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いざ台湾へ!紅ゆずるを中心とした星組による異次元武侠ミュージカル開幕
紅ゆずるを中心とする星組選抜メンバー39人による台湾公演の国内での試演公演、異次元武侠ミュージカル「Thunderbolt Fantasy(サンダーボルトファンタジー)東離剣遊紀」(小柳奈穂子脚本、演出)タカラヅカ・ワンダーステージ「星秀☆煌紅(アメイジングスター・キラールージュ)」(斎藤吉正作、演出)が30日、梅田芸術劇場メインホールから開幕した。
「サンダーボルト―」は、自らは鬼鳥(きちょう)と名乗り、通り名を掠風セツ塵(リョウフウセツジン)という謎多き主人公・凛雪鴉(リンセツア)を中心に繰り広げられる武侠ファンタジー。台湾の伝統芸能である人形劇を日台合同映像としてアニメ化、昨年、テレビと映画で公開、今秋には第二シリーズが製作される人気だという。
舞台は槍の使い手、捲殘雲(ケンサンウン)=礼真琴=が故郷の両親のもとから飛び出すところからはじまる。礼は人形アニメそのままの明るい金髪で再現率100パーセントのかわいらしさ。彼がやってきた町では、傀儡(くぐつ)師の座長(如月蓮)が人形劇の解説をしている。その人形劇がカギとなって舞台が展開していくという流れ。
ストーリーは天刑剣(てんぎょうけん)という神剣をめぐる冒険談で、すべては旅人、ショウ不患(七海ひろき)が石仏に立てかけてあった赤い傘を持って帰ろうとしたことを鬼鳥と呼ばれる謎の男(紅ゆずる)からとがめられるところから始まる。神剣を守っていた丹衡(タンコウ)=桃堂純=と丹翡(タンヒ)=綺咲愛里=兄妹が、剣を狙う玄鬼宗の蔑天骸(ベッテンガイ)=天寿光希=に襲われ、丹衡が殺されてしまい、ことのなりゆきで復讐の加勢を引き受けることになる。これにケンサンウンらも加わり、一行は蔑天骸の居城のある魔脊山に向かう。
「ロード・オブ・ザ・リング」や「大王四神記」と共通するストーリー展開だが、耳なじみのない名前や地名が次から次へと登場、だれが何のために何をしているのか、皆目わからない状況で話が進んでいき、ラストはだれが主人公だったのか?という展開。主題歌はあるにはあるが、ほとんど台詞で、気が付いてみれば後半は歌もダンスもないアクションステージ。人形劇アニメの再現という意味では、ビジュアルは満点なのだが、その世界観に観客がついていけず、台湾のお客さんには大丈夫なのかだろうかと思わず心配してしまった。取越苦労だと幸いだ。
長いパイプを持ち、肩まである白髪のロングヘアといういでたちで登場する紅はアニメから抜け出たようなビジュアルの美しさは群を抜き、伸びのある歌声も心地よく、雰囲気作りは最高だが、いかんせん動きのない役で、なんだかもったいない感じ。
代わりに動くのがショウフカンの七海とケンサンウンの礼というわけ。なかでも七海扮するショウフカンが紅扮する鬼鳥とほぼ互角の役どころ。七海がはつらつと演じていて魅力的だった。礼はもうぴったりの役どころを生き生きと演じていた。
綺咲扮するタンヒの相手役は紅ではないのも意外な展開。これはご覧になってのお楽しみにしておこう。綺咲は、下級生のころから陽月華に雰囲気が似ているなあと思っていたのだがますます似てきた感じがする。
天寿光希のベッテンガイや麻央有希の殺無生(セツムショウ)もその特異なコスチュームで舞台を彩っていた。
ショー「星秀☆煌紅―」は、大劇場バージョンを少人数用に作り替えたものだが、華やかでゴージャスな感覚とスピーディーな展開はそのまま、紅のエンタテイナーぶりも存分に楽しめる。ここでも綺咲のアイドル歌手風の可愛さが際立った。台湾公演を意識した中国語の歌も加え、中盤には紅が劇場の案内係「紅子」で客席に登場するファンサービスもある。ここでは礼と綺咲もからんで、紅のアドリブがさく裂、会場は大いに沸いた。
大阪公演は6日まで。13日から24日まで日本青年館で上演され、10月20日から台湾公演に乗り込む。
©宝塚歌劇支局プラス9月2日記 薮下哲司