安奈淳、奇跡の復活!「ベルサイユのばら45」大阪公演開幕
宝塚歌劇史上最大のヒット作、宝塚グランドロマン「ベルサイユのばら」(植田紳爾脚本、演出)が初演以来、今年で45周年を迎えるのを記念して歴代出演者が出演する「ベルサイユのばら45」~45年の軌跡、そして未来へ~(植田紳爾監修、谷正純構成、演出)が、1月27日、東京国際フォーラムホールCで開幕、続いて2月16日から梅田芸術劇場メインホールで大阪公演が始まった。18日には初風諄、榛名由梨、安奈淳の初演メンバーが勢ぞろい。初演からの熱心なオールドファンから100周年の再演で初めて知った若いファンまで幅広いファンが駆け付けて大いに盛り上がった。
「ベルサイユのばら」は1974年8月29日、月組で初演され、現在まで再演に再演を重ね通算2118回、観客515万人を動員する宝塚を代表するヒット作となっている。かくいう私も初演を三日目の8月31日に観劇、以来、ほぼすべての公演を見続けている。当時、鴨川清作演出の斬新でポップなショーに宝塚の新しい魅力を見出していたこちらにとって、「ベルばら」はあまりにも少女趣味で、初演当時は全く受け付けなかったが、15年後、「平成のベルばら」のころから仕事でかかわることになり、その魅力というか宝塚での価値が少しずつわかり始めてきたような気がしている。その後、大学で教鞭をとるようになり「ベルばら」を教材にするにあたって、時代が生んだという必然性も感じ取り、100周年の時、龍真咲と明日海りおのコンビで見た月組の「ベルばら」になんとも居心地の良さを感じたのも事実だった。
さて、今回の「ベルばら45」は、1974年の初演、1989年の再演そして2000年と2005年の再演メンバーが中心で、それぞれの時代の各組出演者がシャッフルして懐かしいコンビや珍しいコンビが次々に登場、何年も前に退団したはずのトップスターが、オスカルやアンドレの衣装をつけると、あっという間にタイムスリップ、現役時代そのままのかっこよさと美しさで舞台を再現、時間を超越した宝塚マジックが充満した。
18日の公演は「1974年初演A」というバージョンで、まず初代アントワネットの初風が変わらぬ美声で「青きドナウの岸辺に」を披露、続いて大病から奇跡的に回復した安奈が「愛の巡礼」そして初代オスカルの榛名が「白ばらのひと」を歌って始まった。歌い終わった3人が初演当時の思い出をトーク。全国ツアーでの笑い話やNHK「紅白歌合戦」の応援出演したときのエピソードでは白組の応援だったか紅組の応援だったかでもめるなど終始和やかなムード。安奈は「3回の危篤状態から戻ってきました。この際、ベルばら100まで出演したい」と笑顔で話して満場大拍手だった。
続いて杜けあきが「心のひとオスカル」紫苑ゆうが「結ばれぬ愛」日向薫が「ばらのスーベニール」とそれぞれ自分のオリジナル楽曲を艶やかに披露。本編の名場面ダイジェストに繋いだ。
ダイジェストは、朝海ひかるのオスカル、湖月わたるのアンドレ、緒月遠麻のアランという配役で、オスカルの衛兵隊閲兵シーンから。続いて現役代表の華形ひかるがベルナールに扮した「愛する者のために」があってオスカルが稔幸、アンドレも水夏希に代わって橋のシーンからバスティーユと続けて一幕を終わった。いまや女優として大活躍の朝海だが、そのりりしいオスカル姿は現役時代そのまま。湖月、水のアンドレも退団後10年とは思えないりりしさだった。
第二部は白羽ゆりのアントワネットによる「愛の怯え」から始まり、和央ようかのフェルゼンによる「駆けろペガサスの如く」から二人の牢獄シーンへ。メルシー伯爵は、初演から出演、最多出演回数を誇る専科の汝鳥伶が滋味豊かに演じた。
断頭台のあとは豪華なフィナーレ。緒月とアンサンブルによる「ばらベルサイユ」から始まって、和央が「宝塚心の故郷」を踊り、壮一帆が「愛に帰れ」を熱唱、朝海と水の雪組コンビで「小雨降る径」湖月を中心とした「薔薇のタンゴ」そして極めつけ稔と朝海で「ボレロ」で締めくくった。パレードのエトワールは初風という豪華版だった。
懐かしのトーク、歌、そして本編のダイジェストとバラエティーに富んだ構成で楽しめる2時間半だったが、なんといってOG出演者たちの見事ななりきりぶり。いますぐにでも大劇場で現役として通用する見事な男役演技はさすがで、年輪を経て当時より歌も芝居もうまくなっているから始末が悪い。「ベルばら」が、宝塚が、OGたちの体に染みこんでいる、そんな宝塚愛が横溢したステージだった。公演は24日まであり、ほかに汀夏子、麻実れい、一路真輝、麻路さき、彩輝なお、貴城けいらが出演する。
一方、杜けあき、姿月あさと、貴城けい、北翔海莉、白羽ゆりの5人の宝塚OGが出演する毎日希望奨学金チャリティーコンサート「忘れない~天国の大切なあの人へ~」が3月12日午後6時から東京・渋谷のbunkamuraオーチャードホルで開催される。
東日本大震災で保護者を亡くした震災遺児の学業継続を応援する「毎日希望奨学金」のチャリティーコンサートで、東日本大震災で亡くなられた方に手紙を送る「漂流ポスト」に寄せられた愛のメッセージを宝塚OGが歌と朗読で綴る感動のコンサートで、5人は「ベルサイユのばら」から「愛あればこそ」をはじめ「テンダー・グリーン」から「心の翼」そして「すみれの花咲くころ」などを歌い継ぐ。ほかにも貴城が「Joyfull!」や北翔が「Amourそれは」白羽が「カラマーゾフの兄弟」の主題歌などを披露する。入場料は8000円、チケットぴあなどで好評発売中。お問い合わせは毎日新聞社事業本部☎03(3212)0804(平日10時〜18時)まで。
©宝塚歌劇支局プラス2月18日 薮下哲司記