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Channel: 薮下哲司の宝塚歌劇支局プラス
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さらに磨きがかかった早霧剣心!浪漫活劇「るろうに剣心」大阪公演開幕

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さらに磨きがかかった早霧剣心!浪漫活劇「るろうに剣心」大阪公演開幕

 

早霧せいなを中心にした雪組で上演され、大ヒットした和月伸宏原作による人気コミック「るろうに剣心」が、同じ小池修一郎演出、早霧主演で再び舞台化され、新橋演舞場での東京公演を好評裏に終え、15日から大阪松竹座での大阪公演が始まった。今回はこの公演と元花組トップ娘役、花乃まりあの退団後初舞台となった「二十日鼠と人間」の様子をお伝えしよう。

 

「るろうに剣心」は、オープニングの竹やぶの立ち回りから、ストーリーも台詞も歌も装置までがほぼ宝塚版と同じだが、出演者は緋村剣心役だけがおなじ早霧、それ以外の男性役は本物の男性が出演しているので、宝塚版を見ているこちらにとっては何とも不思議な舞台だった。

 

やはり女性による男役の方がビジュアル面では抜群に美しく、漫画の再現率も高いことが証明され、ミュージカルナンバーの歌やダンスの入り方がほぼ同じなので、群舞など男役なら違和感がないのに実際の男性が踊りだすとなんだか気恥ずかしいところもちらほら。ただ立ち回りの殺陣の迫力はさすが本物の男性のほうに軍配が上がり、「アイーダ」(王家に捧ぐ歌)の時もそうだったが、宝塚オリジナルをそのまま商業演劇で上演すると、こうなるだろうなと感じる予想通りの結果となった。幕末から明治にかけての激動する時代の流れの中に生きる男たちの話なので、バックボーンはこちらの方が各段に納得性があったが、舞台としての華やかさは宝塚の方に分があった。和の殿堂での公演とあって花道や大ぜり、回り舞台をふんだんに駆使しての立体的な演出は演目にあっていて効果的だった。ただ、主演が同じでストーリーも宝塚版と同じではあるものの、微妙に別物だった。

 

早霧の剣心は、宝塚時代よりさらに磨きがかかり、男性相手に存分に躍動し、何の遜色もない。その凛とした美貌と天性の身体能力をフルに発揮、周囲が男性であることから宝塚の舞台よりも遠慮することなく激しく動き回り、さらに魅力的な剣心像を作り上げた。久々に聞いた「不殺の誓い」も万感の思いがこもった好唱だった。

 

望海風斗が演じたオリジナルキャラクター、加納惣三郎は松岡充。ほかに咲妃みゆの神谷薫は上白石萌歌、彩風咲奈の斎藤一が広瀬友祐、月城かなとの四乃森蒼紫が三浦涼介、彩凪翔の武田観柳が上山竜治、鳳翔大の相楽左之助が植原卓也、大湖せしるの高荷恵が愛原実花、永久輝せあの剣心の影が松岡広大といった配役。元雪組トップ娘役の月影瞳が山県有朋夫人役、朱音太夫に元宙組の娘役、彩花まりと、多くのタカラジェンヌOGがわきを固めている。小さな役まで一人ひとりに見せ場があり、それぞれ自分の責任をきっちりまっとうしているが、なかでは斎藤役の広瀬が上背もあり、キザな作りこみがなかなかで、漫画のキャラクターそのままの再現率。剣心の影を演じた松岡広大の身体能力抜群のシャープな動きもみものだった。明神弥彦は子役がトリプルキャストで演じているが3人とも達者な演技で舌を巻く。

 

剣心と左之助が歌舞伎のミエを切る対決シーンがあり、宝塚ではちょっとした笑いをとる場面になっていたのだが、松竹座で見ると冗談ではすまされない場面になってしまったのも面白いところ。上山扮する観柳のおちゃらけぶりが唯一の息抜き場面となった。

 

 

 

一方、元花組のトップ娘役スター、花乃まりあの退団後初舞台「二十日鼠と人間」(鈴木裕美演出)が10月から11月にかけて東京と大阪で上演された。「エデンの東」や「怒りの葡萄」で知られるジョン・スタインベックの同名原作の舞台化でV6の三宅健の主演、章平や姜暢雄ら実力派の俳優の中に交じって花乃は紅一点としての出演。

 

1930年代、大恐慌後の不景気風が吹くカリフォルニア。出稼ぎ労働者のジョージ(三宅)とレニー(章平)は、ボスと呼ばれる男(藤木孝)が管理する農場で働くことになる。ボスの息子カーリー(中山祐一朗)が労働者を仕切っているが、その新妻が花乃の役どころ。映画女優の夢破れて、カーリーと結婚するが、男ばかりの農場で女友だちもおらず、話し相手を求めて男たちに近づくことから常にカーリーに監視されている。

 

結婚生活に失望し、農場から出ようとするのだが、それがかなわずストレスがたまり、人を傷つけることでしか悲しみを表現できない女性という宝塚時代には演じたことのない難役。むさくるしい男たちの中にぱっと明るい光が差すような美貌はさすがで、強烈なインパクト。演技的にはちょっと上品すぎるような気もしたが、孤独感のようなものは色濃く出ていて少ない出番だが印象的な初舞台だった。舞台自体も、久々にしっかりした芝居を観たという満足感のあじわえる上質の仕上がり。膨大なセリフをよどみなくこなした三宅の好演もあるが、レニー役の章平、ムードメーカー的存在のホイットに扮した瀧川英次の存在も光った。

 

©宝塚歌劇支局プラス11月17日記 薮下哲司


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