。