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綾凰華、有終の美飾る 雪組公演、ミュージカル「ファントム」新人公演

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新人公演プログラムより

 

綾凰華、有終の美飾る 雪組公演、ミュージカル「ファントム」新人公演

 

雪組トップコンビ、望海風斗、真彩希帆の好演で大人気のミュージカル「ファントム」(中村一徳潤色、演出)新人公演が27日、宝塚大劇場で行われた。

 

初演以来4度目となった今回の公演、パリ・オペラ座の装置を一新、映像を駆使したステージングが効果的なうえ、望海、真彩の2人が見事な歌を披露して、これまでの公演とは一味も二味も違った出来栄えで、連日、当日券も発売と同時に完売の賑わいを見せている。

 

新人公演はこの公演で新人公演卒業となる研7の綾凰華が、「ひかりふる路」以来二度目の新人公演主役でファントムに挑戦、クリスティーヌには「幕末太陽伝」以来二度目のヒロインとなった野々花ひまり、キャリエールが前回の「凱旋門」新人公演で主演した縣千というキャスティング。本公演が素晴らしいだけに3人ともプレッシャーはこの上もなく大きかったと思うが、新人公演らしい若々しさと懸命な取り組みに好感が持て、大きな破綻もなくきれいにまとまった公演となった。

 

一本立て公演の常で、時間の関係でカルロッタの楽屋の場面やオペラ座団員たちの場面のカットがあり、フィナーレと休憩なしで約2時間弱。

 

エリック(ファントム)の綾は、「ひかりふる路」の時と比べると、歌唱に格段の成長がみられ、難曲ぞろいのナンバーをどれも無難にクリア。特訓の成果を大舞台で披露した。演技的にも甘いマスクにふさわしく威圧的なイメージを捨て、悲劇の青年エリックという純真な部分に絞ったアプローチが功を奏し、後半の親子の対面シーンが感動的に盛り上がった。プロローグと後半の格闘シーンでマスクが外れるというアクシデントが何度もあったが、巧みにカバーしてハプニングへの臨機応変なところも見せ、大器の片りんもうかがわせた。

 

クリスティーヌの野々花も、幕開きの「パリのメロディー」や「HOME」「My True Love」と名曲ぞろいのナンバーを破綻なく歌い、とくにファントムに「素顔を見せて」と歌う一番の難曲「My True Love」は入魂の歌いこみだった。綾、野々花ともに本役二人のうまさに引っ張られた感じで、雪組メンバー自体の歌唱力がアップしたようにも思われる。

 

その典型がキャリエールに扮した縣千。101期生ということは研4で、ファントムの父親であるキャリエール役というのはちょっと酷なような気がしたのだが、端正なマスクにひげを蓄え、若さを抑えた落ち着いた演技と歌がなかなか見事で、今回の新人公演で一番の出来栄えだったといっていいのではないだろうか。クライマックスのエリックとの銀橋の場面が感動的に盛り上がったのは受けの縣が自然に父親に見えたからでもある。綾より上背があり、父親としての風格が出せたことも大きい。

 

この3人以外ではシャンドン伯爵の彩海せらの清新な雰囲気が印象的。さわやかな二枚目ぶりで今後の活躍に期待したい。オペラ座の新支配人ショレは陽向春輝。芝居巧者の二枚目としてこれからの活躍が期待されていたのだが、この公演で退団が発表された。ショレ役も嫌みのないオーバーアクトで、彼女ならではのうまさが光っていた。妻のカルロッタは羽織夕夏。この公演随一の道化的役どころをぎりぎりの線まではじけまくり、そのうまさで感心させられた。

 

あとは楽屋番ジャン・クロードの鳳華(ほうか)はるな、エリックの母親ベラドーヴァの有栖妃華(ありす・ひめか)、オペラ座の団員セルジョの眞ノ宮るい、若かりし頃のキャリエールの真友月れあといったところが役的に目立つぐらい。しどころはあるが出番が短く、役が少ないのがこの公演の弱点。新人公演は本公演の半分の人数だがアンサンブルでさえまだ多いぐらいだった。前回新人公演でヒロインを演じた潤花はシャンドン伯爵の愛人ソレリ役(本役は彩みちる)だったが台詞は一言というのも寂しかった。

 

©宝塚歌劇支局プラス11月30日記 薮下哲司

 

 

 

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