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美しすぎる武将、凪七瑠海好演!ロマンス「蘭陵王」開幕

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  ©宝塚歌劇団

 

 

 

美しすぎる武将、凪七瑠海好演!ロマンス「蘭陵王」開幕

 

専科の凪七瑠海が主演、花組選抜メンバーと共演するロマンス「蘭陵王-美しすぎる武将―」(木村信司作、演出)が20日、大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで開幕した。

 

蘭陵王は、6世紀の中国に実在した北斉(ほくせい)の皇族、高長恭(こう・ちょうきょう)に与えられた王号で、武勇とともにその類まれなる美貌で知られる武将。あまりの美しさに女性だけでなく男性をも魅了、戦場では兵士の士気が下がることを恐れて仮面をつけて戦ったという伝説まである。雅楽や京劇の演目にもなるぐらいだが、宝塚では今回が初めての舞台化となった。なかなか興味深い題材で、これまで宝塚で取り上げられたことがないのが不思議なくらい。そんな美貌の武将に、凪名が扮し、その美しさとともに、男役としての凛とした佇まいに風格までにじみでて、まさにどんぴしゃの役どころ。

 

舞台には下手に語り部の京三紗が登場、物語の発端から丁寧に説明、これが効いていて時代背景や人物関係など、非常にわかりやすく、つかみは抜群、一瞬で物語の世界に誘ってくれる。

 

捨て子の美少年、長恭(凪七)はその美貌から村の長者(航琉ひびき)や盗賊(澄月菜音)の慰み者となり、北斉軍の将軍(和礼彩)からも見初められそうになるが、武将の段詔(舞月なぎさ)が北斉の王子であることを見抜き、都に連れて帰る。いきなり少年愛のシーンからはじまるという異色の展開。しかし、凪七の清らかな美しさが際立ち、語り部に扮した京の冷静かつ客観的なセリフで、物語の展開にぐいぐい引き込まれていく。

 

生まれながらの美貌のために思いもよらない運命の糸が紡がれていく。女よりむしろ男から好かれるという長恭の設定が、衝撃的だが、何の違和感もないというところがこの物語の面白いところ。さらに瀬戸かずや扮する北斉の皇太子、高緯(こうい)が、男性しか愛せないという設定で、おかま風のしゃべりとしぐさで思い切り突き抜けた演技を披露、これも見事で、後半の展開に大きな伏線となっているあたりもなかなかだ。

 

長恭は、初陣の戦功で、蘭陵王という名前を与えられ、20人の姫を与えられるが、次々に断り、姫たちから男好きのうわさを立てられるが、最後に洛妃(音くり寿)という、敵国のスパイを選ぶ。そんなとき、国境で紛争が起き、洛陽城に閉じ込められた味方の軍勢を、仮面をつけて戦い、救い出すことに成功、蘭陵王の名前は国の内外にとどろきわたる。

中国古代の伝説をもとにしているが、その独創的なストーリー展開と、東儀秀樹による雅楽風の曲想にロックテイストの味付けが効いた音楽でテンポよく進み、凪七、瀬戸、音らの好演で、おおいに楽しめる舞台となった。曼荼羅(まんだら)を背景にした稲生英介の装置、有村淳の豪華な衣装も目に贅沢だ。

 

 

ドラマシティ単独初主演となった凪七は、とにかくうってつけのはまり役。少年から青年まで演じぬき、捨て子であったという陰のイメージを色濃くにじませながら、それゆえに凛とした力強さを前面に出した複雑な男役の造形で、これまでの蓄積を見事に開花させた。「与えられていたと思っていたが実は奪われていた」というセリフがこの作品のテーマと

も重なって切なく響く。繊細ななかにも骨太な演技が素晴らしく、男役としての成熟ぶりに感慨が深い。

 

高緯の瀬戸は、これまで比較的地味な青年役が多かった瀬戸が、こんなこともできるのかとびっくりの好演。真琴つばさを思い出させる自由闊達さで大いに笑わせてくれた。後半、男らしい場面との変わり身も見事で、役としても非常においしい役。フィナーレのダンスリーダーのかっこよさも魅せた。

 

ヒロイン役の音も、これまでの殻を破った、申し分のない好演。持ち前の歌唱の聞かせどころもあって、実力にふさわしいグッドジョブといっていいだろう。

 

悠真倫、花野じゅりあといったベテラン勢の仕事も的確で、高緯の寵愛を受ける美形の重臣、逍遥君に扮した帆純まひろもラストの急展開のカギを握る、要注目だ。娘役では蘭陵王の婚礼の相手となる芍妃に扮した美花梨乃の可憐さがひときわ目立った。

 

少ない人数の公演だが、わき役のすみずみまでさまざまな役で何度も登場、フィナーレのラインアップでこれだけしか出ていなかったのかと驚かされた。木村氏にとっては宙組公演「日のあたる方へ」以来のオリジナルだが、久々のクリーンヒットといっていいだろう。大劇場でも十分鑑賞に耐える作品だ。

 

シアター・ドラマシティは28日まで。12月4日から10日までKAAT神奈川芸術劇場で上演される。

 

©宝塚歌劇支局プラス11月20日記 薮下哲司

 


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