壮一帆、自然体で再出発 退団後初コンサート「feel so good」大阪で千秋楽
元雪組トップで昨年8月31日に退団した壮一帆が、退団後初コンサート「feel so good
」(荻田浩一作、演出)の千秋楽を28、29の両日、地元大阪のサンケイホールブリーゼで迎え、満員の観客の温かい声援のなか有終の美を飾った。今回はこの模様を報告しよう。
退団後はしばらく休養をとり、今後を見据えたなかで、徐々に活動を再開してきた壮だが、ことし7月に所属事務所がキューブに決まり、本格的に再始動、その第一歩となったのが今回の初コンサートだ。
元宝塚の演出家、荻田氏の構成したコンサートは、男役のトップスターが退団後初めて登場するこれまでのステージの印象とは打って変わったバラエティーにとんだ内容。幕開けはグレイを基調にしたシックなドレスでスタイリッシュな雰囲気で「if we hold on together」など2曲を男役時代同様、低音はかっこよく、しかし高音までしっかりと歌い、歌い終えたあとは客席おりでまずはごあいさつ。と、ここまでは普通のコンサート。ここで、壮の父親という設定の村井国夫がジーンズの野良着姿で登場。ここからは父親が娘にあてて書く手紙で、娘の過去、現在、未来像を語っていくなかで、壮がそれぞれの時代の娘に扮して歌い踊る。おさげに麦わら帽子、ジーンズの格好の少女時代から始まって、引き抜きで水兵姿になり、まずは「南太平洋」から「魅惑の宵」そしてスカートを「エニシングゴーズ」とミュージカルメドレー。ミュージカルにあこがれていた少女時代というわけ。
「三文オペラ」から「マックザナイフ」。「ミーマイ」から懐かしい「愛が世界を回してる」などに続いてボブ・フォッシースタイルで歌い踊った「I Gotcha」(大澄賢也振付)と「キャバレー」がなかなかのものだった。
宝塚時代の曲は「若き日の唄は忘れじ」から「恋の笹舟」だけだったが、それがまた効果的。続く水原弘のヒット曲「黒い花びら」も意外な選曲だった。「女の中の男、男の中の女を人間として歌とダンスを芝居仕立てにしつつ、とにかくかっこよくてシュール」とは長年、壮を見続けてきたファンの感想だが、選曲も現在の壮の魅力をよくつかんでいた。
ゲストコーナーはこの日は葛山信吾だったが、ここはバー江梨子という設定で、粋に和服を着こなした壮が、ホステスとしてお相手を務め、大阪弁をまじえた応対で満員の客席を大いに笑わせた。この辺の肩の力の抜けた感じもいかにも壮らしくて楽しい。
そして最後はディナーショーでも歌ったテーマ曲「so in love」(ANJU振付)で締めくくった。背中の大きくあいた黒いドレスが印象的だったが、それがいかつくもなく、しかしかっこいい。男役から女にごく自然に戻っている感覚。カーテンコールにはジーンズとシャツというラフなスタイルで登場、どこまでも自然体の振る舞いが、壮の魅力をさらに輝かせていた。
次回はミュージカル「エドウィン・ドルードの謎」(来年4月、東京・シアタークリエ)に出演、本格的に女優に挑戦するがおおいに楽しみだ。
©宝塚歌劇支局プラス8月30日記 薮下哲司