瀬央ゆりあ 紫藤りゅう
©宝塚歌劇団
瀬央ゆりあら星組フレッシュスターが集結、バウ公演「New Wave!-星-」開幕
2013年の花組から始まり月、宙、雪と続いた各組若手を中心にしたエンタテイメントショーシリーズの最後を飾る星組公演、バウ・ショーケース「New Wave-星-」(三木章雄作、演出)が27日、宝塚バウホールで開幕した。5年越しのシリーズ企画で、花組で主演した望海風斗はとうに雪組に組替えになりいまやトップスター。新陳代謝の激しい宝塚にあって、なんとも気の長い企画となったが、これから旬を迎えようとする星組若手メンバーのはつらつとした活躍がまぶしいばかりの楽しいステージだった。
オープニングはラテン。真っ赤な衣装の瀬央と紫藤りゅうがセンターから「コパカバーナ」を歌って登場、出演者全員が歌い踊りながらラインアップ、華やかなプロローグは宝塚ならでは。続いて「New Wave」恒例の「ティンバレス」。瀬央と紫藤に極美慎が加わってのドラム合戦、トークもステックさばきもまだまだおぼつかないものの3人3様、懸命のチャレンジが楽しい。3人による「ノバ・ボサ・ノバ」メドレーのあとメンバー紹介へと展開していく。
95期でこのところ星組での存在感をぐんぐん増している瀬央、96期の優等生、紫藤の2人をメインに新人公演などで成長著しい100期の極美がサポートする形。娘役は、97期の華鳥礼良と100期の桜庭舞がおもに歌を担当、華鳥の歌がどれも素晴らしかったがダンスは102期の水乃ゆりが瀬央、紫藤、極美と3人全員とからむ大抜擢、出演者は22人だが実質的にはこの6人がこのショーを動かした。なかでも水乃は要注目。娘役としては長身だが、清楚な雰囲気と、夢咲ねねを思わせる凛とした美貌を持ち合わせ、動きがシャープなのがなにより、一幕ラストの「タンゴ・イン・ローマ」では瀬央、紫藤の2人を相手に鮮やかなタンゴを披露、華やかなスカートさばきで魅了した。歌もまずまずでこれからの活躍が楽しみだ。
ショーは、一幕が懐かしいポップスやジャズ、タンゴ。二幕が「幸福を売る人」を皮切りに歴代星組のスターが歌い継いだ主題歌メドレーから始まって、未来の星組を予感させる「アメージング・グレース」(華鳥好唱)をフィーチャーした「ひとつに」の群舞と、内容的にも充実したもの。
センターの瀬央はこのメンバーのなかに入るとすっかりベテランの風情。正統派二枚目だと思い込んでいたのだが、こちらの勝手な思い込みで、二枚目ではあるがかなり豪快なタイプであることを再認識、一幕ラストのタンゴがなかなかかっこよかった。二幕の女役は迫力満点。歌にやや不安定なところが見られ、これは改善の余地あり。
紫藤は、「こうもり」の新人公演で主演、好演したが、新人公演卒業後は、役に恵まれない印象があったのだがようやくエンジン全開というところ。明日海りおにも似たフェアリー的な容貌がいかんなく発揮され、歌、ダンスと申し分のない活躍ぶり。一幕後半の「ジャズ・イン・NY」などスーツが似合い、「ひとかけらの勇気」や「ロミオとジュリエット」などもよくて、一気にファンが増えるのではないかと思う。
極美慎は、きりっとした美貌がどこにいても際立ち、姿勢のよさが壮一帆に似ていて、なんとも心地よい。懐メロコーナーの「ワンボーイ」での水乃とのコンビは絵のような美しさだった。
あと、遥斗勇帆の「セ・シャルマン」や「世界の王」でベンヴォーリオを歌った朝水りょうも印象的。星組の層の厚さを感じさせた。今回、娘役で星蘭ひとみが出ていないが、なにかわけがあるのだろうか。これだけが疑問だった。
©宝塚歌劇支局プラス8月28日記 薮下哲司